シビックプライド醸成とオープンデータの組み合わせ
加藤:シビックパワーバトルについて教えていただけますか?
河尻氏:シビックパワーバトルはオープンデータを活用し、今まで埋もれて知らなかったまちの魅力を発掘し、地域の魅力発信を目的としたイベントです。第1回は2017年9月にヤフー本社で行われ、流山市、横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市の官民連携チームが参加しました。
以降は、他の地域で広がりを見せていて、2018年の3月には千葉市の中にある6区対抗でバトルを開催、8月には関西で尼崎市、生駒市、京都市左京区、神戸市、枚方市が参加する「シビックパワーバトル大阪夏の陣」が行われます。
たまたま熱を出して寝ていた時に、オープンデータを進めながらシビックプライドを醸成するこの企画を思いつきました。熱が下がってすぐに、さいたま市や横浜市の知り合いに「これ一緒にやらない?」と声をかけたら「面白い!」と話に乗ってくれて始まりました。このはじめの一歩がなければ実現できなかったので、今思い出してもありがたかったです。
市民が主催者となる
加藤:政令市を動かすのは大変なイメージもありますが、工夫した点はありましたか?
河尻氏:市が主催となると動きづらい自治体が出てきて、足並みが揃わなくなるという意見をもらったので、市民有志で実行委員会を立ち上げてもらい、市が後援や協力をすることにしました。総務省からも後援をもらったり、ヤフーに協賛してもらえたのもそのスキームだったからだと思います。また、流山以外の参戦自治体が政令市なので、言い出しっぺの流山が目立つことも狙いました(笑)。
ジャンプアップする人に声をかける
加藤:市民に動いてもらう際に、どのようなアクションを取ったのでしょうか。
河尻氏:市民チームにプレゼンをしてもらうわけですから、私一人が設計しても独りよがりになってうまく進みません。市民の方々の中で周りを巻き込めるリーダー候補を探し、さらに、その経験からジャンプアップするであろう人に声をかけました。
私ももちろんリーダーと協力して、データを集められる、プレゼン資料を作れる、プレゼンがうまい、という能力を持った優秀な仲間たちを見つけるため、人づてに紹介を受けて会いに行きました。面識のない市民の方にダイレクトメッセージを送ったりもしました。
市民へのリターンを意識する
加藤:意識した点はありましたか?
河尻氏:市民協働は基本的に行政が枠組みをあらかじめ作って、「お金はないので、この部分ボランティアでお願いします」と、市民の方々を平日に役所へ呼び出すケースもいまだに多い気がします。でも、それだと続かないですよね。
そもそも、まちのために無償で動いてくれっていうのは、やっぱりわがままで傲慢な話です。自治体職員は仕事としてやっているんですけど、市民の方々には他のお仕事がある。
その中で大事なのは参加者へのリターンを意識すること。そうしないと「2度とやりたくない」とか、「市の都合のいいところだけ…」と、逆にまちに関わってくれる貴重な市民を遠ざけてします。
シビックパワーバトルも年度途中に開催が決まったので、予算がありませんでした。対価を払えないのであれば、一緒にやってくれるその人たちに別のリターンをお返しして、その後も続けてもらえるか、まちに関わってもらえるかをイメージして声をかけています。
加藤:自治体が市民に返せるリターンは、どういうものでしょうか?
河尻氏:まず、ある程度生活に満足している市民の方にはリターンを返しづらいので、自分がまちで動くために何か足りないとか、何かが欲しいと思っている人に声をかけるようにしています。
シビックパワーバトルの流山リーダーも、働きながら地域活動をやっていたんですよね。リーダーは大変な役割だったと思うんですけど、地域でさらに活動しようと思ったら、行政や市民とパイプがあるほうがうまくいきますから、「行政や地域の人とつながりができる」と、メリットを伝えたうえでリーダーの打診をしました。
実は後日、流山リーダーから実行委員長にまでなって、見事大役を務めたその方は会社を辞めて、流山で起業することにもなりました。
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 「母になるなら流山市。」に込めた想い
第2話 市民協働は市民へのリターンを意識する
第3話 行政が場所を用意すればママの夢も叶う
第4話 港区の人を流山に移住させることはできない
第5話 隣のまちの人口減少を喜ぶのはナンセンス
第6話 役所に染まっているようで染まっていないスタンス
第7話 私は流山市。任期付職員として2度採用10年目を迎え