インタビュー

【奈良市長 仲川げん氏:第9話】昔は行政なんてなかった

仲川げん TOP9話目

奈良市には国家公務員や パイロットだった人もいる

加藤:自治体の職員の方に伝えたいことはありますか。

仲川市長:そうですね。ずっと行政の職員で居続けるっていうキャリアイメージに、縛られる必要はないと思います。ある時は民間の立場で、ある時は行政の立場で、ある時は住民の立場で、と。いろんな立場や視点を持つことによって、結果として良い行政ができると思います。

 奈良市の場合は、今、人材の多様化に挑戦しています。アラフォーまで受験できる経験者採用では、全くキャリアの違う人たちがどんどん入ってきて、良い意味で化学反応を起こしてくれている。民間企業出身者はもちろん、国家公務員から戦闘機のパイロットまで(笑)。

住民が多様だから 組織にも多様性が必要

仲川市長:なぜ組織に多様性が必要かと言えば、住民が多様だからです。自治体職員は、住民の暮らしや価値観が想像できなければ仕事にならない訳ですから、住民の持つ多様性と同じ幅が要る。

 女性の登用も同じで、住民の半数が女性にもかかわらず、これまではほとんど「中年の男性」が仕組みを作り意思決定してきた。これは議会も同じです。だから、まず足元から多様性を高め、「行政はこうあるべき」という思い込みを、とにかく1度なくしてみることが重要だと思います。

昔は行政なんてなかった

仲川市長:そもそも昔は行政なんてなく、人がいて、家族があって、村があって、それくらいじゃないですか。税金っていう方法も、行政っていう存在も、最初はなかったわけですよね。

 だけど、自分一人の力ではできないことで、みんなが求めているようなもの。それは、「みんなで橋をかける」とかね。そして、誰か一人では抱えきれないリスク、ものすごく生活に困るとか、のたれ死ぬとかいう時に支え合うというリスクヘッジ。そういう力を合わせることで、一人一人ではできないことができるようになる、というのがそもそもの行政の出発点だと思うんですね。

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変革というのは 突拍子もないことをすることではない

仲川市長:もし、行政が必要なければ公務員も必要ないわけです。税金っていう制度も必要ない。最近は行政の限界もあって、そういうことがまさに問われている時代だと思います。そこに立ち戻る思考パターンを持っていると、いろんなことの見え方が変わってくる。

 変革というのは、突拍子もないことをするという意味ではなくて、常に原理原則に立ち戻り、大きな主旨・目的を再確認して、諦めずに創意工夫することに他ならないと思います。そうすれば、行政はもっと大きな価値を創っていけるのだと思います。

加藤:ありがとうございます。長い間、お付き合いいただきありがとうございました。

仲川市長:早く、町でお金使いにいってもらわないと(笑)。

加藤:沢山買います(笑)。東大寺は、もう20年ぶりくらいになります。

仲川市長:大体、皆さんそうなんですよ。60代とか70代の人でさえ、修学旅行以来っていう人が多いんですよね。

 でも、1回かもしれへんけど、ほとんどの日本人が、必ず一度は来たことがある街というのは、すごいアドバンテージだと思います。ぜひ、皆さんに2度3度来ていただけるような街にしたいと思います。

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加藤:また来ます。本当にありがとうございました。

仲川市長:こちらこそ、ありがとうございました。

編集後記

 まるで、ドラマの中の話のようだった。仲川市長は『脱利権』を掲げ選挙で勝利し、33歳の時に奈良市役所に単身一人で乗り込んだ。3000人の組織を変えていくというのは途轍もないプレッシャーであったに違いない。そんな中、当時、市役所の職員の方はどういう気持ちで受け入れ、その気持ちはどう変化していったのだろうか。

 もちろん、市長就任時には、「こんな『若者』に好き勝手はさせない」という、いわゆる抵抗勢力のような存在もあったのではないかと思う。その一方で、自らの組織に対して期待することを半ば諦めかけていた職員もいたはずだ。そういう職員の中には千載一遇のチャンスとばかりに、仲川市長に変革の望みをかけつつ、陰ながらエールを送っていた方、もしくは、奮起して働いた方も数多くいたのではないだろうか。だが、果たして全国の首長の中で、そういうムードを生み出すことのできる方はどのくらいいるのだろうか。

 率直に言うと、「自治体組織は、職員が活躍するような環境を作れているのか」と、疑問に感じることがある。というのも、活躍している職員の方ですら、「所属する組織」や「その上層部」、そして、「自身が公務員であること」に対して、誇りを持てていないのではないかと危惧することがあるからだ。本来、自治体職員はその役割の重要性から、本人を取り巻く環境に誇りを持つべきだと思う。

 そういう視点で考えると、仲川市長は自ら先頭に立ち、『市役所の不正を正す』こと、そして、『街の編集長』として次のステージに向かっていくことで、まさに失われていた職員の誇りを取り戻しているのではないだろうか。

 ものごとを動かす人には力がある。仲川市長の貴重なお話とそこに生じたポジティブな空気からか、私自身も地方自治体にとっての『よそ者』『馬鹿者』として、そして、まだ許されるのであれば『若者』として、少しばかりでも「職員の方々が誇りを持つための一助になることができれば」と、思いを新たにするのである。

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※本インタビューは全9話です

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