先日、友人が茅ヶ崎にある自宅まで来てくれたので、近くの海が見えるカフェで食事をし、そのまま海岸沿いをドライブした(その日は渋滞につかまり失敗だったが…)。
友人の一人は自然があるところに引越しを検討しているとのことだったので、私は「都内の会社に通えて、海も山もあり、少し車を走らせれば温泉もある、ということで茅ヶ崎はどうですか」などと自慢話なのかオススメなのか、わからないような発言をした。
NPSという調査手法
ところで、NPSという言葉をご存知だろうか。Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)の略で、簡単に言えば「企業やブランドのオススメ度」のことだ。このNPSの値が高い企業やブランドほど事業成長性が高いとされ、AppleやLEGOなどの優良企業ではこのスコアが高いという結果が出ている。
NPSの判定方法は単純で、「○○(企業やブランド)を友人にオススメしますか?」という質問に対し点数で答えるもので、9~10点(推奨者)の割合から、0~6点(批判者)の割合を引いた値がNPSスコアとなる。これほどシンプルな内容なので、地方自治体の調査にも有効なのでは?と思い調べてみたら、大阪府立大学の渡邊教授が論文で下記の通り分析が出来たと言及している。
“NPSの決定理由の分析から、職場環境がよく現在の仕事を人に積極的に薦める人ほど働きがいや住民を重視していることがわかる”※公務員組織におけるNPSと情報化効果に関する分析より引用
私が友人に住んでいる街をオススメしたように、その地域へのオススメ度が高いほど、その地域の発展性・成長性があるとするならば、地方自治体はこういった調査を住民に対して実施し、そのスコアの向上を目標に掲げ行政に務めてみてはどうだろうか。
NPSはシンプルに様々な調査が可能である
NPSはその数値自体に意味があるのではなく、相対的な評価をしてこそ価値が生み出せる。そのスコアを自治体の管轄地域内を区切って比較したり、他の自治体の管轄する地域と比較したりする。もしくは、「働く女性」と「専業主婦」など属性別で比べたりすることで、その地域の強みや課題が見えてくるはずだ。回答理由を記載する自由解答欄を設け、その分析することで、その地域の売り文句が生まれる可能性だってある。
また、必ずしも対象は地域住民である必要はない。NPSの調査対象を観光客に絞ることで、特定のイベントや観光名所、特産品などの評価もできる。よく「地域住民にはその価値が見えにくい」と言われるが、そういった課題がある場合には、ニーズ調査や満足度調査として観光客に対してNPSを実施してみてはどうか。小西美術工藝社という文化財等の修繕を行う会社の社長であるデービッド・アトキンソン氏によれば、日本の文化財は国内から過小評価され「宝の持ち腐れ状態」だと言うが、NPSが各地域の宝を発掘するきっかけになるかも知れない。
調査というのは設計が複雑になるほど実施自体が目的になってしまい、肝心の検証や改善まで届かずに終わってしまうことが往々にしてある。シンプルで、誰もが理解でき、継続性を持たせることのできる調査が地方自治体にとって有効だとするならば、ぜひNPSの検討をしてみていただきたい。少なくとも、人にオススメできない街に長く住みたい人はいないだろうから。
湘南在住。不動産情報ウェブサイト運営会社、お出かけ情報ウェブサイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイト運営会社にて企画職に従事。