インタビュー

【福井県庁 岩田早希代 #2】自治体は個人の能力が活きる環境にすべき

岩田早希代2

職場環境の変化に対する戸惑い

加藤:福井県庁に転職されてきて、何が大変でしたか?

岩田氏:以前の会社と環境が全く違うので、それに慣れることでした。前職では自分は良いものを作ることに専念させてもらえていましたが、県庁では様々な業務や決裁が必要となります。そこは今でも改善できないかと模索しています。

加藤:例えばどういう部分が改善できそうですか?

岩田氏:既に様々な提案をしていますが、まず、決裁が必要な案件を減らすべきだと思います。年間200本以上SNSに投稿しますが、その記事や動画作成時に台本を一言一句記載したり、原稿コメントの根拠となる資料を全て添付したり、取材計画や広報計画などの決裁が必要で、現在は4人の方から判子をもらっています。同じ県内の自治体の方に聞くと、facebookの投稿をいちいち上司に決裁もらうということはないという意見も多かったので、自治体によっても違うようです。

新聞のコピーは効率化できる

加藤:他にも改善出来そうなことはありますか?

岩田氏:仕事の環境はもっと改善できると思います。例えば、新聞をコピーする当番が割り振られていたりとか、お昼の出前を取ったりしています。前職の時には性別も役職の上下も関係なかったですし、お茶くみとかコピーを取る方が専門でいました。一定の給与水準の人でもこういう役割を受けていて、人件費を考えるともったいないと感じます。

 観光課などすごく忙しい課はバイトさんとかを雇っていることもあるんですけど、これは他の自治体に聞いてもどこも大体「やっている」と言われます。過去にミーティングの場で「これ私がやる必要ありますか?」って言ったら、その場が凍り付いていたので、「やらなきゃいけないんですね」と飲み込みました(笑)。

飲食店に通帳のコピーをもらう

岩田氏:あと、年間で50回以上飲食店で食べ物の撮影をしますが、2週間前までにお店の見積もりとって、事前に振込先の情報を取り付けなければいけない。しかも、通帳のコピーなども飲食店からもらわなければいけない。

加藤:職員の手間もそうですけど、飲食店側の負担も大きいですよね。

岩田氏:それが経理のルールだから従わなければいけないんです。動画に関しては1か月半前に企画書をあげるので間に合うんですけど、日々行っているSNS取材はその経理処理の作業が追いつかないので全部自腹です。

 飲食店は650円の売上のために、怪しい県庁の姉ちゃんに「通帳のコピー下さい」って言われて、面倒にも請求書を発行しなければいけない。「請求書なんて出したことないんやけど」って言われても、「そこを何とかお願いします」って言って出してもらう。そういうことをやっていると時間がいくらあっても足りないので、「650円くらいもういいわ」、というのが365日続いていきます。仕事のためだと割り切ろうと思ってやっていても、上司に「岩田さんは取材で美味しいものたくさん食べられて役得やねー」なんて言われた日にはもう、悲しくて泣けました。

個人の能力が活きる環境にすべき

加藤:過去に働いていた企業との違いはどのような点にありますか?

岩田氏:当然かもしれませんが、機材や人員が足りないことです。
今は全て1人でやりますが、以前はチームプレーでカメラマン、音声、照明、ドライバー、アナウンサー、ディレクター、AD、編集、全部分業です。

 プロフェッショナルが集まり一つのもの作り、上司も危機管理とかクオリティ管理をして導くことができる。私はディレクターだったんですけど、ディレクターは企画、制作、演出に集中できました。

 機材や人員が足りないのはしょうがないとしても、職務に対する理解は欲しいですよね。県庁の編集室で根詰めて編集をしなきゃいけない時に、上司から「面談したいからどいて」と言われて、編集の手を止めないといけなくなる。編集室にソファがあるからなんですが、制作をする人の環境を考えているとは思えないですよね。ネット環境も少しでも理解があったら今と別回線を一本引くとか、いくらでもできると思うんです。

 もう2年くらい言っていましたが、返ってくる答えは「どんなに不便でも、どれだけ時間がかかっても、それで作業ができるなら我慢して、その方法でやってくれよ」という感じです。

 ネット配信の業務といえどもパソコンは一般の職員と同じもの。スペックの低いパソコンがフリーズして1日3回は再起動。動作も遅いですし、インターネットはセキュリティ上、ほとんどのページが見られない。私の業務では人やブログ、お店、商用フリーのイラストやBGMなど、リサーチすることが沢山あります。そのウェブサイト毎にIT課へ「このウェブサイトを見られるようにしてください」と申請書を書いています。

 もちろん、全てが改善されるのは無理かもしれません。ただ、専門家として雇ったのであれば、その専門のことに集中させる環境は目指すべきだと思います。学芸員の人や建築士の人も専門能力を生かせない雑務を多くこなしているので、もったいないなと思います。

 社会人経験者採用とか海外生活経験者採用枠とかで入った人も、その経験が生かされてないような仕事をしている。職場全体に言えることですが、個人の経験や専門性を生かせる配置や環境にすべきだと思います。

 

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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