インタビュー

【福井県庁 岩田早希代 #5】常に怒りを原動力にして動いていた

岩田早希代6

7人からの推薦で地方公務員アワードを受賞

加藤:『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード』では、最多の7人からの推薦を受けましたね。

岩田氏:感謝しかないですよ。だって、推薦者がいないと受賞する確率がゼロじゃないですか。しかも県外の人まで応援の気持ちを持って推薦してくれたんですよね。それってすっごくありがたいです。

 逆に、リスクを省みず同じ役所の人も推薦してくれました。私のように浮いている人間を推薦するなんて、まわりの人にどう思われるかもわからない。今後もその組織で働かなきゃいけないのに、私を推薦してくれたことにホントに感謝しています。

 私はこの2年間ずっとマスコミの制作環境と比べて「不遇だ!不遇だ!」と言っていましたが、それが同じ公務員からみて共感されるとしたら、私一人がワガママを言っていただけじゃなかったんだと思えますよね。それは、「私は頑張ったな」と自分を認めてあげられることにもなる。

良いコンテンツを出すことに気持ちを集中するべき

岩田氏:もう一つの気づきがありました。それは、自分はメディアの人間じゃなくて、行政機関で働く公務員の一人であると認識できたことです。

 私が「不遇だ!」とぼやいていようが、行政機関は一つ物事を改善するにも長い道のりがある。私のプロジェクトに関してもそれは同じで、だとしたら、今ある環境の中で気持ちを切り替えて、真摯な取材をして、良いコンテンツを出すことに気持ちを集中するべきだ、と。その考えに至ったことはすごく大きかったですね。

 それは、今回、地方公務員アワードで推薦文を読んだ時に初めて認識したんですよね。これまでは、こういうものだと自分が理解して、前向きに気持ちを切り替えることができませんでした。

加藤:どこかで自らが持つ不満を、岩田さんに投影して応援している人が多いということかも知れません。庁内でのアワード受賞の反応はどのようなものでしたか?

岩田氏:忙しい夜に上司に、「岩田さんちょっと来てくれー」って机に呼びつけられて、「アワード受賞ってどこがすごいかわからんのやけど、資料にしてくれる?」って言われました(笑)。

加藤:(笑)。

岩田氏:私が自分で上司にそのすごさを説明するのも変ですけど、理解してもらいたくて紙に印刷して、すべて回覧したんですよ。だって、HOLGの記事を見れば大手企業が協賛していて、名だたる受賞者や審査員がいる。

 しかも、Forbesの記事にも出たりすると組織や公務員全体のイメージも良くなる。でも、それを言っても全然伝わらなくて、「Forbesってなんや」みたいに言われて、もうマンガみたいに地団駄踏みましたよ。「どうして分からないの~!?」って。アワード受賞で少しは庁内での評価が上がるかなと期待したんですが、そんなことは無かったみたいですね(苦笑)。

常に怒りを原動力にして動いていた

岩田氏:でも、動画の再生回数も期待していたよりも伸びなくて苦しい中、これまでの取材先の人とか、観光協会の人とか、まだ出会ったことのない知らない人たちからも受賞のお祝いコメントをワー!って沢山いただけた。

 これまでは取材先以外で、県民のみなさんとつながっているという感じが持てなかったんですけど、このことがあったおかげで県民の皆様に支えられていることがわかりました。だからこそ、今後出会う人たちに対しても、もっともっと真摯な気持ちで取材をしていきたいと思いました。

加藤:(笑)。

岩田氏:なんで笑うんですか(笑)、本音ですよ!これ本音ですよ!

 

 ほんとにこれに気づけたことっていうのは大きいんです。決して良い事ではないと思いますが、私はこの2年間、常に怒りを原動力にして動いていたんですよ(笑)。「くそー!」っていうのを(笑)。

 でも、ネガティブな心のエネルギーよりもポジティブな心で動けた方が、本当はもっと良いじゃないですか。だから、あと、10か月の任期の中では、そういった心持ちで今の仕事の責任を果たして行きたいと思っています。

編集後記

まず、忌憚なき意見を述べていただいた岩田さんに感謝したい。

 今後、地方自治体は市民へのサービスの質を高めるためには専門性を高める必要がある。その際、即時性を考慮すると、中途採用の重要性は高まるだろう。他の自治体から公務員が転職してくることもあるが、転職者の母集団の規模の違いを考えると民間企業からの転職者を受け入れることは避けて通ることはできない。

 かつて、民間企業から自治体へ転職する者は多くはなかった。その上、企業内の競争から逃がれるように後ろ向きな理由で公務員になる者も多かったと聞くこともある。しかし、最近では世の中のために働きたいと、企業で活躍していた民間人が転職するケースも増えてきた。

 ただ、残念なことに、私が見聞きする限り民間人が転職した際に役所に感じるマイナスのギャップは非常に大きい。率直に言うと、まだまだ自治体は民間経験者を最大限活かせているようには見えない。もちろん、民間経験者にも風土を理解し、最適な仕事の仕方を突き詰める必要はあるだろう。公務員を見下し、環境適応を目指す努力をしない転職者がいると聞く。それは問題ではあると思うが、筋論で言えば採用をしたのはその組織であるから、その責任は自治体側、究極的には首長や議会へと帰属するものだと考えるのが組織論としてあるべき形だろう。

 今後も民間から自治体への転職者は増加することになると予測される。その上で、民間経験者の働きやすい環境構築は間違いなく人事戦略の肝になる。そうであるならばこの際、新卒入庁組も含め、全ての職員に対して個人の仕事効率やモチベーションが高まる施策を徹底してみてはどうだろうか。今までの組織を重視した人事制度から、職員個人を重視した制度に変わらなければ、激変する民間企業の労働・雇用環境に競り負け、採用可能な人材のレベルも低下していくことになるだろう。

 民間企業のように分かりやすい評価軸を持たない行政は、本来、民間企業以上に職員のモチベーションを高める取り組みが不可欠なはずだ。売上目標を持たない、クビにならないというのは、一見、挑戦ができる環境であるように思う。ではなぜ、自治体は挑戦ができないと言われてしまうのだろうか。そこには突き詰めるべき余地があるように思うのである。

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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