インタビュー

【奈良市長 仲川げん氏:第4話】「職員が勝手に土下座をした」という行政対暴力

市民感覚から大きくズレている退職金制度

加藤:たしか議会で、特別職の退職金をなくすというような議案を出されていますが、これが修正されて、市長の退職金のみがカットになるみたいな感じで落ち着いたとか。

仲川市長:そもそも、一期目のマニフェストに退職金返上(不支給)という政策を掲げていたんです。一期4年で3450万円。これは高すぎる。しかも以前は職員OBの市長も多かったので、職員として一回、助役で一回、市長で何回、みたいな。やはり市民感覚から大きくズレていると感じました。

 今考えると、確かにゼロもどうかとは思います(笑)。ただ、毎月の給与とボーナスは人並み以上にいただいていますので、まずは率先垂範かと。これは市長だけでなく、副市長と教育長、企業局長、常勤監査委員も同様の取り組みです。

何度も退職金を貰うことは時代にフィットしていない

仲川市長:議会からは、「市長が自分の分を削るのはご自由に」という反応もありますが、私以外の特別職も不支給とすることには反対の意見が多数。理由としては「優秀な人材が確保できなくなる」と。

 確かに重要かつ、ハードな業務ですので、相応の対価で処遇することには異論はありません。しかし、4年ごとに退職金を払うという制度は、今の時代にはフィットしていないように感じます。やっぱり退職金って、30年40年働いて1回だけもらえるようなものですよね。財政状況が良い時代であれば、まだいいですけどね。奈良市は中核市の中でも底辺の財政状況です。ちょっとそれは非常識かなと。

仲川げん 4-4

「改革をしない市長のほうが長続きできる」という現実

加藤:確かに民間人の退職金の感覚からすると、期間の割には金額が大きい印象はありますよね。ただ、成果や責任の重さを考えた場合、多少もらってもいいような気はしますが・・・。

仲川市長:それがもし、成功報酬というかね、実績を上げたから貰えるというのは、一つ考えとしてはありかなとは思います。ただ、波風も立てない代わりに議案を通してもらい、目新しいことも、改革もしない。そういう市長のほうが、長続きできるという現実もあるので(笑)、本当に市民が望んでいるような、やるべきことをやると、敵を作る場面も少なからずあるとは常々感じています。

国よりも市町村相手のほうが「ゴネれば何とかなる」

加藤:先ほど、裁判の話が出たと思うんですけども、裁判はどういった相手と、どのくらいの数をされているのでしょうか。

仲川市長:そうですね、実際に私が就任してから何件裁判やったのか、数えたことはありませんが、恐らく近隣市とは比べ物にならないでしょう。

加藤:数えきれない数なんですね。

仲川市長:私個人が訴えられるだけでも相当ありますから。もちろん、こちらが訴えるものもめちゃくちゃ多いですよ、そりゃ。市営住宅の明け渡し請求から何から。基本的に行政というのは訴えられやすい存在なんです。

 もちろん、大きな権限の裏返しという部分もありますが、国相手よりも市町村相手のほうが「ゴネれば何とかなる」と思われているように感じます。税金でも、市民税や固定資産税は滞納しても、国税はきっちり払う、という人がいるように。

仲川げん 4-3

市税の徴収率は5ポイント上がり 差し押さえも10倍に増えた

加藤:市町村相手のほうが「ゴネられやすい」理由はあるのでしょうか?

仲川市長:地縁関係、知り合い関係が多く、密接に絡んでいることが毅然とした対応を避けてきた部分はあるかと思います。私は「しがらみ曼荼羅(まんだら)」と呼んでいますが(笑)、どうしても、旧知の人間相手に差し押さえとか、やりにくいじゃないですか。顔が見える距離感のメリット・デメリットがある。

加藤:そのあたりは仲川市長に代わられてから、大きく方針転換されたんですよね?

仲川市長:確かに生え抜きではなく、外から入ったからやりやすい部分はあったと思います。以前は、声の大きな人には「触らぬ神に祟りなし」で、見て見ぬふり、先送りする体質がありましたが、今は徴税などでも国税の仕事をしていたOBを採用して厳正にやっています。結果として、市税全体の徴収率は5ポイントも上がり、現年・過年度合わせて96%にまでなり、差し押さえも10倍に増えました。

「職員が勝手に土下座をした」という行政対暴力

仲川市長:行政対訴訟もそうですが、行政対暴力もあります。実際に職員が殴られたり、日本刀で脅されたりという事例もありますが、ややこしいのはグレーゾーン。たとえば、大量の情報開示請求をわざとかけてくるようなケースもあります。

 手口でいうと、役所の中を頻繁にうろうろして、通りがかりの職員の名札を見る。そして、そのまま開示請求の窓口に行って、目を付けた職員に関する「過去10年分の起案を全部出せ」、みたいな方法です。

 私たちも通常は、求められたら極力開示することが原則なので、膨大な時間をかけて必死で資料を集める。倉庫をひっくり返して原本から全部コピーを取ってファイルにして提出する。そうしたら、その人はその資料をパラパラっとめくって、今度は「10年前のこのコピー代200円。これは何をコピーしたのか」って聞いてくる訳ですよ。わかるわけがないですよね。

仲川げん 4-5

仲川市長:そうすると向こうの思惑にハマる。「なぜ覚えていないのか」と、延々詰められて、最後は土下座させるんです。それも自分から「土下座しろ」とは決して言わない。強要になると、自分が不利になることがわかっているからです。

 なので、相手が勝手に土下座をしたという流れに持っていく。いわば『愉快犯』ですよね。だから、奈良市では条例を変えて、市民の知る権利を明らかに逸脱した大量開示に対しては、拒否できるという風にしました。それ以降は来なくなりましたね。

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※本インタビューは全9話です

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