インタビュー

【仙台市 太田千尋氏:第3話】時間が経ったら絶対に復興する

太田千尋

仮設住宅はコミュニティができるまでが勝負

加藤:震災から3か月が経ったあと、他にはどのような仕事をされましたか?

太田氏:署長に「今しかできないこと」と言われていましたから、仮設住宅で起こる問題の対応をしました。仮設住宅はコミュニティが出来上がる前までが勝負なんです。そして、仮設住宅のコミュニティ形成を行政の立場で始めるのは、仮設住宅が完成し、居住を始めてからできれば3か月以内、遅くても6か月。それを過ぎると難しくなります。

仮設住宅には精神的に追い込まれている人がいる

加藤:なぜ、コミュニティを作ろうと働きかけたのでしょうか。

太田氏:ある時、区役所と消防が一緒になって、寄付された消火器をできたばっかりの仮設住宅の入居者に配りました。それを配っていくときに、鬱っぽい人やリストカットをしている人、いろんな方がいたんですね。ごみ屋敷もあったし、飲酒による暴行やストーカー問題もあって、逮捕者も出ました。

加藤:なるほど。精神的に厳しい状態に追い込まれていると、そういうことも起きてしまうかもしれませんね。

太田氏:5世帯とか10世帯とか、知っている人達が集団で移転した仮設住宅ではそんなにトラブルがないんですよ。ただ、私が担当する仮設住宅は、岩手、宮城、福島から単身で入っている人達なので、なかなか溶け込めないっていう人達が多かったんです。

仮設住宅の中でコミュニティを作った

太田氏:それをどうにかしようと考えたときに、仙台市役所の市民協働推進課とか区役所とかと連携して、コミュニティを作れるように動きました。

加藤:なるほど。

太田氏:震災から3か月くらいで仮設住宅ができて、そこからさらに半年後くらいに自治会ができました。そこで、一緒に防災訓練で炊き出しをしたり、花いっぱい運動(花を植えることで町の景観を良くする目的で作られた運動)をしたいという人もいて、少しずつコミュニティが出来てきた。

 防災訓練のときも、私達消防が防災訓練したって当たり前じゃないですか。しかも、頼っちゃうでしょ。そうじゃなくて、仮設住宅の周囲に住んでいる人達とも一緒にやった。そうすると安心するじゃないですか。周りの人達からも見守られていると。

時間が経ったら絶対に復興する

太田氏:ある日、皆で一緒にバスを借りて日帰りの旅行をしました。2008年6月14日に起きた岩手宮城内陸地震の大規模な土砂崩れの現場を見に行ったんです。今はだいぶ復旧しているので、『災害から時間が経ったら必ず復興する』と理解してもらうために、そこに連れて行きました。

岩手宮城内陸地震で被害の大きかった栗駒山

 

太田氏:参加者が食事をしながら自己紹介をして、それぞれの大変だったことをお互いに話して、そして聞いて泣きました。私も涙が出て来ました。

 その中で、参加者のある女性の方が何か一緒にやろうということで、仮設住宅に婦人防火クラブというのを作ることになりました。最初は、彼女達は二人くらいで仮設住宅の防火見回りをしていたんです。それがだんだん5人、6人と増えていって、最後は10数人ぐらいに増えて、犯罪や不審者も少なくなったんです。

加藤:素晴らしいことですね。

皆さんに仲良くなってもらって良かった

太田氏:みんな、災害復興公営住宅ができると、仮設住宅からそっちに移ってバラバラになる。そうすると、あまり仲良くなっちゃってもかえってかわいそうだなあ、という思いがあったりして、いずれにしても複雑な気持ちではありました。

 ただ、今でも仮設住宅の時代に出会った方同士が、お友達付き合いしていたりするのを見聞きすると、皆さんに仲良くなってもらって良かったと思います。

加藤:すごく嬉しいお話ですね。

太田氏:仮設住宅の皆さんは、3年なり4年なり仮設住宅で生活するわけじゃないですか。それぞれが遠くから入って来られて、「仙台では何もなかった」「友達もできなかった」「空白の3、4年間だった」とは絶対に言われたくないって思っていました。

経験がなくても 理解は進む

加藤:この仮設住宅のコミュニティの話は、担当者の方には常識的なものなんでしょうか。

太田氏:よっぽどじゃないと知らないんじゃないかな。

加藤:恐らく経験した方とそうでない方で、知識や意識がどうしても変わってしまいますよね。

太田氏:当事者にならないと肌身で感じる部分がわからないだけの話で、実際には知識としては、聞けば理解できるはずなんですよ。感情的にも多少は理解できるはずなので、そういうのを伝えていかなければならないと思っています。

婦人防火クラブで「朗読の会」を開催

太田氏その活動の一つで、先ほどとは違う婦人防火クラブで「朗読の会」を開いています。婦人防火クラブの人達とか、町内会の人達、自治体の人達、小中学生が震災直後に書いた手記があります、それを朗読するんです。

 震災の語り部は全国に多くの方々がいらっしゃいますよね。でも、私が知っている限り、被災地の方々が朗読をやっているのは全国でここだけだと思っています。最初は仕事の担当としてやっていましたが、今はプライベートで協力し参加しています。

婦人防火クラブ朗読会

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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