コラム

データを活用した政策形成に向けて -Code for Japanによるデータアカデミーの取組み

石塚清香さんコラム

(文=横浜市 石塚清香)

多くの地方自治体で、中長期的な政策の方向性を決めるための様々な計画と、それらを元にした個別施策が行われていますが、民間企業のように「利益」という指標を持たない地方自治体において、それらの施策の有効性や効果測定を行うことは容易なことではありません。

そんな状況の中でデータ活用の重要性が問われるようになり、平成28年12月に施行された「官民データ活用推進基本法」では、「官民データ活用により得られた情報を根拠とする施策の企画及び立案により、効果的かつ効率的な行政の推進に資する(3条3項)」が基本理念のひとつとして掲げられています。

ただし、統計不正問題でも顕在化したように、地方自治体の現場はどちらかといえばICT活用に対して後ろ向きだったために、データを正しく利活用できる職員はごく少数に限られているのが現状です。

そのような状況を打開するため、「地域課題をテクノロジーで解決する」ことを目的にシビックテック活動を展開する「一般社団法人Code for Japan」は、H29年度に総務省「地域におけるビッグデータ利活用の推進に関する実証事業」の一部として、データ活用型公務員育成のための「データアカデミー」普及展開事業を開始しました。
平成29年度は研修カリキュラム作成と検証を行い、翌30年度からは地方自治体の現場で活用できるかどうかの検証とブラッシュアップを行っています。
なぜ民間の団体が地方自治体向けのデータ活用講座を実施しようと思ったのか、講座のコーディネートを行っている市川さんにお話を伺いました。

データアカデミー誕生の経緯

石塚:データアカデミーはどのように生み出されたのですか?
市川:Code for Japan代表で、神戸市のCINO(チーフイノベーションオフィサー)でもある関治之氏が、神戸市の管理職向けに行ったデータアカデミーが元々の原型です。
それを見た総務省から各自治体向けに展開したいということで依頼を受けて行っています。
講座は、総務省からの依頼による「データアカデミー」と、Code for Japan独自の取組みとしての「データアカデミーエッセンス」の2種類を並行して行っていて、その両方で今年は50自治体ほど回らせてもらいました。

石塚:従来のデータ活用研修と、データアカデミーの違いはどのようなところですか?
市川:RESASやGISなどのツールを使うデータ活用研修はよくありますが、それらは結局のところ「ツール活用」のための研修になってしまい、職場に戻っても利活用されないことが多いと感じています。
データアカデミーでは、政策立案や効果測定に使えるデータ活用を目指しているために「実際に現場にある課題」を立てるところからはじめて、その上でどんなデータがあるかを探索していくのが特徴です。
また、データ活用をしたくても別の部署からはデータが出てこないという声を多く聞いたため、庁内で横串を指すという体験ができるように、研修には必ず複数部署による「チーム」で参加してもらうことを条件にしています。

石塚:受講した地方自治体の反応はどうでしたか。
市川:そもそも多くの職員は「自分の自治体がどんなデータを持っているのか知らない」ということがよくわかりました。
また、条例をはじめ、官民データ活用推進における課題についての認識も浮かび上がり、そもそもデータを電子計算機処理しちゃだめという条例があるとか、個人情報保護条例2000個問題とか、そういうことを「自分たち事」として捉えてもらえるという副次効果がありました。
自発的に分析の2周目を回してくれる自治体も出てくるなど、良いサイクルが生まれてきています。

データ分析による政策反映石塚:大変だったことはなんですか?
市川:課題設定をしてもらうのは難しかったですね。よく「人口を増やしたい」とか「健診率を上げたい」いうのが出てくるのですが、それは課題ではないだろうと。
「人口を増やすことによってどういう価値を生みたいのか」というブレークダウンを行う必要が度々ありました。あとは行く先の総合計画を頭に入れることや、そもそもデータがないところや、データがあってもクレンジングが必要な場合が多いので、そういうサポートも大変でしたね。

宝塚市のデータ利活用の例

石塚:データアカデミーは今後どのような展開をしていきたいですか。
市川:分析結果を元にした総合計画への反映まで持っていけることが理想です。数字を作ったら市民と一緒に実行できる状態にしないと計画倒れになるので、各政策の指標を最終的に測定するところまでのサイクルを回していくようにできたらいいですね。

石塚:エビデンスに基づく政策形成(EBPM)の重要性は認識されつつありますが、そのためのスキルを身に着けていくことについては乗り越えるべき壁がまだまだありますね。私もCode for Japanの取組みを応援しつつ、自分の仕事の上でも意識して啓発していくように頑張ります。

※1 RESAS
経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供する地域経済分析システム(https://resas.go.jp/
※2 GIS
地理情報システム(Geographic Information System)

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