ワーキンググループの議論から土壌を作っていった
加藤:業務改革を進めるにあたり組織的な体制や、当初のご自身の立場はどのようなものだったのでしょうか?
及川氏:今は総務部門ですが、情報システム部門に何年かいて、いろいろな窓口業務にシステムの立場から関わっていたんです。社内SE的な位置ですね。そんな時に、2011年に、窓口のワーキンググループが立ち上がりました。当時、私はワーキンググループの中で最も若い職員として関わることになりました。
加藤:北見市ではワーキンググループのような検討形式が活用されていたのでしょうか。
及川氏:実はそれまでもワーキンググループのようなものは何回もあったんです。ただ、立ち上がっては消えていた。そこで当時、市長が、今回は形にできるように提案してほしいと仰ったんですね。ちょうど現場でも、「総合窓口やりたいけど、無理だよね。」って思いながら仕事をしている職員がいっぱいいた。
枠組み+情熱
加藤:首長が号令をかけてワーキンググループが立ち上がっても、必ずしもうまく成果に結びつかないこともあると思います。及川さんから見てどういう点が、改善につながったと思いますか。
及川氏:組織の中で事業計画として位置づけされることは大きいと思います。また、プロジェクトは窓口関係課の課長級会議を定期的に開催して進捗報告を行いながら進める手法をとっています。一方で、計画や枠組みを作っただけでは何も進まないので、諦めずに、いかに火を絶やさないようにするかだと思います。
情熱を持っている人は役所の中に必ずいる
加藤:情熱のある人がたくさん現場にいたというのは大きいですよね。
及川氏:ワーキンググループに参加していた当時の係長級もそうでしたが、本当は「もっとこうしたいな」って考えている人が、身のまわりにはたくさんいるんだと思います。そこから一歩踏み出して、自分事としてやってみることが、現場からの業務改善だと思います。
プロジェクトの運営事務局は総務部で担い、現在私は総務という立場から関わっていますが、他の役所からすると不思議だと言われるんですよね。でも、総務には、仕事がうまく回るように仕組みを整えたりする役割もあると思います。
担当課の仕事を勉強し、進められるところから進める
加藤:現場の職員に対して、理解を得られる進め方はありますか?
及川氏:その部署の仕事の中身や法律・制度をある程度勉強したうえで、同じ土俵で話ができるように関係を築くことが大事なのだと思います。「中身知らないのに、外から何か言って来てる」と思われないように。業務知識を踏まえたうえで、どう整理するか考える。これまでのやり方を否定しているわけではなくて、変えたほうがスムーズに、もっと効率的にやれることを示すようにしていくとよいと思います。
加藤:どんな仕事にもこれ以上変える必要はないなんてことは有り得ないですよね、いつでも改善の余地はあるわけです。前提として変わっていくことが当たり前だと認識する必要があって、新しい事例や考え方、もしくは、技術が入ってきたら改善していくものじゃないですか。
及川氏:その中でそれぞれボールを持って、自分事として取り組んでいる人たちがいちばん大変な思いをしていると思いますし、業務改善は中身を一番わかっている現場の人たちだからこそできるものでもあると思います。事務局はちょっと外側から見て、全体の方針と合わせて、「だったらこうしてみたら?」って整理できる関係性が大事なのではないでしょうか。
加藤:情熱を持っている部署と走り出して、形にしていくということでしょうか。
及川氏:そうですね。実体験から言えるのは、一気には進まないということ。ちょっとずつ変えて、実際に生まれたかたちや成果を見せながら広げていく。その空気感を作っていけるといいんじゃないかと思います。あとは、できることが広がるので、情報システムの仕組みや重要性を理解している自治体職員が増えてほしいなと思います。
実現可能な範囲を見極める
加藤:改善を推進する中で、大変だったり辛かったことはありましたか?
及川氏:たくさんあります。今は、変えていくことの怖さを感じています。でも、やらないと前には進めないし、走りながら修正していくものとも思います。現状のマンパワーや仕組み、制度のなかで実現可能な範囲は、どこまでなのかを見極め、折り合いをつけて実装していく。私たちも、まだまだ道の途中です。
加藤:最後に、窓口の業務改善に興味をもつ方へメッセージを伝えていただけますか。
及川氏:この分野は全国の自治体で取り組まれていて各地に奮闘している職員がいます。窓口業務は情報の整理から。できるところから、ひとつひとつ改善し続けることと思います。北見市の手法も事例として参考にしていただければと思います。
加藤:本日はお話をありがとうございました。
リンク:北見市役所の窓口サービス改善の取り組み経過について
URL:http://www.city.kitami.lg.jp/docs/2013070500019/
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※本インタビューは全4話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。