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【福井県庁 岩田早希代 #3】何もわからないまま走るのがつらい

自分に適任だと思った

加藤:福井県庁に勤める経緯を教えて下さい。

岩田氏:この仕事の募集を見て、これまでの経験を活かせて、福井の魅力をテレビとはまた違ったスタイルで発信できることが魅力的な仕事だと思いました。自分にピッタリで適任ではないかと(笑)。

加藤:NHKに勤めた後に転職して、2年間アフリカに行っていますよね。これはどういうプロジェクトだったのでしょうか。

岩田氏:アメリカに本部がある保健衛生系のプロジェクトをやっている国際NGOに所属しました。HIVやマラリアなどの病気の予防啓発ビデオを作って、現地の村々で上映して啓発活動を行いました。アメリカが本部のNGOなので、上司もアメリカ人で公用語も英語でしたから、英語で台本書いて村々にロケに行って、蚊帳の中で寝ていました(笑)。

加藤:そうするとNHKは一度辞めたんですか?

岩田氏:はい。ただ、ありがたいことに、アフリカから帰ってきてまた声をかけてもらって1度戻りました。

加藤:その後、NHKからFBCアドサービスというところに転職されています。

岩田氏:日テレ系の福井放送の関連の制作広告会社です。FBCアドサービスとNHKとまた全然真逆に違った楽しさがありました。

 NHKはじっくり時間をかけて掘り下げた取材をする組織ですよね。民放の制作会社はトレンディな新しいお店の紹介であったりとか、新しい商品を紹介するCMだったりとか、そういうのをやっていました。

負荷が成長につながる

加藤:入庁したとき、2年2か月前と今では変化はありますか?

岩田氏:おかげさまで今、メディアにいたときよりもメキメキスキルが上がっています。ものすごいスピードで作って作って作って、出して出して出しまくっています。負荷がかかる分、自分が成長しているのがわかります。一人で制作をする時に時間を短縮できる撮り方もわかってきましたし、アイデアが広がるようになりました。

加藤:役所内の立場に変化はありますか?

岩田氏:変わらないです。ただ、最初の頃は意見を言うことに遠慮をしていましたが、今は制作に関して理不尽なことがある場合はすごく戦って、「嫌だ」と言うようにしています。それによって、やらなくていいという判断になる時もあるんですけど、それは上が納得してではなくて、「岩田が今日も吠えているから手が付けられない」みたいな感じなので、周りからの理解が得られているわけではないですね。

何もわからないまま走るのがつらい

加藤:今はお仕事を楽しめていますか?

岩田氏:本音でいうと、何もわからないままとにかく走るのがつらいですよね。これまでの環境であれば、専門的な能力を持つ上司や同僚たちに囲まれて、一つひとつの番組や制作物に評価がついてきた。「これは良かった」、もしくは「このほうが良かったかもね」と自然に話ができて、日々自分の仕事が評価されることに自分の存在意義を感じていたんですよね。

 今は、自分の成果物であるコンテンツに対する周りからの関心が無く、まだ動画の再生回数もそんなに良いわけじゃない。そうなると、自分の中では本当に血を吐く思いで作っているものが、何につながったのかもわからない。

加藤:そもそも、制作スキルは上司の方は持っていないわけですよね。岩田さんの仕事の評価はどうなされるんですか?

岩田氏:実質的にはされていないですね。どういう評価かもわからないまま2年2か月走っているのでそこは不安を感じています。

 でも、「もっとこういうものを作れば良かった!」とは絶対思わないようにしていて、走り続けなければいけないと感じています。そうでないと、自分自身の心が崩壊しちゃうので、常に気を奮い立たせて走り続けようとしているんです。

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