オンライン授業のアンケートを迅速に共有
加藤(インタビュアー):前回、アンケートが教員のモチベーションに繋がるという話がありました。これまでの通常の授業では、生徒から先生へのフィードバックがあったのでしょうか。
吉川氏:学校評価アンケートと呼ばれる、1学期に1回ぐらいのものしかありませんでした。それが2020年4月の休校期間中は、毎日全ての授業と1日の感想をGoogleフォームで集めました。
それをその日のうちに集計し、スプレッドシートで共有して、次の日の朝には教員がそのフィードバックを見るサイクルができました。
加藤:教員側の反応はいかがでしたか。
吉川氏:まず動画の授業だと、生徒の反応が見られないですよね。アンケートはそれを可視化できるので好評だったと思います。
あとこれは後から分かりましたが、生徒は各自バラバラに家にいて、孤独感を味わっているケースが少なくありませんでした。そこでアンケートが一つの繋がりを感じられるツールになっていて、いろいろなサインを出してくるんですよね。そのやり取りを生徒も教員も心の拠り所にしていた部分がありました。
加藤:アンケートでは、授業自体の評価はされるのでしょうか。
吉川氏:4段階の評価と、問題点があればコメントをする項目がありました。ただ本当に前向きな評価が圧倒的多数でしたね。
と言うのも、生徒からすれば他の学校がまったく進んでいない状況で、本校の教員は前に進めようと頑張っていると伝わっていたんですね。そういう気持ちの部分も影響していたのではと思います。
業務の効率化と、研修効果
加藤:実際に授業のオンライン化に取り組んでみて、他にも気付きはありましたか。
吉川氏:まず一つは、授業の効率化ですね。例えば世界史の担当教員は私ともう一人いますが、普段は時間割の都合で2~3年生を二人とも担当していました。
それがオンライン授業では時間割を気にしなくても良くなったので、一学年一人の担当になって業務が大幅に減ったのです。
加藤:なるほど、たしかに教員同士で役割分担がしやすくなりますね。
吉川氏:そしてもう一つ良かったのが、教員同士が授業を見比べられるようになりました。例えばアンケート結果がすごく良かった授業は、他の教員も気になって見ますよね。
他の教員の授業を見る機会はほぼありませんから、特に若手がベテランの授業から学びやすくなったのは大きな変化です。逆にベテランはテクノロジーに疎いので、動画編集を若手から学び、お互いに支え合う構図ができました。
ミニマムスタンダード
加藤:今回、先生が全員オンライン化に対応されましたが、そこでの苦労はありましたか。
吉川氏:全体のやり方を揃えるのには、やはり苦労しました。というのも、既にICTを駆使していた教員は何人もいたんです。
一方で、これまでチョーク&トークでやられてきて、オンライン授業は今回が初めてという教員も、当然いるわけです。その両者が同じ方法を取るわけですから、そこは色々ありました。
加藤:たしかに、それぞれのやり方で好き勝手にやるわけにはいきませんよね。
吉川氏:そこで本校の校長が打ち出したのが、「ミニマムスタンダード」です。正直、本校は色々な工夫ができる環境が整えられていたのですが、あえて削ぎ落して最もシンプルな形にしました。
今からオンライン対応する先生がスムーズに始められるように、またオンラインに長けた教員にも理解を促しながら、この非常事態を乗り越えていきました。
(取材=加藤年紀 編集=小野寺将人)
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※本インタビューは全8話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第2話 学びを止めるな!わずか2週間で全教員がオンライン授業
第4話 オンライン授業をやって見えたもの
第5話 生徒が企画し、コロナと戦う病院でメッセージ動画を投影
第6話 協賛金を生徒が集める「掛川城プロジェクションマッピング」