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【元金融庁長官 畑中龍太郎氏 #3】学校や公務員試験の成績は何の参考にもならない

畑中龍太郎3

―2017年11月12日に渋谷ヒカリエで開催された「第10回よんなな会」。国家公務員、地方公務員が600人集まる中、元金融庁長官 畑中龍太郎氏が「公務員に期待すること」、そして、「家族のありかた」についてお話された。第3話。

畑中氏:皆様への2つ目の期待は『実現力』を磨いていただきたい。磨き方はいろいろあると思います。

 今日は3つだけ申し上げますが、1つは“粘り強く”ということであります。大きな仕事、難しい仕事ほどすぐには実を結びません。半年や1年で実を結ぶということは本当の仕事ではないと私は思っています。
大先輩からこう言われました。「努力をしても実を結ばないのが人生だ。しかし、実を結ばぬことを覚悟の上で努力をしていけよ」と私は言われました。それがなければ世の中を変えるような大きな改革はできないということだったんでしょう。

 2つ目は“逃げない”ということ。特にリーダーは逃げてはならない。私が最も尊敬する政治家であった与謝野馨先生からこう言われました。「おい畑中。役人は理屈だぞ」。これは屁理屈の意味の理屈ではなくて、論理と構想力を磨けということだったと思います。これがしっかり磨かれていれば、政治や議会におもねる必要はありませんし、泰然と仕事ができます。

 3つ目が“決断”。決断力ということ。リーダーになればなるほど、管理職になればなるほど孤独であります。最後は一人で決断をしなければならない。それが本当に歴史に耐えうる決断なのか。国民に恥じないような判断なのか、ということを考えてください。思い悩みます。しかし決めるときには決めなければならない。そして、決断の裏には責任があります。

学校や公務員試験の成績は何の参考にもならない

 「1.01・0.99」の法則と言った人がいます。これ、ご存知でしょうか? 例えば、今年4月にある県庁にAさんとB君が入りました。Aさんは「さあ、これから毎日1%能力を向上するように努力していこう」と、そういう決意で仕事に臨みました。1年後どうなっているか。これが1.01の365乗で37.8です。

 かたやB君は「やった。試験がやっと終わった」と言って、前の日よりさぼって毎日1%ずつレベルが下がることをやっている。1年後にどうなるか。これが0.99の365乗です。これは0.03なんです。

 これを30年続けたらどうなるか。Aさんのほうは200兆をはるかに超える数字になります。B君のほうはゼロが60以上続き、限りなくゼロに近づきます。恐ろしいばかりの差が、たかだか1%の差で出てくる。

 当然お気づきのように、一人のほうは無限大に成長していく。もう一人はゼロに限りなく近くなるという、弛まぬ努力の大切さを教える一方で、もう一つの意味があります。それは皆さんが就職をされるときの「公務員試験の成績や学校の成績というのは、およそ何の参考にもならない」ということを意味しています。

 大事なのは入ってからどうするか。入ってから自分を磨く努力をしていくかどうかで人生は決まるということであります。そして、そうした人間かどうか、そういう意思や資質を持っているかどうかを見抜くのが人事の仕事、目利き力の大切さを教えている法則だと思います。

一流外交官は任国を愛することができる

 35年前、私はアルゼンチンで二等書記官をやっていました。アルゼンチンがイギリスと戦争をやった時代ですけれども、越智啓介という大使にお仕えいたしました。越智大使は私に「おい畑中、一流の外交官とそうじゃないのをどうやって見分けたらいいのかを教えてやろうか」とおっしゃいました。

 そして、「一流の外交官とは任国を愛することができる外交官だ、そうじゃないのは二流以下だ」とおっしゃいました。外務省というのは年がら年中外国に行っているわけです。みんなアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、そういうところに行きたい。

 ところがどっこい、そうは問屋が卸さない。だいたい行きたくないところに行かされることがほとんどであります。暑い国、寒い国、危ない国、やばい国、そして日本と仲が悪い国。そういうところにほとんど回される。しかし、行った国、行った国でその国を愛する。そのためには語学は当然でありますけれども、その国の社会や習慣、文化、そして、多くの人と交流してその国を理解し、愛する。たいへんな努力です。これができるのが一流で、語学しかできないのは論外だとおっしゃっていました。

 努力努力と耳にタコみたいな話をしましたけれども、疲れるなあという方にお勧めしたいことがあります。それは「自分に投資をする」ということであります。仕事のスキルを磨くような投資でももちろん構いませんが、私はそうじゃない方がいいと思います。

 音楽でもいいですし料理でもいいですし、語学でも何でもいいと思います。要は自分の世界をたくさん持つということです。そのことによって余裕ができます。また、人間の幅も思索の幅も広がります。20年、30年こういう自分の世界を持ち続けた人とそうじゃない「仕事人間」では大きな差が出る。「仕事人間」というのは強そうに見えますけど、ポキっと折れる、たいへん弱いものです。

※本記事は全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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