インタビュー

【福井県庁 岩田早希代 #4】「○○さんの仕事は引き継げない」は本当か?

岩田早希代4

任期まであと10か月

加藤:3年の任期まであと10か月ですね。ご自身の意志としてはどうしたいのでしょうか。

岩田氏:本音で言うと、今の仕事量をこなしていくのは本当に大変なんですよね。今は、はっきり言って意地です。もちろんやりがいはありますよ。やりがいはありますけど、そのやりがいっていうのは取材が楽しいとか、取材先の方からたくさん学ばしてもらう点とか、そういうことだけで職場環境や待遇面にはないじゃないですか。

 前職では今よりも月に10万円以上報酬をもらって、コンテンツの評価ももらい、休みも確保されていました。そういう差があると、10年間慣れていた前職のような職場環境の方が良かったと思ってしまうところはあります。

加藤:「引き継ぎはどうするんですか?」とよく言われませんか?

岩田氏:言われます。ただ、職場では特に言われていないのでわからないですね。また同じマスコミ経験者で後任を探すのか、プロパーの方々で回すのか全く分からないので。

加藤:ただ、入れ違いの時期に入ってきても引継ぎもできないから、岩田さんみたいなスキルセットのある人を一本釣りで取ってくるんでしょうね。

岩田氏:はい。今のクオリティのものを今のコストで出し続けたいのであれば、制作経験者の一本釣りをすると良いと思います。それでも、今、働き方改革の波で超勤のしばりが厳しくて、職員の立場で動画を制作するスタイルは本当に「できない」状況になっているので、動画は外注するのが平和かもしれませんね。

「○○さんの仕事は引き継げない」は本当か?

加藤:ただ、外注するとコスト的に厳しいですよね。

 そもそも、「○○さんの仕事を誰も引き継げない」みたいなことを、自治体職員の人がよく言うと思いますが、それって本当ですか?

 世の中には制作ができる人は沢山存在しているじゃないですか。そういう人を採用するか、昔、映画製作のサークルで活動していてやってみたいとか、そういう人に手を上げてもらって引き継げば、それなりに回ると思うんですよね。専門性や特殊性の高いものを「あの人にしかできない」と捉えてしまうと、自治体組織の専門性は高まらないと思います。

 企業が新規事業を始めるために専門性の高い人を中途採用した時に、「あれは誰も引き継げないから今後やる意味ない」なんて話はまず出ないですよね。次の人材は採用するか育てるか方針が決まり、それを愚直に実行するだけですから。

岩田氏:そうですね。それに動画もメディアが作るものと同じ様なクオリティを出さなくても良いと思います。SNSに乗せる動画なので、もっと簡易的に携帯で撮ったりすることもできます。

 やり方を柔軟に変えて写真記事一本でいってもいい、SNSは情熱があれば誰でもスキル習得できて、魅力的な情報を発信することができると思うんですよね。実は過去に県庁内の職員たち向けのSNSセミナーを1度開催して、写真の撮り方、SNS映えする方法などを講義させてもらうこともありました。

縦割りと疲弊が職員の余裕を奪っている

岩田氏:今、私は県のすべての部署のトピックを網羅して配信していますけど、それぞれの持ち場の職員が自分の専門とする領域で、福井が誇れる情報を発信してもいいじゃないですか。

 全員広報じゃないですけど、すべての職員が広報部員となって福井県の魅力をそれぞれの分野で発信する気持ちがあれば、私が一人でやるよりもよっぽど広がるし、職員みんなが県に誇りと情熱をもって発信するようになる。今は町を歩いている学生さんも、お店の人たちも、県民みんなもSNSを通じて県の広報部員になってくれる時代ですよね。

 恐らく、役所の各課がそういうことに向かえないのは、文書作成とかヒアリングの準備とか議会準備などで、とにかく疲弊しているんですよね。縦割りが強いのもその連携を阻んでいるかもしれない。

 民間の感覚で言うと、超簡単そうじゃないですか。自分の部署の良いところをもっと積極的に発信したいというやる気のある各部署から、プロジェクトに参加したい人を出してもらう。そして、各課が月に1本記事を書くだけなら、みんなで割り振れば負担もそこまで大きくない。でも、その余裕がないんだと思います。

組織風土は事前に調べるべき

加藤:民間企業から転職して来ましたが、これから役所に転職をしたい人に対するアドバイスはありますか?

岩田氏:求められている業務だけでなく、組織風土のようなものは事前に調べてから転職された方が良いと思います。それは自治体によって違うと思いますが、改善、効率化といった民間人の強みを受け入れない体制だとした場合に、その人が役所に入っても力を発揮できない。すぐに役に立てないと思うからです。

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

他のインタビュー記事を読む

ネイティブアド



頁トップへ