本記事では、有料メルマガ「週刊寺本英仁@島根県邑南町/「巻き込む力」と「ビレッジプライド」の育て方」の一部(A級グルメ連合についてのストーリー)をご覧いただけます。なお、掲載するメルマガは約3か月前に配信した内容です。最新かつ、全文の閲覧を希望する場合はコチラからお申込みください。
【第3号の目次(2019年6月26日配信)】
1.近況ーー広島でトークイベントを開催しました
2.里山レストラン「香夢里」は立ち止まらない(3)
3.<A級グルメ連合>の仲間たち 小浜編(2)
4.著書の案内、質問募集!など
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3.<A級グルメ連合>の仲間たち 小浜編(2)
=志を同じくする5市町の取り組みを連載形式で紹介していきます!
今回の取材が6回目の小浜市訪問になる。
「にっぽんA級グルメのまち連合」(以下「A級グルメ連合」)の同志である御子柴&畑中コンビが、今回も出迎えてくれた。二人と一緒に向かったのは、海辺の志積区である。初めて小浜市を訪れたとき、真っ先に御子柴&畑中コンビが案内してくれたのが、市の中心街ではなく、この内外海地区の志積区だった。
志積区は、昭和40年代から関西方面の海水浴客を多く受けいれ、民宿業を営むことで生計を立ててきた地域だ。現在は高齢化が進み、後継者問題や海水浴離れが影響し、かつては約100軒あったという民宿が現在では約50軒と半減している。
御子柴&畑中コンビはこの地域で、レストランに加えて宿泊施設を整えた海辺のオーベルジュ(宿泊設備を備えたレストラン)を計画している。そのオーベルジュで、邑南町の「AJIKURA」のような「A級グルメ構想」の拠点レストランとして料理人の育成を目指そうというのだ。
「寺本さん、ここで研修生を指導してくれる料理人は見つかりませんか?」
僕と同い歳で、プロ野球選手やラガーマンのような体格の畑中さんが迫る。御子柴さんも熱い目で僕をじっと見ている。
このプロジェクトに、二人がただならぬ想いで携わっていることを僕はよく知っている。彼らをここまで熱い想いにさせるのは、古来、食の都である小浜の自負と、そこに住んでいる人の熱さが伝染しているのだと手にとるようにわかる。
今回も言葉の端々から情熱が伝わってきた。たしかにアイデアも環境もいい。ただ、建物が完成していないこともあってか、いまいちピンとこない自分がいる。
僕は二人に地元のキーマンを紹介してもらえないかと頼んだ。
仕掛ける市、観光局だけが盛り上がっているのではないか?
果たして当事者の地元はどのように考えているのだろうか? とも思ったからだ。
紹介して頂いた地元のキーマンは安倍浩之さん。
地元で福祉事業所を手広く手がけ、事業家として成功している安倍さんのことは以前から知っていた。だから彼がこのプロジェクトのキーマンと聞いて驚いた。
「この海岸一帯で昔は民宿が100軒あったんですよ。それが今は50軒まで減ってしまった。とくにこの志積区では、1軒だけになってしまった。その1軒だけ残った民宿・九兵衞を改築、増築してオーベルジュを開きたいんですよ」
安倍さんの説明に、僕は一瞬、オバマ前アメリカ大統領と安倍総理が会談したという高級寿司店「銀座久兵衛」を思い浮かべた。だが現状は、海辺にある普通の民宿である。
ここからどんな内容で、新しく生まれ変わっていくのだろう。
名付けて「志積 まるごとプロジェクト」。具体的には、民宿・久兵衛を改修し、宿泊2棟(全10室)、レストラン棟1棟で、「3世代が楽しめる」をコンセプトとするオーベルジュになるという。
僕は「3世代」をコンセプトにした理由を、安倍さんに尋ねた。
「ピークだった昭和40年代から50年代に来てくれたお客様が、今、お祖父さんやお父さんになっている。夏休みに海水浴をした楽しかった想い出のあるここ志積に、お孫さんやお子さんを連れてきて新しい想い出をつくってほしいんです」
昔はシーズンと言えば夏休みだけだったが、今度は一年中遊べるように、季節に応じた漁業体験を用意しているのだそうだ。
小浜市は邑南町と違って海がある。鯖だけではなくアワビ、サザエ、タコ、海藻類など200種類もの魚介類がとれる場所なのだ。
そして、このオーベルジュをプロデュースするのが、ニューヨークの日本食レストランをはじめ、日本各地でレストランのプロデュースを手掛けている中東篤志さんだ。
プロジェクトの予算は総額1億円。民宿・久兵衛の社長が合同会社の社長になり安倍さんたちが出資。約4000万円を合同会社が負担して、その後の経営も行う。
行政に頼るだけでない、成熟した地域住民による自治こそ「A級グルメ構想」の理念である。ここ小浜市でも着実にその理念が広がっていると思うと嬉しかった。
邑南町の「A級グルメ」構想では、「食」や「農」に興味のある都会の若者に向けて、プロを目指す「耕すシェフ」という研修制度を作り、その研修の場として高級イタリアンレストランの「AJIKURA」をはじめ、「食の学校」「農の学校」とした施設・仕組みをつくってリードしてきた。
だが、丸8年を経た現在、公民館単位(小学校が存在するエリアを中心としたイメージ)を中心に、地域で住民がお金を出し合って合同会社を設立する地域おこしが主流になっている。
その合同会社が経営母体となり、住民たちが自ら空き店舗を改修し、パン屋や蕎麦屋を開業、移住者にお店を運営してもらうやり方である。
ただし小浜市の「志積まるごとプロジェクト」場合、お店を運営していくために必須となる料理人の研修制度が、まだ始まっていない。
設備、資金、運営ノウハウを担当するプロデユーサーが決まっているものの、研修生の募集も始まっていない。それに肝心な料理人は?
安倍さんと御子柴さん、畑中さんに質問したら声を揃えてこう返ってきた。
「そこを、寺本さんに考えて欲しいんですよ」
聞かなければよかった(笑)。
ただ、この「A級グルメ連合」のいちばんの目的は、A級グルメ構想のノウハウを各自治体に移築すること。もっと詳しく言えば、「耕すシェフ(地域おこし協力隊)」の募集ノウハウを含めて移築することが、当然の内容になっているのだから、こうしたことを考えるのも、僕は役割として課せられているのだ。
とはいえ受け入れ体制もまだまだ準備中。そんな中で、どうやって参加してくれる研修生を募集し、料理人を探せばいいのか。なかなかの難題だ。(つづく)
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