(文=秋田将人)
このたびは、拙著『公務員のための問題解決フレームワーク』(学陽書房)を紹介する機会をいただき、ありがとうございます。本書は、業務改善、新規事業の立案、予算要求、組織運営の効率化等、自治体職員が実務上遭遇するさまざまな場面を挙げ、フレームワークの使い方を紹介したものです。
フレームワークを使えば、思考を省力化できる
フレームワークとは、簡単に言えば、意思決定や問題解決のための思考方法です。和訳は「枠組み」「骨組み」「構造」などですが、要は問題解決のためのツールです。その代表例でもある5W1Hなどは、皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。
こうしたフレームワークを使えば、「この問題をどうやって解けばよいだろうか」といちから考える必要はなくなり、思考を省力化して、問題解決をすることができるのです。
現在、私は基礎自治体の管理職ですが、フレームワークの存在を知ったのは、新人研修のときです。その後、研修などを通じて、さまざまな手法の存在を知るようになりました。そして、数多くの業務を経験していく中で、このフレームワークが自治体でも十分に活用できることを実感していったのです。
しかし、フレームワークに関する本は数多くあるものの、ほとんどはビジネスパーソン向けであって、公務員の実務に特化した書籍はありませんでした。そこで、公務員を対象として、実際に経験したさまざまな事例などを中心に、実際の活用方法をまとめたのが本書です。このため、皆さんにもきっと「ああ、そういうことって、確かにある!」と身近に感じていただけるかと思います。
本書の3つの特長
執筆にあたり、次の3点を意識しました。
第一に、自治体の事例をあげてフレームワークを解説したことです。
フレームワークに関する書籍は数多くありますが、公務員に向けて書かれたものではないため、公務員の読者は自分の立場に置き換えて考える必要がありました。しかし、この本ではすべて自治体で起こる事例を示して、解説しています。
第二に、ロジカル・シンキングとラテラル・シンキングの両方を紹介したことです。
一般にフレームワークというと、多くの場合、ロジカル・シンキングを指します。垂直思考とも呼ばれ、与えられた問題に対して論理的に考える直球思考です。これに対して、ラテラル・シンキングとは水平思考とも呼ばれ、問題そのものを疑うなど、論理的思考とは異なる変化球思考です。本書では、この両方を取り上げています。
第三に、問題解決能力だけでなく、問題発見能力も身につくようにしたことです。
フレームワークは問題解決に有効です。しかし、単に目の前にある問題を解決するだけでなく、「そもそも、これは本当に問題なのか」と疑う力が身につきます。目の前の問題に目を奪われるのでなく、より根源的・本質的な問題を発見することができる力が身につきます。
本書の構成
では、本書の概要をご紹介します。
第1章 業務の効率を上げるフレームワーク
業務の効率を上げるためのフレームワーク10種類を紹介しています。代表的な「5W1H」をはじめ、自治体でもよく活用する「PDCA」「KPI」などを取り上げています。
第2章 問題解決のアイデアを出すフレームワーク
問題解決のアイデアを出すためのフレームワーク10種類を紹介しています。新人研修などもよく紹介されるKJ法をはじめ、大谷翔平選手が活用したことでも有名な「マンダラチャート」などを取り上げています。
第3章 組織の効率を高めるフレームワーク
組織の効率を高めるフレームワーク10種類を紹介しています。ヒヤリ・ハットで有名な「ハインリッヒの法則」や、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」との「マズローの欲求5段階説」などを取り上げています。
第4章 自治体の現場で特に役立つフレームワーク
自治体の現場で役立つフレームワークを13種類紹介しています。これは、ベテラン職員であれば、必ずといっていいほど身につけている、「ハード・ソフト」など自治体職員ならではのフレームワークです。
第5章 自治体でも活かせるラテラル・シンキング
ラテラル・シンキングでは、「問題の設定を変える」「別人になって考える」など、頭の柔らかさが求められます。自治体の実務で、この思考法がどのように活用できるのかを紹介しています。
第6章 「問題」の見つけ方・設定の仕方
問題は、いつも目に見えるものとは限りません。目に見えない本当の問題を解決しなければ、いつまでたってもそれに関連するさまざまな問題が発生してしまうこともあります。こうしたことから、ただ問題を解決するだけでなく、問題を発見することも、自治体職員にとって重要です。この問題発見能力を身につけるためのヒントを取り上げています。
本書では、冒頭に事例を示しています。これをぜひクイズだと思って、解いてみてください。そうすると、きっとフレームワークを身近に感じることができるはずです。
本書が、少しでも皆さんの業務の一助になれば、著者としてこれほどうれしいことはありません。
書籍の詳細はコチラ↓
(学陽書房HP)http://www.gakuyo.co.jp/book/b564785.html
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