インタビュー

【南房総市 松田浩史 #2】台風15号で商品が全滅、返礼品は3千円の手紙

松田浩史2

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台風15号によって返礼品が提供できない事業者

加藤:ふるさとチョイスアワード2019で、岩手県北上市とともに千葉県南房総市が審査員特別賞を受賞しました。「思いやり型返礼品で被災事業者を支援!」という発表をされましたが、『思いやり型返礼品』とはどういったものでしょうか?

松田氏:思いやり型返礼品というのは、寄附者が品を受け取るのではなく、誰かに返礼品を送ったり、障がい者福祉施設等で作られた品を受け取る、誰かのための返礼品なんです。
 南房総市の場合は台風15号によって施設が被災して営業休止になったり、停電の影響で商品が腐ってしまって破棄したり、お礼の品を出せなくなった事業者が出てきました。そのため、返礼品ではなく、事業者さんからお手紙を返すようにしたんです。商品として見るとすれば、「3千円の手紙」というイメージですね。発想としては、クラウドファンディングに近いのかもしれません。

加藤:なぜ、この取り組みを進めようと思ったのでしょうか?

松田氏:実は、台風の翌日の日中に市内を2周ぐらいしたんです。電気も通らず、保管する場所もないので、在庫を卸売りに行きたいと言っても、千葉県の広範囲で同じ状況だから、引き取ってくれるところがない。月曜日から停電して、少なくとも5日間は続いていたと思いますよ。だから腐っちゃうんです。愛知県くらいまでトラックで持って行った人もいましたが、そこまでできない業者さんだと、商品を駄目にしてしまった方も多くいました。

 そこで、まだ携帯電話も圏外でしたが、東日本大震災を経験している北上市役所の登内芳也さんにアドバイスをもらいました。確かに手紙以外出せる物がもうないなと思って、『思いやり型返礼品』を進めました。

 事業者さんには、「こんな感じで手紙を書いてくださいね」といくつかのパターンを作ってお願いをしました。ただ、複数の事業者に寄附する方もいますから、「テンプレートをそのまま使うのは絶対やめてください」と伝えたんです。結果として、わりと手書き率が多くなりました。

寄附者に送られた手紙

寄附者に送られた手紙

返礼品がなくても100万円の寄附が集まる

加藤:大体、どのくらいの事業者が思いやり型返礼品に参加したのでしょうか?

松田氏:ピーク時で11社です。返礼品の全品が出せなくなった人だけの対象事業者として、当時約40社あるうちの、11社がふるさと納税に参加しました。

加藤:返礼品がないと寄附を集める力はだいぶ落ちてしまうと思います。寄附が集まると考えていましたか?

松田氏:確信は全くないですけど、「リピーターの人が応援してくれます」と説明しました。結果として、始めてすぐに80万円ほど、12月末時点で約400万円となりました。何も出せる品がない事業者さんしか登録できないルールでしたので、時間が経つに連れて、通常の営業に戻り、受付も通常の商品に切り替えている事業者さんも増えています。

副市長と課長に説明し、早期に実行

加藤:これを進めるにあたって、庁内ではスムーズにいきましたか?

松田氏:特に問題はなかったです。課長は対策本部の中でつきっきりだったので、今度こういうのやりますと口頭で言いました。まだ電気がなくてパソコンが使えず、電話も繋がらないので、後日、手書きで書類を出しますと伝えました。たまたま副市長がその時にいらしたので、写真を見せて状況を説明したら、「今やらないといけない時期だからやれ」と言ってもらいました。

加藤:副市長まで確認を取ったのはなぜでしょうか?

松田氏:品切れしていない事業者さんからも、参加したいと言われる可能性がありました。品物が出せる事業者なのに手紙だけを返すようなことがあったら、それは裏切り行為になるからです。そうならないように、車の移動中に参加基準をずっと考えていました。

加藤:参加条件が公平性や平等性を担保する必要があったわけですね。

松田氏:そうです。実際、やりたいと話をいただいた事業者さんに、「次の次の日には電気が来て、お店をやってましたよね」と伝えたこともあります。現場を回ってると分かるんですよね。言いづらくても、言わないといけないこともあるんです。

友達が困っているから、どうにかしたい

加藤:台風15号が来たときに、松田さんはどのようなお仕事をされましたか?

松田氏:9月8日の日曜夜中に台風がやってきて、翌9日に市役所に来ると、2階のオフィスまで水浸しだったんです。横から風が吹いちゃって、2階でも関係なし。それをハケで掃いて日中が終わる。夜にはいろいろな場所に避難所ができて、今度はそこで物資を渡しました。その時点でも停電が続いていたんですよね。
 夜が明けた時は、発電機の熱で部屋の中がすごく暑いんですよ。避難所の外に出ているほうが涼しいので外にいると、いろんな他の地域のナンバープレートを付けた車が来て、お菓子とかおむつとかを持ってきてくれるんです。

 真っ暗な中にいる時に、ふと、事業者さんたちはどうしているのかなと思って、明け方の朝6時に事業者の様子を見に行ったんですよね。役所はサーバーが落ちていますから、仕事にならないので、次の日の夜中のシフトに備えなさいと言われていました。つまり、空いている時間がある。だから、事業者を回ってみたんです。そしたらみんなシャッターが閉まってたり、作業に追われていたりする。漁協さんはフォークリフトでひたすらゴミを捨てていて、かなり厳しい状況であることがわかりました。

加藤:以降も避難所のお仕事をされていたんですね。

松田氏:そうですね。記憶が定かでないんですが、9日から13日までは避難所で、通常の勤務に戻ったのが9月17日頃だったと思います。最初の11日までは夜間シフトでした。

加藤:その状態だと、睡眠もとれないですね。

松田氏:はい。避難所のソファーみたいなところで寝落ちして、それ以外はずっと起きていました。

加藤:皆ができることではないと思います。松田さんの中で何がモチベーションになりましたか?

松田氏:品物を出せなくなった事業者を回ると、「悔しいよ」って皆が言うんですよね。そこで、「写真撮らせてもらっていいですか」って聞いても無言なんです。それでも写真を撮らせてくれる。保健所とか消防とかの決まり事もあるから、「それはちょっと…」「やめろよ」とか言われてもおかしくないと思うんです。
 かれこれ5年6年付き合っている友達が困っているから、どうにかしたいという感覚でした。だってまだ、電気がついてない人がいっぱいいる。半分ぐらいの人は電気がついていませんでした。

災害後3か月が経ってもブルーシートなどが残る

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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