仕事が好きだから公務員になった
加藤:なぜ公務員になろうと思ったのですか?
井上氏:私は高校を卒業して18歳から市役所に入っているので、正直、あまり選択肢を知らなかったのもあるんですね。ただ、勉強に興味がなくて大学には行きたくなかったので、それよりも働く経験をしたいと思いました。
あまり良い答えではないかも知れませんが、公務員の魅力で最初に考えていたのは、女性として子どもを産んでも、仕事が続けられるということでした。仕事と家庭を両立していく人生を選ぶなら公務員、しかも地元に残れる。そんな気持ちでした。
加藤:仕事はずっと続けたいのでしょうか?
井上氏:そうですね、仕事は好きなんです。人によっては長期の育児休暇をとって、ゆっくり子育てをしたいと思うんですけど、私はどちらかと言うとすぐ仕事に出たい。子どもから見たらどう映っているかわからないですけど、常に何かをしたい母親なんです。
子どもが小さい時から、毎年ハロウィンコンテストにも出ていますが、そこではお母さんに連れられて、子どもが楽しんでいる姿が目に入るんです。自分の子どもと同い年くらいの子どもを見て、他の家庭はこんなふうにハロウィンを楽しむんだって思ったりしていました(笑)。
私は子どもが1歳くらいの時からマラソンを始めて、フルマラソンを走ったりもしました。仕事も同じで、すごく充実しながら働いていました。常に何か生きがいが欲しいので、やりがいのある物を次々と探してしまうんです。
バナナ姫は公務員だから応援してもらえた
加藤:最後の質問です。公務員で仕事をする醍醐味を教えて下さい。
井上氏:バナナ姫という仕事も、公務員のイメージに対するギャップや意外性から話題になり、応援してくれる方がいました。もちろん企業に勤めて、PRのためにコスプレをして反響があれば、所属企業からは評価をされるのかもしれない。でも、市民から応援されたかと言ったら、それはなかったと思います。
バナナ姫は公的な面を持っている公務員だから応援してもらえたのだと思っています。そういう仕事はあまりないのではないでしょうか。
編集後記
井上さんに直接お話をお聞きすると、『バナナ姫』という一面しか知らない自分の印象が大きく変わった。物事の本質を捉えながら経験を語り、会話の流れを読みながら流暢に話を進める。そういった姿勢や機転がメディアに認知され、個人として活動する今もなお、注目され続ける要因なのだろうと思う。
人は他人に対する想像力が欠如しがちである。コスプレをしている公務員というと、あまり良いイメージを持たない公務員もいるかもしれない。しかし、『バナナ姫ルナ』を自分事として置き換えた時に、同じレベルで認知やPRに繋げられる人が何人いるのかと問うと、その答えは限りなくゼロに近いのではないか。
全国では奇抜な趣向でメディア受けを狙う企画は無数にあるが、多くの場合にそれは成功していない。どこかの自治体の公務員が同じようにコスプレをしても、大きな注目を浴びるのは簡単ではないだろう。加えて、自治体によっては広報・PR活動に大きなコストを捻出していることも散見されるが、『バナナ姫ルナ』のケースは大きな予算がかかっていない。
メディア掲載の広告換算価値額を算出できる民間サービスも存在するが、大手メディアを含み130以上のメディアに掲載されているとなると、その転載先も含めた広告換算価値は恐らく“億”を超える。
もちろん、中には『バナナ姫ルナ』のエンタメ的要素を全面に押し出している記事もあり、全ての換算価値がそのまま北九州市の観光やイメージアップにつながっているとは言いきれない。しかし、それであっても、『バナナ姫ルナ』という異質、かつ貴重な存在を役所内に維持できなかったことは、大きな損失であることは容易に想像できる。
「バナナ姫は公務員とのギャップによって話題になった」という井上さんの言葉があるが、実はギャップを許さないのは世間ではなく、公務員が思い描く“公務員への理想像”なのかもしれない。
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 バナナ姫ルナ 無理を言われたら乗り越えたくなる
第2話 過熱する報道と抱えた不安
第3話 引退、3児のママであることを公表
第4話 復活、使命感を持って好きなことをやる
第5話 やりがいを感じた生活保護担当
第6話 バナナ姫は公務員だから応援してもらえた