6月9日(水)に早稲田大学が主宰する大隈塾[正式名:たくましい知性を鍛える]の授業の一環として、地方創生をテーマに石破茂前地方創生担当大臣と、総務省から神奈川県庁に出向している脇雅昭氏が講義を行ない、早稲田大学の学生を中心として約100名の講義生が集った。
大隈塾は早稲田大学が2002年に開講した、リーダーを輩出するためのプログラムである。もともとは政治家が中心となって講義をするイメージが強いものであったが、最近では政治家のみならず、経済界その他、さまざまなその道の練達の士に講演をしてもらうことで、学生が多様な考え方を身に付けるためのプログラムに、変わりつつあるように思えた。
実際に、今年度からカリキュラムを衣替えした大隈塾の狙いには『地方から日本と世界を変える』というコンセプトがあるようだ。
人口減少の実態と課題
石破氏の大隈塾における5時限目の講義は、上記のような極めてショッキングな出だしとなり、学生たちの緊張をいやがうえにも増す。
人口ピラミッドについて言及した後に、『地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減』の著者である増田寛也氏の見解を取り上げ、女性の人口分布、出産、結婚へと統計解析を織り交ぜながら論を進める。
食料を作って、エネルギーを作って、赤ちゃんがいっぱい生まれる地方が滅んで、食料も作らず、エネルギーも作らず、出生率最低の東京だけが残る日本というのは、国家として成り立つだろうかな、と私は思っています」
と、厳しい現状に触れる。
地方創生が失敗すると 国全体が潰れる
という認識のもと石破氏から強い意思が発せられた。そして、数々の成功事例と課題を列挙しながら講義は進む。
農業 漁業 林業は目一杯伸ばしていける余地がある
成功事例をあげた中にも、それが雇用や所得を取り戻す政策に大きく繋がらないケースがあることを示す。その一方で、これからの地方創生を考える際に、日本の農業、漁業、林業にはまだまだ伸ばしていける余地があり、多くの地方にはその資源があると訴えた。
続いて、観光の可能性に話が及ぶ。
町をどうやって伸ばすかは そこの町でないとわからない
講義は終盤を迎えつつある。石破氏は地方創生大臣として、実際に現地へ赴く中で自らが感じたことを学生に伝えていく。
北海道だけでも179の市町村があって、稚内と網走と帯広と根室は全然違う。そこの町をどうやって伸ばすかは、そこの町でないとわからない。そんなことは霞ヶ関でわかるわけがない」
石破氏は50分の講義の最後を、次の言葉で締めた。この言葉には揺るぎない信念が籠っていたように見えた。
地方創生の営みとはそういうことで、東京と地方、東京の負荷を減らすために、地方は何ができるのか。地方を発展させるために、東京は何ができるのか。お互いにそれを考えて行かないと、この国に未来なんかありはしません。私たちは、自由で平和で豊かなこの日本を、次の時代に残したいと思っています。
横文字を使えばサスティナブル(維持可能)な、インディペンデントな(自立した)国を創りたいと思っています。その国が創れるか、創れないかはまさしく国民の意識にかかっているのであって、政治家だけに頼ってはいけません。国民がどういう国を創るか、その意思表示をするのが、それこそ主権者の責務というものなのでしょう。この国に国家主権はあるのかということです。国民主権はあるのかということです。
どういう国を創りたいのか、それは皆さん方が考えることだし、私たちはその議論を正面からしていって、そして、良い国を次の時代に残したいと思っています」
国民主権という言葉が重い。我々は主権者として、正しくその権利と責務を果たせているのだろうかと自問せざるを得ない。
<後編に続く>
※後編は明日更新します
地方自治体に関するインタビュー記事を読む
株式会社ホルグ代表取締役社長。株式会社ネクスト(東証一部:2120 ※現「株式会社LIFULL」)に2007年4月に新卒入社し、営業グループマネージャー、WEBプロモーションにおけるグループマネージャーなどを経て、2012年5月に同社インドネシア子会社『PT.LIFULL MEDIA INDONESIA』の最高執行責任者(COO)/取締役として出向。子会社の立ち上げを行い、以降4年半ジャカルタに駐在。2016年9月に同社退社後に、株式会社ホルグを設立。
お知らせ
Heroes of Local Governmentでは、『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード』を開催し、地方公務員の方が「すごい!」と感じる方を表彰させていただきます。ぜひ、皆さんが「すごい!」と思う方を他薦で教えていただけたら嬉しいです。
詳細はコチラ