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【南房総市 松田浩史 #1】ふるさと納税寄附額が2百万円から6億円へ

【松田浩史(まつだ ひろし) 経歴】
1973年生まれ。1993年、千葉県丸山町(現南房総市)役場入庁。産業課で農地の区画整理や用排水路の整備を行う土地改良事業などに従事し、2006年市町村合併により誕生した南房総市で、観光の部署に配置となり海水浴場の開設や修学旅行の誘致を行う。2009年から教育委員会で社会体育施設の管理などを行い、2010年の千葉国体において軟式野球会場の整備などを行う。野球のほかにサッカーやマラソンなど競技年齢層の広い競技者、指導者などの考え方から多くの刺激を受ける。2014年から企画政策課(機構改革により現在は企画財政課)でふるさと納税を担当。

―豊富な水産資源を中心に、ふるさと納税の寄附額を大きく伸ばした南房総市。成果をけん引したのは、2014年からふるさと納税の担当となった松田浩史氏だ。しかし、2019年、台風第15号および第19号が千葉県広域に大きな被害をもたらした。南房総市の世帯数は約1万7千だが、この災害による「り災証明書」「り災届出証明書」の発行数はなんと約6千件にのぼる。
 松田氏は、災害によって返礼品を提供できない事業者を支援すべく、すぐさま手を打つ。その結果、南房総市は同市を支援した北上市とともに、『ふるさとチョイスアワード2019』で審査員特別賞を受賞した。

ふるさと納税の担当となって5年目

加藤:今までの経歴を教えていただけますか。

松田氏:初めに、合併前の旧丸山町で、田畑の区画整理や国土調査を13年ほど担当しました。その後、2006年に合併し観光関連、2009年から教育委員会生涯学習課でスポーツ施設を担当し、2014年から今の企画部企画政策課です。

加藤:ふるさと納税の仕事は、もともと希望していたのでしょうか?

松田氏:いえ、異動してきた先にふるさと納税という仕事があったという感じです。ちょうど、平戸市が14億円の寄附金を集めた年だったので、『ふるさと納税』という言葉がメディアでちらほら出てきた頃でした。当時、3人の部署でしたが、自分がふるさと納税を担当していたので、うちも同じようにできないかなと思っていたんですよね。

加藤:課内の別の仕事も抱える中で、どのくらいの時間をふるさと納税の業務に割きましたか?

松田氏:2014年は繁忙期の年末を除くと、勤務時間の1割ぐらいです。2015年も1割のつもりでいたところ、なんと8割ぐらいまで増えちゃいました。2018年から他の人の手も借りています。

南房総市役所

ポータルサイトの活用で寄附額が増額

加藤: 2014年の寄附は45件、約200万円でした。翌2015年に1億4千7百万と大きく数字が伸びています。この変化には何があったのでしょうか。

松田氏:「ふるさとチョイス(ふるさと納税のポータルサイト)」に掲載したことが大きかったです。同年の4月から準備を始めて、事業者さん向けに説明会を開いたり、商品の絞り込みをしていき、7月1日に掲載となりました。

加藤:返礼品を出すためには、事業者と連携する必要があると思います。最初から協力は得られたのでしょうか。

松田氏:得られないです。今でも腰の重い方もいらっしゃるんですが、南房総市では漁協がわりと最初から乗ってきてくれました。商工会にお願いして会議室を借りて説明会を開いたんですが、「PRするチャンスなんだからやったほうが良いよ」って議員さんに声をかけられたという事業者さんが、説明会に沢山参加してくれたんですよ。そういう働きかけが大きかったんじゃないかと思います。

他自治体から学んで成果を高めた

加藤:2016年は1億5千万円、2017年は2億9千万円、2018年は4億円と寄附額が伸びています。この要因は何だと思いますか?

松田氏:毎年、事業者さんにアンケートを取っているんですけれど、2015年は発注が来ると思っていなかったんですって。でも、FAXで発注書がバンバン来るので、次の年から目の色が変わったようです。

 また、2015年7月からふるさとチョイスに掲載してから、問い合わせが来過ぎてしまったので、効率化する方法を知るために勉強しました。そこで、全国の担当者を集めたふるさとチョイス主催の会議に参加するため、当時、直近で行われる愛知県碧南市で開催された勉強会に行きました。
 近場の役所に聞くのが公務員のセオリーだと思うんですけど、岐阜県や愛知県、静岡県の人たちからも話を聞くことができました。当時、お肉やお米を中心に、返礼品の豪華合戦が始まっていましたが、西伊豆町は海産物を出してたんですよね。干物やサザエなど、南房総市とかぶるんですが、既に3~4億円の寄附を集めていました。

加藤:西伊豆町は何が優れていましたか?

松田氏:まず、事業者さんと役所の関係が深い。そして、周知する方法を一生懸命考えていました。雑誌に載せたり、町へ釣りに来る人にどう知ってもらえるかも考えていたんです。それと、西伊豆町はプロジェクトチームを組んでいて、役場全体でふるさと納税に取り組んでいるように思いました。それぞれの事業が持つノウハウをふるさと納税に集約して事務効率的に行っているように思えました。返礼品を提供する事業者の情報提供だとか、その地域に住む役所の職員が職員としてでなく、住民としての地域情報なども含めて情報を共有し合っているなと感じました。

加藤:他にも参考になったお話はありましたか?

松田氏:2015年にワンストップ特例ができて、マイナンバーを記入してもらっていました。そのため、宛先が間違えずに届くように返信用封筒を使ってもらうんですけど、封筒の裏側に質問を印字して、アンケートを取りました。
 役所で印刷機をかけて封筒を作って、集計データを月1で事業者さんにFAXで送るんです。クレームがあればその都度、業者さんに直接言いますが、いいことが書いてあることが多いので、事業者さんがそれを休憩スペースに貼ったりするんですよ。このアンケートは当時の北上市さんから教えてもらってやるようにしました。

加藤:さらに、2018年も寄附金額が伸びています。

松田氏:2018年は西日本豪雨の代理受付分が約3千6百万円あるので、実質的な南房総市への寄附は3億6千万ぐらいです。この時の伸びは、独自の説明会を開いたことが大きかったです。というのも、それまで説明会ではトラストバンクさんに全国の事例を話してもらっていました。だけど、「それは、よそだからやれるんじゃないの?」と、事業者さんにどうも響かないんです。
 当時、成果が出ている事業者さんが市内に増えてきたので、彼らにパネラーになってもらい、ディスカッションをしたんです。そうすると、「うちはこうやってますよ」「それいいね!」なんて話になって、事業者の規模や年齢など地域の序列と関係なしに情報共有されていきました。
 また、その年から『ふるさと納税通信』という手紙のようなものを、事業者さんに定期的に出して、寄附を増やした手法を共有しました。事業者さんはポータルサイトに掲載されている返礼品の上位ランキングを見たり、実際に寄附をして分析する。返礼品の手紙を手書きにしたり、保存のしやすい商品を作ったりと、どんどん手を打っていったんです。

 結果として、商品が100品ぐらい増え、かつ、全体の半分ぐらいの品が内容量など質の見直しがされました。

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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