記事タイトル:スポーツ庁、公立中の部活動の地域移行で自治体向け支援窓口設置 予算化へ
https://www.sankei.com/article/20250822-CEVI6MG7HZNZDBGBGXHBLXI4LI/
(文=金澤 剛史)
今までも数度取り上げた部活動地域移行の続報です。
スポーツ庁は、公立中学校の運動部活動を地域のスポーツ団体などに委ねる「地域移行」に関して、自治体向けの相談・サポート窓口を設置し、アドバイザーを派遣する方針を固めました。
関連経費として
運動部活動関連の経費
▶︎▶︎▶︎37億円(前年度比5億円増)!
保護者負担の軽減や指導者への謝金制度は金額を示さない事項要求として計上されています。
■「働き方改革」から「地域スポーツの再構築」へ
以前にも取り上げた通り、
今回の地域移行は、
単なる教員の働き方改革ではありません。
本質的には
「部活動を
持続可能な仕組みに再設計する」
取り組みです。
今まで学校が担ってきた
「子どもの運動・居場所・人間形成」
といった機能を、
地域社会全体でどう支えていくかが
問われています。
これまで教員の献身によって
支えられてきた部活動は、
教員数の減少と
長時間労働の制約により、
維持そのものが難しくなっています。
同時に、指導者がいない種目が増え、
子どもたちの「部活離れ」や
「スポーツ機会の格差」も顕在化しています。
特にこの点は深刻で、
昨日もミニバス指導者と話していたのですが
競技に打ち込んできた子供たちほど
経験ない指導者に当たると
意欲を失ったり指導者を
軽んじてしまうことが
往々にしてある
とのことです。
■期待される効果:スポーツ機会の拡大と地域力の再生
自治体の立場から見ると、
学校の中で完結していた運動の機会を、
地域クラブや企業、大学OB、
シニア世代の指導者などへと
開放することで、
スポーツが「まちのハブ」となる
可能性があります。
指導の担い手が多様化すれば、
種目や活動時間の選択肢も広がります。
「毎日練習できなくても続けられる」
「大会に出なくても楽しめる」
といった柔軟な参加スタイルが実現し、
子どもたちがスポーツと関わり続ける
さまざまなきっかけを増やすことにも
つながります。
■一方で見えてくる課題:制度設計の遅れと支援の空洞化
ただし、現場からは冷静な懸念も上がっています。
最も大きいのは、
「支援の窓口が現場から遠すぎる」
という構造です。
今回の予算では、国の支援策の多くが
「相談窓口の設置」や「アドバイザー派遣」
に充てられています。
つまり、現場支援ではなく、
その川上に多くの経費が流れる構造に
なっているのです。
しかし、全国の自治体はそれぞれ事情が異なり、画一的なアドバイスや電話相談だけで
現場が動くことは非常に困難です。
加えて、中体連(中学校体育連盟)
の動きが地域移行の動きと全く
連携しておらず、部活動所属者と
地域のクラブチーム所属者と
で分断されてしまっており、
まずはその点から調整する事も
求められているのです。
もし支援窓口を本当に機能させるのであれば、
単なる相談対応ではなく、
「地域の課題を一緒に共有し、
実装まで伴走する支援モデル」
が不可欠です。
現場では「誰が責任者なのか」
「どこに相談すればいいのか」
が曖昧なまま、
学校とクラブ、そして中体連との間に
温度差が生まれてきています。
その隙間を埋める役割こそ、
国に求められているのですが、、、
■今後の焦点:自治体の“構想力”が問われる時代へ
僕は、地域移行とは
単に部活動を地域に委ねるのではなく、
「どんな地域スポーツ文化を育てたいか」
というビジョンを描けるか、
そして共有できるかどうかです。
■「仕組みを作る人」が増えるほど、地域移行は成り立っていく
地域移行は
「学校が部活動を手放す話」
ではなく、
「地域が教育の一部を引き受ける覚悟を持つ」
政策です。
制度や予算よりも重要なのは、
それを運用する人のネットワークと意思です。
支援窓口やアドバイザー制度が
どれほど整っても、
現場で汗をかく人がいなければ
絵に描いた餅に終わります。
一方で、自治体やクラブが自ら構想を描き、
国の制度を使いこなす側になれれば、
地域移行は「部活動改革」から
「地域スポーツの再設計」へと進化します。
地域移行は、制度の話ではなく
「誰が子どもたちの未来を支えるか」
という問いそのもの。
そしてそのカギを握るのは、
僕たち自治体職員だと思います。