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【福岡市 今村寛氏:第2話】仕事で最も大切にしていることは『対話』

偉くなったら家が狭くなるとか、通勤が長くなるような人生は嫌だと思った

加藤:福岡にいらっしゃったのはいつ頃ですか?
今村寛氏:小学校の六年生の夏ですね。親父がダイエーで働いていたので転勤族で福岡に来て、中学・高校はこっちで過ごしました。大学は関西に帰りたかったので、京都大学と大阪大学を受けて京都大学に受かったので、そっちに行きました。
行った時は就職も向こうでするつもりだったんですけどね、「通勤電車に1時間も揺られるのがいやだなー」とか(笑)、「東京のおじさんの家が狭いなー」とか考えて(笑)。そうすると福岡の方がゆとりがあるし職住近接で良いなと。その頃は既に街づくりに興味があったので、神戸市と福岡市だったら福岡市の方が面白いかもと思って福岡市を受けましたね。
加藤:そうすると、住む側の人間の視点として、その時点で既に福岡の街の魅力を感じていたということなんですね。
今村寛氏:はい。当時、東京一極集中という言葉があって、それを是正するというような発表を大学のゼミでしていて、大都市ではない地方都市に住むという魅力を当時から考えていました。
加藤:福岡市役所への就職活動は、わざわざ京都から福岡に何度も行っていたんでしょうか?
今村寛氏:そうですね。
加藤:そうすると、やはり福岡に対する熱意は大きかったんですね。
今村寛氏:はい。福岡市役所以外にも、福岡銀行とかJR九州みたいな福岡に本社がある企業を中心に就職活動をしましたから、あんまり東京本社とか大阪本社の企業で働いて、偉くなったら家が狭くなるとか、通勤が長くなるような人生は嫌だなーと思いました(笑)。
加藤:(笑)。

職場外の活動について

加藤:少しトピックが変わりますが、職場を離れた活動についても教えていただけますか。
今村寛氏:今、流れとしては大きく3つやっていて、1つはオフサイトミーティング、これは「仕事の時間外で集まってなんとなくウダウダ話す」という、いわゆる、緩い対話の場を職員同士で提供するっていうのを4年ぐらいやっています。
2つ目が財政課長だったということもあって、「財政出前講座」というのを職員向けに初めて、財政のことを職員に知ってもらう、そして市民にも理解してもらうって活動を4年ぐらいやっています。

財政出前講座

今村寛氏:そして、最後がSIM2030ですね。これは元々、熊本で開発されたゲームなんですが、自治体の財政の状況を理解してもらうために「実際に税収が減っていく中で、どういう自治体運営をするか」という体験型のゲームで、私の財政出前講座とすごく相性が良く、自治体の財政を理解してもらうという目的がぴったり重なるので、私が使わせてもらっています。
ただ、使わせてもらっているのを良いことに、その組み合わせがすごく良いと評判であっちこっちで広めているうちに、私がSIMを作ったみたいな風に誤解されていることがありますが、そんなことはありません(笑)。最初の2つは4年前から始まり、SIMは2年前から始めていますね。
加藤:財政出前講座とSIMでは、財政の情報をオープンにして理解を求めるというのが画期的で、今では多くの地方自治体やイベントにおいて開催を依頼されています。それぞれの活動を今後どのようにしていきたいのでしょうか。
今村寛氏:オフサイトミーティングに関しては、元々始めようと思って始めたわけではなく、4年前に福岡市の職員の飲酒の不祥事が相次いだということで、市長が「1ヶ月間自宅以外で酒を飲むな」という、いわゆる禁酒令を発令しまして、「禁酒令が出たけどどう思う?」みたいなことをとにかく誰かと話したくて始めたのがきっかけなんですね。その流れの中で思っていること、モヤモヤしていることをどこかで誰かに話せる場があれば良いなと。
財政出前講座の方は、正直、財政から部署異動をして今後どうしようか悩んでいるところですね。異動する前は明確にやるモチベーションがあったんですよね。それは何かというと、「自分が財政課長として一人で財政を切り盛りすることはできないので、みんな実情を知って私を助けて下さい」という強力なモチベーションでした。ただ、4月に異動してそれもなくなったので、そんなに一生懸命しなくていいですし、あんまり出しゃばっていくと今の財政課長さんにも悪いですからね(笑)。だから、市内での出前講座は控えているんですよ。
ただ、SIMとの関わりの中で聞きたいという人が沢山いて、私が話しているほとんど哲学に近いような「財政ってこうなんだ」って話は割とどこでもウケるので、人が話を聞きたいって言ってくれるうちはやろうかなと。ただ、いずれこの話自体が古くなるはずなので、もう少し行政経営的な話とか、オフサイトミーティングと併せて「対話とはなんぞや」とか、そんな話の内容に変化していくのかなと思っています。

仕事で最も大切にしていることは『対話』

加藤:職員としてもそれ以外でも、今村さんは人から請われるようなお仕事をされていると思いますが、仕事をされている中で大切にしていることは何でしょうか?
今村寛氏:それは今の3つの活動に共通して言えることなんですが、『対話』です。私は、コンベンション課を卒業して財政課に行く、財政課で係長として5年仕事をするんですが、それまでは対話という言葉を自分で使ったことがありませんでした。また、当時その価値があるということを人に力説することもないですし、自分自身も「対話が大事だ」と言っていませんでした。
思い返すと、この財政にいる時が仕事として一番辛かったんですよ。長い時間拘束されるし、予算を請求する事業部門は全然自分の言うことを聞いてくれないし、お互いに騙そう騙そうとする。私のいた財政側は「お金はないない」って言って、お金を使いたい事業部門側は「くれくれ」って言う。今度は、事業部門側は「どうせ予算要求をしても削減されるだろう」ということで、最初から予算を割り増しして要求してくるという、そんな化かし合いの世界を4年も5年もやっていると、やっぱりいろいろ傷つくことがあるんですよね。
それと、役所の中で優秀だと思った人たちが過去に作った計画が破たんをして、破たんの処理をさせられたことがあるんですけど、私の同い年の部下だった民間銀行出身の人は、「こんな計画は民間の銀行なら絶対通りませんよ」って言っていて、「なんで民間の人だとすぐ気がつくのに、行政の中では気がつかなかったんだろう」と悩んだりして、財政課での仕事をする上で、役所の中に閉じこもっていちゃダメだと思いました。人の話を聞く、あるいは人と一緒にものを考えられないといけないのに、それが全然できていないと思ったんですね。
そういう時に、財政課を卒業したあと、平成20年に東京財団というところがやっている半年間の研修プログラムに参加したんです。早稲田大学大学院公共経営研究科で3ヶ月間、元三重県知事の北川正恭先生をはじめ、素晴らしい教授陣の下で勉強して、そこからアメリカのポートランドに行くっていう夢のような半年間だったんですが(笑)、ここで叩き込まれたのが対話なんですよ。事実を現場で見て、対話の中で物事を捉えていく。

早稲田大学大熊講堂

この「現場に出て事実を見るということ」と、対話によってものを考えていくって2つのことは、当時、財政課にいた時は両方とも全然していないことだったんです(笑)。相手を論破することばかり考えていたんで(笑)。そこから、対話ができていない自分と役所の文化を考える中で、これをうまく自分の中で落とし込んで、「仕事や人生に役立てられたらなあ」って、研修から帰ってきてそう思ったんですよね。
加藤:対話の重要性をお気づきになるじゃないですか、じゃあそこに気づけたからといって、急にうまく対話ができるようになるわけではないのかなと思います。その中で、具体的な行動として今までと変えたところはあるのでしょうか?
今村寛氏:財政課長が一人で切った貼ったをしてもだめだと感じていました。全員に財政の状況についてわかってもらって、みんなそれぞれの場所で頑張ってもらうためには、財政に関する敷居を下げるために頭を下げて、情報発信をするしかないってなことで、これを必要性に駆られて能動的にやっていったんですけど、結果的にそれが今の私の大事にしていることであり、みんなからも「今村って対話を大事にしているよね」って言われていることに繋がっていると思います。
加藤:情報公開と対話をすることによって状況を打開してきたわけですね。
今村寛氏:そうですね。私が課長になる前よりかは大分進んでいるとは思います。まだまだだと思いますけど(笑)。そもそも財政とか人事とか権限を握っているところは「お前に渡すと何するかわからない」という不信から入るので権限を渡しづらいんです(笑)。ただ、今、私が発信しているのは権限を渡して、対話で物事を決めていった方が楽ですよって。楽だし、お互いに責任もって結果にコミットできるので、全国の財政課長さんには絶対一人で抱え込まないで、共有と対話を進めて欲しいです。
加藤:抱え込まないというところでなんですが、以前の今村さんのインタビュー記事で、オフサイトミーティングは愚痴みたいなものを話される場になっていたと仰っていたのですが、私がそれを見て少し驚いたのが、自治体職員が愚痴を言っているというのがインタビューで記事になっていたことです。
公務員って清廉潔白であるべきみたいなイメージがあまりにも強くて、私はそれに少し違和感があるんですが、愚痴を言っているということによって、変に市民に批判されたりするんじゃないかと思ったりもしました。ただ、当たり前のことですけど、自治体職員の方も人間だと思うんです。だから、そういった愚痴とかもあるし、ある種ネガティブな部分を業務外の時間に吐き出す場所があることで、実際の業務ではポジティブに向き合えるということもあると思うんですよね。
今村寛氏:そうですね。今でもオフサイトミーティングの通常バージョンで、話題を決めない時っていうのは愚痴の時が一番盛り上がります(笑)。やっぱりみんな、職場では言えないことっていっぱいあるんですよ。家にも持って帰れないし、地域でも喋れない。公務員同士であるという安心感の中で話せるネタっていうのがあって、そこを話すことで少しはけ口になるのは、すごくこの4年間やっていて実感としてあります。やっぱり必要なんだと思います。

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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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