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【横浜市 瀬戸勇 #2】課外活動で制作した動画を、市のYouTubeで発信

火事は消すより出さぬが手柄

石塚:瀬戸さんは一般の方の防災意識を高める広報活動もされていますよね。

瀬戸氏:私は「火事は消すより出さぬが手柄」という言葉が好きなんです。我々消防の仕事ってない方が良いじゃないですか。ですから、火事を予防することが大切だと思うんですね。

石塚:確かにそうですね。

瀬戸氏:なぜそこが重視されにくいのかと言えば、要するに成果が見えづらいせいなんです。

石塚:防災意識の度合いは測りづらいですね。

瀬戸氏:そうなんです。だから防災意識を高める広報の仕事となると、これまでやってきたことを脈々と引き継ぐことが多くなりがちです。
 もしかしたら時代遅れになっている広報手法を、検証せずに続けてきた現状があるかも知れないですよね。

石塚:それで瀬戸さんは新しい取り組みを始めたのですね。

瀬戸氏:とにかくピンポイントでも良いから、身近な問題に限定した伝え方をしていったらどうかなと思ったんです。たとえそれが小さなことでも、その積み重ねによって防災意識って高まっていくんじゃないかなって。

知識のギャップを埋めたい

石塚:防災意識を高める広報は、なにから始めましたか。

瀬戸氏:最初はブログですね。私は司令課という119番通報を聞く仕事に就いていたことがあるんですけど、そこで会話のやりとりを聞いていたり、自分で受け答えをしたりしていたんですね。
 そのときに感じたのが、こちらが知っていることと、一般の皆さんが知っていることにはかなりのギャップがあるということなんです。そのギャップを埋める内容をブログに書いていました。

石塚:ギャップとは、例えばどういうことですか。

瀬戸氏:救急の例で言えば、遠方の田舎に住んでいる親から「具合が悪くて動けない」っていう連絡が入ったとしますよね。それを聞いた息子が119番通報をすると、どうなると思いますか。

石塚:あ、息子が住んでいる地域の消防に連絡が行っちゃいますね。

瀬戸氏:そうなんです。それを知らずに119番通報をして、とにかく症状を一生懸命伝える方がいらっしゃるんですね。
 症状も大事な情報ですが、場所の情報がないことにはすれ違いが起きてしまったりします。

石塚:なるほど…たしかに場所の情報が大事ですね。ちなみに、そういう遠方への救急要請をしたい場合ってどうしたら良いんでしょうか。

瀬戸氏:そこまで離れていなければ、受信した消防機関が要請場所を管轄する消防機関に転送してくれる場合が多いと思います。
 遠方の場合、転送する回線を持っていないので、通報者がご自身でまず104などで親が住んでいる地域の消防本部の番号を聞いて、そこに加入電話でかけるのが一番早い方法です。

石塚:結構大変ですね。

瀬戸氏:そうなんです。最初はそういう知識のギャップを埋めるようなことを、ブログで書いていました。

予防広報のネタは外部から

石塚:知識のギャップを感じやすい部署にいたからこそ、自ら広報活動を始められたんですね。

瀬戸氏:そうですね。消防に携わっていない人との会話のなかで、発信するネタを見つけていくイメージです。いまも職場にいるだけだと消防の人としか会わなくなってしまうので、できるだけ外に出るようにはしています。

石塚:外の人と会わないとそのギャップに気づけないですもんね。

瀬戸氏:そうなんです。できるだけいろんな人と話して、いろんな情報を得ないとニーズは掴めないですね。
 私の場合は手話や大道芸といった個人的な課外活動があるので、そこで会ういろんな人たちとの会話はすごく役立っています。

石塚:その会話からネタが生まれるんですね。

瀬戸氏:そうですね。こういうときに困ったとか、不安だったとか、そういう話を聞いて、自分でどうすれば対応できるかを調べて、発信するようにしています。

課外活動で作った動画を市のYouTubeアカウントで発信

石塚:最初はブログから始めたという話ですが、いまはYouTube動画も制作されていますよね。あれの言い出しっぺは…

瀬戸氏:私ですね(笑)。 毎年、「春の火災予防週間」っていうのがあるんですけど、そこで使えるようなコンテンツを動画で作ったらどうかなと思ったのがきっかけですね。

石塚:それで実際につくっちゃうのはさすがです(笑)。

瀬戸氏:消防ネタはたくさんあるし、いまは動画の時代という話もよく聞くじゃないですか。
 それで考えたら「動画は視覚に訴えかけられるので手話も活きるな」とか、「音が出せない区役所のデジタルサイネージでも字幕があればいいな」とか、そういうことが分かってきました。

石塚:確かに動画を拝見すると、手話や字幕が使われていますね。ちなみに、これって仕事としてやられたんですよね?

瀬戸氏:いえ、完全に課外活動ですね(笑)。 知り合いの係長に頼み込んで、横浜市民防災センターを営業時間外に使わせてもらい、撮影しました。
 もちろんイレギュラーな使い方ですからダメって言われたら引き下がるんですけど、「おういいよ全然」みたいな感じでした(笑)。

石塚:ノリが良いですね(笑)。

瀬戸氏:一番ネックになったのは、どこから発信するかでした。市のYouTubeアカウントから出すにはどこかの「課」から出さなければいけなかったんですが、完全無所属で作った動画なので、どこの課のものにするか難しかったんです。
 火災予防の課から出してもらえないか相談したんですけど、こちらが思い付きでポンとつくっちゃったのでNGが出てしまいました。

市が発信するロジックを考える

石塚:せっかく作ったのに、困りましたね。

瀬戸氏:そこで思いついたのが、訓練センターの管理研究課があるなと。
 実はその前の年に、「手話を使って消防隊員間のコミュニケーションを取るべきだ」という主旨の論文を、私がたまたま出していたんですね。

石塚:消防隊員の間で手話を使うと良いことがあるのでしょうか。

瀬戸氏:要は無線を使えないとか、現場で声が聞こえない状況があるので、ハンドシグナルで意思疎通ができると良いだろうという内容です。それをローカルルールでつくるのではなく、手話という言語をベースにしたら良いと思ったんですよね。

石塚:確かに良さそうですね。その論文と、動画の出先とがどんな関係があるのでしょうか。

瀬戸氏:その論文の結びを「これからもやります」という予告っぽい感じにしていたんですね。ですから、手話を使った防災動画を、論文のその後の活動という扱いにしてしまえと思って(笑)。

石塚:なるほど!(笑)。

瀬戸氏:申請したら関連性があると認めてもらえて、管理研究課から市のYouTubeへの配信申請を出してもらえたんです。
 いま思えば、ちゃんと事前に根回しをしていれば然るべき部署から出せていたかも知れないので、役所の中の動き方がようやく少しだけわかってきました(笑)。

(取材=石塚清香 編集=小野寺将人)

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