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倉田哲郎2

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多くの教育委員会は意思を持っていない -箕面市長 倉田哲郎氏(#1)

―教育には関わるプレイヤーが多く、自治体から大きな改革を主導するにも難易度が高い。首長が主導して改革を進めようとすると、場合によっては「政治介入だ」などと批判を受けることもある。
 そんな中、大阪府箕面市では自治体から公教育に関わるプレイヤーに働きかけを行い、有用性の高いデータを用いた分析や、学校の業務改善をいち早く進めている。その改革を進めた箕面市、倉田哲郎市長に具体的な実現までの手法と現在に至るまでの試み、そして、これからの展望を伺った。

教育に関わる組織が分散・多重構造であることが課題

加藤(インタビューアー):箕面市は公教育改革を進めていらっしゃいます。具体的にどういうところに課題を感じて取り組まれたのでしょうか?

倉田市長:最たる課題は、教育に関わる組織が分散・多重構造になっていることです。教育委員さんがいて、行政側の教育委員会事務局というのがあって、さらに学校がある。予算の権限だけは市長がもっている。上を見ると都道府県教育委員会もいる。

 しかも、学校には校長先生や教頭先生がいるけど、職員会議などの会議体もあったりする。現場の子供たちにたどり着くまでが非常に分散・多重構造。「これは、ちゃんと動く仕組みなの?」と、もともとずっと疑いを持ちつづけていたんです。

 少なくとも子供たちは毎日学校に通って、それなりに何かを学んで帰ってくるので、全く動いていない訳ではないらしい。だけど、一体何が、どこで、どうやって決まっているのかはよくわからない。

 だから、教育委員会から学校の内部に至るまで、ちゃんと整理しようというのが大きなコンセプトです。
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先生たちの勘と経験に頼りすぎていないか

加藤:具体的にはどのようなことを進められましたか?

倉田市長:まずは教育委員さんの過半数を公募しました。あとは、学校の中で教頭先生と普通の先生の間にミドルリーダーを作って、学校の先生の組織階層を変えることも試みています。

 これまでの教育の歴史的な積み重ねみたいなものは、それはそれで大事だとは思っていて、それを否定する気は無いんですけど、そうは言いながらも、先生たちの勘と経験だけに頼りすぎていないか、と。
教育の中身を考えていくときに、ある程度のエビデンスであったり、情報をきっちり取って、それに基づいて進めていく合理性も持つべき、というのがもう一つの僕の問題意識ですね。

多くの教育委員会は意思を持っていない

加藤:まず、2012年に公募を通じて教育委員会の在り方を変えていかれました。教育委員会の理想的なかたちは、どのようなものだと思っていますか?

倉田市長:これは箕面市教育委員会に限ったことではなく、恐らく全国の教育委員会で起こっている事だと思うんですけれども、多くの教育委員会は実態として主体的な意思を持っていなくて、追認機関や承認機関のように形骸化していることがあります。

 教育委員会という組織は制度上、いろんな意思決定をし、経営をしていかなければならない立場のはずなんだけれども、それだけの機能をはたして主体的に果たせているのか? というのが甚だ疑問でした。

 そこで、まずは教育委員会から変えていくことにしました。具体的には6人の教育委員のうち4人を公募で集めたのですが、そこに踏み切ったきっかけの一つが、何年か前にあった金環日食でした。

教育委員会とのやりとりの中で危機感を感じた

倉田市長:朝の登校の時間に金環食がピークを迎えるという、大自然のイベントがあったわけですよ。僕自身も最初はそんなに意識してなかったんですけど、ドライバーがわき見運転をしたら危ないからということで、どこかの市が登校時間をずらしたんですよ。その記事を見て、「そりゃそうだよな」って思ったんです。

 だから、教育委員会事務局に「うち大丈夫? どうすんの?」って聞いたら、「大丈夫です」って言われたんですね。「本当に大丈夫なの?」って言ったら、「ちゃんと見守りますから大丈夫です」って言うわけですよ。

 で、「見守っても、わき見運転の事故は防げないだろう」って言ったら、「ちょっと考えます」と言われたので一度引き下がったんですけど、しばらくして「あれどうなった?」って聞いても、また「大丈夫です」って言うんですよ。だから、「いや、大丈夫じゃないと思うよ」と言って(笑)。

 もちろん教育委員会が決めることだから、僕が口出す話じゃないけど、もしそこで何か事故があったときには、「リスクを認識しながら何も対策をしなかった、という事になるでしょう」、と。

 そしたらもちろん行政としての責任にもなるし、「何か具体的に対策した事実がないと、ダメなんじゃないの?」と言ったところ、やっと対策をしてくれたんです。

 結果的には、登校時間を前にずらして、その時間帯を観察授業にしてくれました。ただ、そこになかなか至らない危機感や切実感の小ささであったり判断の遅さ、我が事としての意識の薄さが気になって、「やはり教育委員会から大きく変えていかなきゃいけないな」、と思いました。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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