インタビュー

オープンソース+アジャイル開発が当たり前の行政へ 関治之#2

TOP2 オードリーと(SENQワークショップ)

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石塚前編では、「新型コロナウイルス感染症対策サイト」の生まれた経緯をお聞きしました。本件については、宮坂副知事も後押しをしてくださったのですか。

:そうですね。自治体がオープンソースを使って外部の人から提案を受けつつ、アジャイルに業務を行うということをずっとやりたいと思っていたので、その提案を採用いただいて良かったです。

石塚:庁内からデータを集約しているということですが、庁内からデータを出してもらうのにハードルはありましたか。

:庁内のデータ集めに関しては部局の方で対応してくれていて、自分は受け取ったデータを外にわかりやすく見せられるようにするのが役割なので、実際どんな苦労があるのかはわかっていないです。欲を言えば用語の使い方やデータの定義をわかりやすくした方がよいなど課題はありますが、今回は成果をしっかり見せることができたので、今はとにかくスピード優先で対応していこうと思っています。

石塚:「都民にわかりやすく情報を届けて、不安感を軽減する」という課題に対して、関さんが色々な人たちの力を結集した今回の取組は、オープンガバメントの理想とする動きに通じると思います。今回の経験を活かした次のアクションは考えていますか。

:Code for Japanとしての想いでいうと、オープンソースの動きはもっと広がっていくべきだと思っています。3月10日に東京都版をベースにした北海道版が、Code for Sapporoなどの有志を中心にリリースされましたが。どこかの自治体が作ったものが他の自治体にどんどん使われて波及していくという動きの後押しをしたいですね。

 新型コロナウイルスという非常事態だからだとか、東京都だからできたんでしょ、ということではなく、これが普通になってほしいですね。せっかく自分が苦労して作ったものをタダで出してしまっていいのと思われるかもしれないですが、ソースコードが他の自治体で使われていくことで、色々な人たちの目に触れてどんどん改善されていく。それがまた元々のサービスの改善につながっていくというスパイラルを体験できることはエンジニアにとっては大きな価値です。「ともに考え、ともにつくる」というシビックテックやオープンソース文化の素晴らしさをわかってもらうきっかけになるといいですね。

石塚:経済産業省でもCode for Japanと連携して新型コロナウイルスの支援として無償で提供される支援情報のまとめサイトを作りました。教育向けに提供する、プログラミング講座などの情報が標準化されたデータフォーマットで公開されたということでしたが、こちらにも関さんの仲間が多く関わっていますね。

:9年前の東日本大震災の時に立ち上げた「sinsai.info」を思い出していました。いつでも危機感は進化の原動力になるのかもしれません。

 sinsai.infoとは東日本大震災の4時間後に、関さんを中心として有志によって開設されたウェブサイト。被害状況や避難所、安否情報や雇用情報などを配信し、当時、月間数十万人のユーザーが閲覧した。

sinsai.infoを紹介する関さん

sinsai.infoを紹介する関さん

石塚:「sinsai.info」、懐かしいですね。私はあの動きを通じてシビックテックやオープンガバメントと出会い、以来ずっとそうした動きの助けになってほしいと行政が保有するデータを社会の共有財として公開する「オープンデータ」の推進に取り組んでいます。2011年当時と今で変わったところはありますか?

:なによりも行政との信頼関係があることですね。「Sinsai.info」の時は行政の外側にいて、どこにデータをもらえば良いのかもわからなかったのですが、今回はある程度任せてもらうことができたので、スピード感を持ってやることができました。また、サービス改善に参加したいと考える人達のためにGitHubページに「貢献の仕方」などを書いておいたことで、自分達と参加者の動きやすさにつながりました。

石塚:行動規範や貢献方法を先に決めておくのは確かに大事ですね。GitHubのCOVID19ページには「来た人がなにをしたら良いか」がきちんと書いてあります。「我々はなぜここにいるのか」という項目に「都民の生命と健康を守るため」と書いてあるのは痺れました。
 今回は台湾のデジタル大臣オードリー・タン氏も参加していると話題になっていましたが、海外からの参加者はほかにもいたのですか。

:海外からも大勢参加してくれています。台湾のシビックテック団体「g0v(ガブゼロ)」メンバーも多言語対応などで参加してくれていて、翻訳用のシートなどは170行くらいあったのを1時間くらいで仕上げてくれたりしていました。ほかにも中国語、韓国語、ポルトガル語などどんどん増えていますし、Code for Japanが使っているチャットツール(slack)にも海外からの参加者がどんどん来ています。

石塚:新型コロナウイルスは海外でも感染が拡大しているので、東京都のサイトはどこの国に持って行ってもそのまま使えますよね。本当にすごいことだと思いますが、なんとかしてこの流れをそのまま行政にインプットできないものかと考えてしまいます。

:北海道版を作ったメンバーから聞いたんですが、サイトを開設する前に「データをください」と言っても進まなかったそうなんです。でも、完成したサイトを見せたら理解を得られて、データが出てくるようになったと聞いています。自治体職員の方には、オープンになることで実現できることがあるということを知ってもらいたいですし、市民の方には「他の都市ではサイトを立ち上げているのに、ウチにないのはおかしくないですか?」と働きかけるキッカケにしてもらえるといいですね。

石塚:瞬間風速的に立ち上けることはできても、そのまま続けていくとなると、自治体側の制度などが立ちはだかったりもしますよね。

:今回大きかったのはCode for Japanが体力のある団体に成長していたということですね。自治体がやらなくても、最悪自分達の持ち出しでサイトを更新することもできます。コミュニティ側もそういう体力をつけていかないと行政としては頼み続けられないということはあるとは思っています。
 ただ、行政側でもアジャイルを前提とした調達仕様書をちゃんと書けるようになれば、Code for Japanをはじめとしたシビックテック団体が業務として受託することもできるので、今の制度の中でもできることはあると思います。

石塚:同じ地方自治法を適用していても、自治体ごとに解釈や運用が違うので、ひとつひとつ突破していくしかないと思っています。
 関さんは神戸市で様々な職員向け研修をされていましたが、都庁内でも人材育成に取り組まれるのですか。

:人事や人材育成はとても大事で、宮坂さんが真っ先に変えようとしているところです。
 宮坂さんが言っていたのが、「今までは都庁という“船”には都の職員だけが乗っていたけれど、外部のIT人材やスタートアップや社会起業家、シビックテックに取り組んでいる人など多様な専門能力を持った方が集まれば、物事はどんどん進んでいくのではないか」ということです。
 「強力なデジタル部隊を作って残していければ、多少失敗したとしてもリカバリーできる。自分が都庁から去る時にそういう人を乗せた“船”を残していきたい。」と話していました。

 組織は誰を“船”に乗せるかで変わります。自分も色々な自治体に行ってみて、結局はヒトの問題だと感じています。ルールを変えるのが大事と言われますが、最終的に変革を生んでいるのはヒトであって、それはルールを変えるよりも強力だったりします。

石塚:それは本当にわかります。宮坂副知事にはそういう自治体人事改革本を書いてほしいです (笑) 。

 今回の件を現時点で振り返ると何を感じていますか?

:良かったと思うのは、東日本大震災の時のように「エンジニアが目覚めた」という感じがすることですね。Code for Japanの活動自体も今回の新型コロナウイルス対策サイトの件ではじめて知ったという人が多くて、Code for Japanが使うチャットツール「Slack」の新型コロナウイルスチャンネルには400人以上参加していますが、半分以上は新規メンバーです。
 今までテクノロジーを利用するとか言いながらエンジニアが足りないというのがCode for Japanの弱点だったのですが、一気に改善した気がします (笑) 。

石塚:今回の新型コロナウイルス対策サイトを巡る取組は、行政のあり方を変革するほどのインパクトがあると思っています。私も色々な自治体の職員になにが起こっているのかきちんと伝えたいと思います。

(取材・文=石塚清香)

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※本インタビューは全2話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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