インタビュー

【元国土交通省 佐々木 晶二氏 #3】役人にビジネスはできない

佐々木晶司3

役人にビジネスはできない

加藤:現在の地域活性化手法については、どのようにお考えですか。

佐々木氏:まず、地域活性化のために、国がお金をばらまいたり、無理なブランディングをしても、その効果は疑問です。
 民間の人は転職など、いろんな意味でリスクを取るけど、役人はそもそもリスクを取らない仕事をしているため、大きなお金を自分達で運用して収益を上げることは現実問題として難しい。そこは民間の人に託さなきゃいけない部分なんです。

地域の財産・資源活用こそ地域活性の鍵

佐々木氏:それよりも、地域の財産・資源を使って、うまくお金が循環するような仕組みを考えなくてはいけないわけです。地域が持っている大事な資源は、“公的不動産や既存の建物”。それを、うまく活用してビジネス展開をする必要があると考えています。

 だから、リノベーションとか公的不動産活用とか、これまでに具体的な成果が上がってきているものを取り入れると良いですよね。最終的には、都市経営全体として歳入を増やすことを考えるべきだとは思いますが、まずは“既に存在する財産”を有効活用してほしいです。

行政にも経営感覚が必要

加藤:近年は職員も減少傾向にあるため、庁舎の空きスペースを住民や企業に安く賃貸するなど、様々な可能性がありますよね。

佐々木氏:はい。本当は庁舎も持たずに賃貸で十分だと思うんです。横浜市などが庁舎を建て替えていますが、都市経営や企業経営の観点では、収益を生まないものへの投資はできるだけそぎ落としていくべきと思います。

 でも、政治家は大きなお金が流れる建築工事や土木工事が好きなんですよね。ソフトウェアの仕事は何百万円あれば十分なことができるけど、建築などのハードは少し造っただけでも何十億、何百億の単位でお金が動き、文字通り桁が違うんですよね。

 民間は投資にもっと慎重です。たとえば、工場も一気に大規模なものを作るのではなく、段階的に進めていき、きちんと管理しています。行政にも経営感覚や資産管理をする文化は必要ですよね。

役所は必要に応じてオフィスを借りるべき

加藤:ちなみに、役所が自前の庁舎を持つメリットはどこにあるでしょうか。

佐々木氏:一般的に防災機能とかいろいろ言われていますが、実際は固定観念が強いんだと思います。庁舎を持つことで固定費が増え、組織の伸縮性はなくなるため、デメリットは大きいです。必要に応じてオフィスを借りる方が有効だとは感じますよね。

 日本の企業も昔は立派な門構えの本社を持っていたけど、今はグーグルやヤフーなどの大企業が、状況に応じて有効なオフィスを渡り歩いています。そういう時代ですよね。

稼ぐ主体は、国ではなく民間

加藤:国は地方活性化や地方創生に取り組むうえで何ができると考えますか。

佐々木氏:国が地方活性化とか地方創生を推進しようと、先陣を切って動いていますが、稼ぐ主体は民間で、基本的に行政はそれを応援する立場です。その、応援する仕方として “規制緩和”があります。たとえば、自治体の公的不動産を民間に使ってもらうことは、有効な規制緩和だと思います。

“ファイナンス”と“規制緩和”が地域活性化の鍵

佐々木氏:国が本来やるべきことは、地域の企業とか新しい事業体が収益を上げることを助けること。補助金を配るのではなく“ファイナンス”が必要ではないかと思います。

 ファイナンスという形式であれば、国も経過観察しますので、貸し倒れしたら責任を追うという意味では、補助金よりはずっと有効。補助金は建物を作るなど、使って終わりなので経過観察が難しく、倒産してしまった時に建物が残って逆効果なんですね。
 ですから、国がやることは基本的には“ファイナンス”と、自治体が自主的にできる“規制緩和”だと思います。

「コト消費」の分野 サービス業に期待

加藤:稼ぐ主体となる民間企業へは、どういう産業・事業に期待をされていますか。

佐々木氏:サービス業です。サービス業は地域によっていろんなバリエーションがあって一概には言えないけど、大きな枠組みとしては、モノではなくて“コト消費”の分野でどのように実現するかだと思っています。

 でも、役人の僕が分かるレベルの話ではないので、その分野のプロにいろいろ教えてもらっています。大事なところはプロに任せないと駄目ですね。

挑戦者を支援できる存在になりたい

佐々木氏:たとえば、シェアオフィスやコワーキングスペースなど、シェアリングエコノミーの新しい領域で、空間を使ったビジネスが増えています。役人では思いつかないような新しい空間があちこちでできていますよね。

 僕はそんな民間の新しい取り組みに対して、口利きできる存在でありたいと思っているんです。たとえば、出資のお金がなくて困っていたら、出資ができるような人や団体を探してきてあげるとか、自治体の担当者が古い考えを持っていて進まないという時には、首長さんに話をするとか。

 そういった新しい動きを知ることを通じて、現場の自治体職員の意識が時代にマッチしていくことができるし、考えが硬くなり、支障となっている部分を解きほぐしてあげることで、お互いにとってWin-Winになると思うのです。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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