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畑中龍太郎1

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【元金融庁長官 畑中龍太郎氏 #1】公務員はサービス業

―2017年11月12日に渋谷ヒカリエで開催された「第10回よんなな会」。国家公務員、地方公務員が600人集まる中、元金融庁長官 畑中龍太郎氏が「公務員に期待すること」、そして、「家族のありかた」についてお話された。第1話。

(紹介のアナウンス):元金融庁長官でこの10月までコロンビア大使を務めていらっしゃいました畑中龍太郎様です。1976年に当時の大蔵省に入省されました僕らの大先輩になります。今回、畑中様に登壇をお願いした理由は、この10月にコロンビア大使を辞められて、まさにこの世界で登り詰めた方が今どういう景色が見えて何を思い、そして、今後の日本をしょっていく僕らに何を期待するのか、そういった話を承れたらなと思っています。それでは畑中様お願いします。拍手でお迎えください。

畑中氏:ただいまご紹介いただきました畑中龍太郎でございます。このように大勢の皆さんの前でお話することを尻込みしておったのですけれども、たいへん貴重な機会を与えていただきました。今日ご出席されておられる皆さん全員に深く感謝を申し上げます。

 私はこの10月にコロンビア大使を辞任いたしました。二十何歳かで就職をして41年と6カ月仕事をしてまいりましたが、そのうち40年と6カ月を公務員、いわゆる役人家業をやってまいりました。

 そういう偏った経験で狭い世界しかほとんど知りません。皆様方のご参考になるようなことをお話できるか自信はまったくもってございませんが、せっかくの機会ですので、少しお時間をいただきたいと思います。

公務員はサービス業

 まず今日の話、本題に入ります前に公務員の皆さん方に一つご質問を。「公務員」とはいったいどの業種に入っているとお考えでしょうか? 民間でいえば、クロネコヤマトとかアマゾン、セブンイレブンとか、お医者さん、看護師さん、そういった方と実は同じサービス業なんです。

 それではそのサービス業で大切なことは何か。私は3つあると思います。1つは「気安さ」。ネクタイやスーツではなくて普段着で行ける気安さが要る。2つ目は「間口の広さ」といいますか、何でも相談に乗ってくれる、たらいまわしをしない。3つめは時間とお金をかけて来てくださったお客様、利用者に「あそこに行ってよかった」、「参考になった、また行こう」という気持ちになっていただくには、役に立たなければならない。「高い技量を持たなければならない」ということであります。

 いま申し上げました「気安さ」とか、「間口の広さ」というのはそんなに難しい話ではありません。しかし「役に立つ。高い技量を持つ」ということ、これはなかなかに難しいことでありまして、じゃあ、どうしたらいいのか。長い間お客様や利用者から評価や信頼を得るにはどうしたらいいのか。

信用と信頼は座っているだけでは得られない

 世界で200年以上続く老舗企業が何社あるか研究された先生がおられます。後藤俊夫教授。この先生によれば個人企業も含めて世界中で200年以上続く会社は、中国64社、アメリカ88社、イギリス315社、フランス331社。ドイツは多いですね、1563社。そして日本はこのドイツの2倍の3113社あるそうであります。

 数年前、NHKがインタビュー番組で日本の“老舗企業の長寿の秘密”という題のインタビューがありまして、3つのキーワードに集約をされました。1つ目は、何よりも「信用を重んずる」。2つ目は、「先の先を読む経営をする」。3つ目は、されど「本業を疎かにしない」。この3つのキーワードに集約をされました。

 そして、どれ1つ欠いても10年も持たないというのが結論でありました。この信用というもの、信頼というものは座っているだけでは得られるものではないと。信用というのは自分たちの有用性、先ほど申しあげました「役に立つ」、そういうことを広く社会に示し続けていくことによって初めて得られる。

経済的社会的価値を広く社会に示し続けていく

 堅い言葉で言えば、企業や組織の経済的社会的価値を広く社会に示し続けていくということであります。そして、そのためには2つのことが大事だと思います。

 1つは、自分たちのビジネスモデルや自分たちの企業カルチャーへの、揺るぎない自信と誇りを持っているかどうか。みなさんでいえば、皆様方の施策や仕事ぶりや職場のエネルギー、そういうものへの揺るぎない自信と誇りがあるかどうか、それが決定的に大事だと思います。

 そしてもう1つは、弛まずに自己変革を続け、自律的な対応を心がけ、チャレンジをしていくことによって、自分を高めていく。これもとても大事であります。例えば、この企業カルチャーやビジネスモデルに揺るぎない自信と誇りがあれば、法律違反を犯す、あるいは法律に抵触しなければ何をやってもいいという行動原理にそもそもなるはずがないわけであります。

 昨今、名だたる企業が耳を疑うような行動をとって、連日マスコミに報道されておりますけれども、今申し上げた自信と誇りが組織の隅々まで浸透していれば、そういうことはそもそもあり得ない。逆に、自然にお客様や利用者に自分たちの最良なサービスや商品や機会や情報を提供しようという姿勢になるはずです。ただ、これを言うのは簡単です。しかし、具体的にどうやったらいいのかという方法論になりますと、これはとても難しい。それが本日皆様にお話をしたい、届けたい皆さんへの「5つの期待」であります。

 ただ最初にお断りしたいのは、大昔ギリシアにソクラテスという哲学者がおりまして、この先生はとても良いこと言っています。「賢者は歴史を語り、愚者は経験を語る」と言いました。私の経験は大したことはございませんので、どうかこれからお話することを鵜呑みにせずに皆様お一人お一人で考えていただきたい。そのお考えになるための素材を提供するだけでございます。お一人お一人で考える、それが大事だということであります。

※本記事は全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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