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今村寛

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【福岡市 今村寛氏:第1話】全国から依頼殺到!土日返上で自治体のフトコロ事情の現実を広める先駆者 

【今村寛氏の経歴】
京都大学を卒業後、1991年より福岡市役所にて勤務。2016年3月まで、財政調整課(*1)で課長を4年間務め、2016年4月より創業・立地推進部長となる。
財政調整課長時代に培った経験から、地方自治体の財政状況をわかりやすく説明する「財政出前講座」と、財政シミュレーションゲーム「SIM2030(*2)」の開催依頼を受け、全国各地で行っている。
現在は経済観光文化局の創業・立地推進部長として、福岡市における企業誘致や民間の新規事業創出に貢献している。また、福岡市にてオフサイトミーティング「明日晴れるかな」を運営し、福岡市と他自治体、民間等のつながりを積極的に生み出している。

*1 財政調整課とは
地方自治体の金庫番。多くの自治体では「財政課」。各事業部と調整し、予算の配分・編成・執行管理、財政計画・調査などを行い、地方自治体の花形の職種とされる。地方自治体の予算編成の時期には相当な激務をこなす。
*2 SIM2030とは
地方自治体の持っているお金をどのように配分していくかということを体験するゲーム。このゲームの中で、社会保障費の高騰や税収減に向き合う地方自治体が、その限られたお金を運営する上で、どの事業を止めてコストを捻出するのか、それとも借金をするべきなのかなどを判断していく。
 

現在、行っている業務について

加藤(インタビューアー):今日はありがとうございます。まず初めの質問になります。今村さんは現在、福岡市役所の業務として何をされていらっしゃるのでしょうか。

福岡市役所

福岡市役所 提供:福岡市役所

今村寛氏:今年の4月から経済観光文化局というところの、創業・立地推進部長となりました。ここでは3つの大きな仕事を抱えておりまして、1つが高島市長も一番力を入れているスタートアップ企業の創業支援。具体的には、ベンチャー企業の方とお話をして、新たな支援のムーブメントをどうやって創るかとか、インキュベート施設を運営するという仕事があります。
 2つ目は企業誘致です。福岡市に新しく税金を納めてくれる企業さんを、特に首都圏から呼んでくるということを目的として、実績としては年間で50~60社の数があり、その誘致部隊を統括しています。
 それと、最後の1つは産学連携です。大学や研究機関が持っている技術シーズをビジネスに活かせないかということで、大学発ベンチャーの支援、あるいは企業さんと大学が共同研究をしたり、そこからビジネスを生み出していくような協議会の運営などをしています。
加藤:その中で特に注力しているのはどちらになりますか。
今村寛氏:高島市長が力を入れているというのもあって、今の3つでいうと一番スタートアップ企業の創出に力が入っていますね。※参考:2016年11月10日に福岡市が主催するイベント「フクオカ・スタートアップ・セレクション
加藤:なるほど。うまくいっている部分とそうでない部分はどんなことがありますか。
今村寛氏:そうですね。例えばスタートアップの部分で言いますと、市長の発信力もあって東京から見ても「福岡元気だよね。なんか新しいことやっているよね」というような言い方をしていただけるんですが、ベンチャーキャピタルが投資をするということに関しては、東京に比べると目を向けてもらってないという現実があります。
 また、企業誘致で言うと、古いビルの立て替えが始まったところでして、まだ新しい床が提供できていないんですね。そういった中で福岡に来たい企業が増えて、床不足なんです。
 博多駅に大きな業務ビルがこないだ立ちましたけども、それで打ち止めになっていまして、今、大きな案件がもし舞い込んできたとしても2年ほど待ってもらわなければいけないという、人気があるからゆえのジレンマというのはあります。
博多駅

博多駅 提供:福岡市役所

加藤:素晴らしいですね。私が海外に住んでいた時にも福岡の話はすごい沢山入ってきていたので、発信力は政令指定都市の中でもかなり目立っているように思います。
今村寛氏:福岡市はこれから人口が増えるといっても、高齢者が増えていく時代になるわけですから、良い時にちゃんと稼ぐ道筋を作っておかないといけないと思っています。市長自身も「きちんと稼げる構造を作るために、今のうちに将来使うもののキャパシティを広げておきなさい」と言っています。
 私は今年の3月まで財政調整課という福岡市役所内の各事業に対してお金の配分を決めるところで働いていたので、今まではどちらかと言うと使い道を考える仕事をしていましたけど、4月からは稼ぐ会社を見つけてくる仕事を担当させられていて、とても面白いなと思います。
加藤:今のお仕事をしていて手ごたえのある部分はどこになりますか。
今村寛氏:スタートアップ系の方々とか、産学連携の方々とお話をしても、福岡のコミュニティの小ささを評価する人がすごく多いですね。異業種の人、異分野の人と出会う確率が高い。そうすると、東京では起こり得ないような出会いから、イノベーションが起こりやすいんじゃないかと思っています。
 だから、これからは「福岡にビジネスの出会いの場があるなら行ってみようかな」という機運を高めて、注目されるようにどんどん仕掛けていけば、きっと何か新しいものが生まれるんじゃないかという期待感はありますね。
加藤:今村さんが、役所の外で活動されている場合には、地方自治体の財政的なお話をよくされていると思います。市役所にお勤めになられてから、今村さんのお仕事の役割はものすごく変わられていると思うんですけど、過去の部署の中でもやはり財政は特別なものなのでしょうか。
今村寛氏:結果的に振り返ってみたら、財政を係長として5年、その後、一度部署を離れ課長として4年やらせてもらったのは私の公務員経験の中で、かなりいろんな成長をさせてもらったと思っています。
 ただ、元々財政をやりたかったわけではないですし、財政に行くまでは財政のことを知りもしませんでしたから、そういう意味ではいろんなことをやってきたことが、全部自分の蓄積になっていると思っています。

街に残るものを作れることがモチベーションになっていた

加藤:なるほど。財政以外で勉強になったと感じる経験はありますか?
今村寛氏:2つのことが頭に浮かんでいて、まず一つ目は「まちづくり」。市役所の最初の仕事として環境局の産業廃棄物指導課っていうところにいました。
 20数年前は廃棄物の許可を受けた業者による不法投棄などが横行する問題があって、公共が関与して処分場を作るとか、あるいは民間の処分場を作る際に、公共が地元合意を取り付けるような手続き要綱を定める時代だったんですね。
 そういった中で、新しい事業体の財団法人を作るというような仕事とか、どこに処理施設を建てられる、もしくは建てられないかという土地の用途規制を当時新人の私が纏めろと言われ、都市計画法や建築基準法を元に纏めていたりしていたんですね。
 そして3年間ここの仕事をした後に、都市整備局の都市計画課に異動となりました。ここは建築屋さんと土木屋さんの花形の職場で、そのエースが来る職場なんですね。私は4年目に事務屋として異動してきて4年間働いたんです。
 そこで、都市計画の手続き業務をやりました。都市計画法、建築基準法、あるいは都市計画そのものがどう定まっていて、現実の街づくりにどんな風に活かされているのかを勉強しました。
 具体的なものとしては、今はそれがもう走っているんですが、地下鉄の3号線という都心部から西南部に伸びていくものがあります。
 そのほか、大規模な区画整理事業や新たな幹線道路などについて、20年くらい前にその都市計画決定に携わり、福岡の街づくりをかたちづくる最初の部分に携われたことはすごく大きな思い出ですね。
 この産業廃棄物指導課と都市計画課の7年間で、街づくりの骨格は自分の中でかなり勉強できたように思います。これが1つ目の大きな経験です。
 都市計画課の後に生活保護の仕事を2年やりましたが、その後にコンベンション課というところで2年間仕事をしました。このコンベンション課での経験が2つ目の大きな経験です。
 福岡市はいろんなコンベンション施設(※展示会や会議を行うことを目的とする複合施設)があるんですが、福岡国際会議場ってのを平成15年にオープンさせているんですね。
 この福岡国際会議場の整備ってのが、すごく短い期間の中で必ず完成させなければならないという仕事で、その一番きつい2年間の仕事をやりまして、私が所属している時に完成まではいかなかったんですけど、総事業費で150億円ぐらいのプロジェクトを係長とたった二人で回していました。今振り返っても、よくやれたなと思っています(笑)。

福岡国際会議場

福岡国際会議場 提供:福岡市役所

加藤:150億円の予算を関係するセクションにそれぞれ割り振って、進捗管理まで含めて2人でやるというのは気の遠くなる業務ですね。何が一番大変だったのでしょうか?
今村寛氏:量が多い。締切りが決まっている。やり損なうと手戻りが大変なんですよ。だから、やり損なわないように工程を管理するということは、そこで随分学びました。
加藤:大変な思いをされている時に、何を支えにしてそれを続けられることができたんでしょうか。
今村寛氏:そうですね。事務屋にしては珍しく、ものを作っているのが非常に楽しくてですね、「今無いものがあそこに建つんだ!」っていうその一心ですよね。だから今でも国際会議場の前に立つと少しうるっとくるんですよ(笑)。
加藤:そうですよね。ご自身が大変だっただけに感慨深いものがありますよね。
今村寛氏:はい。元々、公務員を志した理由そのものが、福祉とか教育とかソフト施策を提供したいことではなかったんです。昔、今の福岡タワーがあるシーサイドももち地区っていう埋め立て地で、博覧会が終わった後に企業誘致などのためにハード、街を創っていくということを見て、それに憧れて市役所に入ってきたんですよ。
 私は元々神戸の生まれなんですが、神戸が山を切って住宅にして、海は埋め立てて住宅と企業誘致に使ったという街づくりがすごく参考になっていて、ああいう街づくりがやりたいと思って役所に入っているので、都市計画課の仕事も、コンベンション課で会議場の箱を作れたというのもすごく面白かったですよ。
そういう街に残る、かたちになるものを作れるのがモチベーションになっていましたね。

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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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