加藤:「教育委員会がちゃんと機能していない状態がある」というお話をされています。それは何によって引き起こされていて、どうしたら機能するのでしょうか?
倉田市長:教育委員会、教育委員会事務局、学校の全ての段階で課題があります。
まず、教育委員会の委員さん達自身がどういう人達なんだろうか、名誉職化していないかというところ。それと、教育長については、学校の先生出身なのか、行政出身なのかによって、それぞれに得手、不得手が異なります。
教育委員会は追認機関ではない
倉田市長:また、教育委員会事務局が実質的な日々の教育運営組織なわけですが、教育委員会が単なる事務局の承認機関のようになっているというケースが当たり前の世界です。それを改めて、委員会の意見と想いを体現し、日頃の実務に反映させていく組織文化に変われているかどうか。箕面市でもまだ道半ばだと思います。
それと、この教育委員会事務局には、市役所の行政職員と、指導主事(教育現場の状況を把握し指導する役割の職)と呼ばれる学校の先生出身の職員が居るわけですが、ここで会話が成立していないことが多いんです。育った文化が違うので、同じ言葉を喋っているつもりでも全然通じていないこともあります。また、指導主事の先生達はいつかまた学校に戻るので、先のことを考えたら「今ゴリゴリ学校を変革して良いのか」と躊躇してしまう心理もありますよね。
あとは、事務局の人材の問題。情けない話なんですけど、僕が市長になる前の大昔の箕面市役所であった実話。市長とか幹部職員が集まって市役所全体の人事を決めていくんですが、それを、条例で設置されている組織の順番(行政では建制順と呼びますが)の通りに決めていってたんです。
そうすると行政委員会である教育委員会は最後のほうだから、やっとそこまで辿り着いたときには投入できる良い人材が残っていない、なんてこともありました。
教育委員会、何する者ぞ!
倉田市長:制度上、学校は独立の組織で、教育委員会と学校の関係はあくまでも指導、助言のみで、命令ってできないんです。そうすると、歴史的に学校がすごく独立心を持ってしまって、「教育委員会、何する者ぞ!」みたいな文化もあったりするんですね。
かつ、学校現場の中で、管理職と呼ばれるのは校長と教頭の二人だけなんですよ。あと全部、いわゆる同じ横並びの先生になるんですね。その組織構造で、「本当にマネージメントができているの?」と思いました。
特に校長先生とかも学校の先生出身ですから、もともとマネージメントなんてやったことない訳ですね。しかも、仕事の性質上、仕方ないとは思うのですが、先生方は普通の企業組織に比べて、チームで動くことが苦手という状況もあります。
つまり、全階層が課題を抱えているわけです。だから、これらを全部一個一個、地道に地味に整理していって、直しながらやっていかないと全体としては動いていかない。それが僕が実感してきた実態ですね。
エース職員を教育委員会事務局に送り込む
加藤:自治体からの働きかけで教育改革をしようとする際、教育委員や事務局の人達を動かして変えるというのが現実的でしょうか。
倉田市長:それはそうだと思います。実際、ある年に、箕面市ではエース級の職員が多かった管理部門の職員を丸ごとごそっと教育委員会事務局に異動させたんです。事務局へエースをたくさん投入すると、もちろん仕事も進みますし、周りの見る目も変わるじゃないですか。あ、事務局の変革も本気なんだなと。
彼らがもともといた部署の運営は大変でしたけど、その分効果は目に見えて上がりますよね。
加藤:何人くらい送り込んだんですか?
倉田市長:当時総務部に5、6個の課があって、そこの部長級と副部長級と課長級とその下のメンバーを含めてまるごと送り込んだんですよ。たぶん20人近くですかね。
加藤:ものすごい人数ですね。教育委員会と事務局のメンバーが変わり、今度は学校に働きかけて変えていくわけですね。
倉田市長:そうなんです。その過程で事務局の指導主事も変わっていきます。
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 多くの教育委員会は意思を持っていない
第2話 教育委員は名誉職ではない
第3話 エース職員を教育委員会事務局に送り込む
第4話 序列を嫌う教育現場で全学年が毎年調査
第5話 全学年毎年調査の予算は 子供一人あたり年間で3,000円
第6話 子供は親を選べない 教育で子供に力を
【箕面市長 倉田哲郎氏インタビュー】
第1話 頑張った人が報われる 自治体の給与制度改革
第2話 7割の職員は「人事・給与制度改革」に賛成
第3話 飲み会での『人への評価』を制度に落とし込む
第4話 平社員の給与が部長を上回るケースが存在する
第5話 「公立病院は赤字で仕方がない」という神話
第6話 脳内に地域住民という上司が存在する