前例がないからチャレンジすべき
加藤:自治体では新しい試みがなかなか出来ないと言われます。自治体に出向した際にはどう感じましたか。
佐々木氏:僕が県に行って驚いたのは、他県の実績を見て判断をすること。他県にあれば予算が付き、なければ付かないわけです。
国はどちらかというと、前例があるとみんなが思いつくことだから、やっても仕方ないという考え方をしています。「前例がないからチャレンジしよう!」となるはずが、逆を行っていますよね。
自治体同士で市場を食い合う
加藤:みんなが同じことやると、パイを食い合ってしまうことになりますよね。たとえば、バレーボール専門のコートを作ったオガールの取り組みが注目されていますが、全国の自治体が追随してバレーボール専門のコートを作っても、勝者になる数は限られ、市場をつぶしてしまう可能性もあります。
佐々木氏:そうですね。オガールのすごさは稼働率を上げて人が集まる仕組み、つまりソフトウェアをつけていること。全日本のバレーボール協会の会長や元々バレーボール選手の経験を通じて、競技にとって必要なことをよくわかっているからこそ、ユーザーニーズのあるものをきちんと作るできることができ、魅力的な施設になっているんだと思います。
結局、設備などハードを作ることは誰にでもできるけれど、ソフトウェア・人的ネットワークを持っていることが本当にすごいこと。
オガールの収入源は、体育館に併設されている小さな部屋のホテルなんです。バレーボールの選手が重視する食事やコートなどの練習環境には、コストをかけて徹底的にこだわっている反面、ホテルの部屋は寝るだけなので無駄を省いた設計にしているそうです。
まち・ひと・しごと創生本部で、スポーツアリーナを全国で25個作るという構想があるらしいです。でも、重要視すべきはアリーナや箱を作ることではなく、イベントを持ってくる力があるかどうか。野球場やスポーツ施設は、収益を上げるのがとても難しくて、きちんと稼働しないとすぐに大赤字になります。本来、何かを作るという計画の前に、使ってもらえるかどうかを徹底的に調査するのが、民間であれば当たり前ですよね。
新しいビジネスが良いまちをつくる
加藤:民間企業と活動しようと考えたきっかけは、どのようなものでしたか。
佐々木氏:国土交通省の役人は、建設業界、不動産業、鉄道会社など、バリバリの旧業界人とのお付き合いが多いんです。でも、僕は話の中身に理念がなくて面白くないと感じて、あまり深い付き合いをしたことないんです。
それよりも、新しいビジネスを自分で立ち上げている動きにすごく関心があるんですよね。その理由は、これまで都市計画に携わって、民間の発想や民間の動きがなければ良いまちができないと感じたから。良いまちを作るのは、建設会社ではなく、資金調達をしたり、発想したり、デザインコントロールをするグループですよね。そんな民間企業を見ていて、すごく生き生きとしていて面白いと思ったんですよね。
知らない壁“が”バカの壁“を作る
加藤:今後、官民連携を進めるための重要なポイントはなんでしょうか。
佐々木氏:規制緩和をする中身と対象にあると思っています。例えば、群馬県庁の前には戦後一回も開いたことない芝生広場が広がっていて、一度解放したところ、すごく好評で県民の憩いの場として人気スポットになったそうです。でも、実行した担当者はそのあと怒られたという話がありました。
“知らない壁“が”バカの壁“を作ってしまって、素敵な空間があるのに変えちゃいけないと思っている。行政にはそういった世界が沢山あります。まずは、自分たちで作った壁を役人が内部から壊さないといけない。そのうえで、民間との連携が必要だということ。その芝生にキッチンカーや売店を入れたり、イベントを開催したり、民間のノウハウによってさらに可能性が広がっていくと思います。
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 役人の意欲が落ちていた時に大震災が発生
第2話 土地の価格は100倍変わる 既得権者との調整
第3話 役人にビジネスはできない
第4話 自治体の動きを止めるのは、50代後半の幹部
第5話 “知らない壁“が”バカの壁“を作る
第6話 “外の世界”と“歴史”を学んでほしい