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【生駒市長 小紫雅史氏:第3話】2万時間を超える残業を削減

大幅な総残業時間と残業代の削減

加藤:残業改革を行って、総残業時間や残業代を大幅に削減されました。

・総残業時間 93,509時間(2010年度)→ 72,819時間(2013年度)
・残業費 2億6900万円(2010年度)→ 2億900万円(2013年度)
※この期間、職員数は874人→830人

 2013年度以降も残業は減っているのでしょうか。
小紫市長:その後、年間で6万時間台になる時もありましたが、今は7万時間ちょっとだと思います。昨年大きく組織改編をしたこともあって、若干リバウンドはありますが、何とか踏みとどまっている感じでしょうか。

当時の市長に 残業時間の削減目標を宣言してもらった

加藤:成果につながったアプローチはどのようなものでしたか?
小紫市長:1つは、副市長時代に、当時の市長に残業時間の15%削減を宣言してもらったことです。実は、私は削減目標を30%にするべきだと言ったんです。とにかく根本的な改善を促したかった。
 というのも、目標が5%削減くらいだと、今やっているいくつかの事業を「少しずつ減らして対応しよう」と考えるので、それでは意味がない。30%削減となれば、仕事のやり方自体を「改革」するために知恵を絞ると思ったんです。ただ、いきなり残業時間を30%減らすというのはさすがに厳し過ぎるということで、最終的には15%になりました。
 大切なのは、仕事への意識を変えることですね。本当は捨てることのできる仕事やフローもあれば、50点で良い仕事もある。残業を減らすうえでは、この「捨て方」がポイントだと思っています。
 例えば、ツイッターで役所の情報をどんどんスピーディに発信しようと言っているのに、わざわざ課長の決済までとっている。しかも紙で(笑)。業務内容にも、仕事のやり方にもそれぞれ、改善可能なことはまだ沢山あると思います。

残業時間を人事評価に入れた

小紫市長:2つ目は、市役所全体の残業時間の削減目標を各部や各課単位に割り振り、その達成状況を、全管理職員の人事評価項目に入れたことです。管理職の評価点のうち、10%程度がこの項目となったため、管理職の意識や行動は確実に変わっています。これに加え、部長会議の時に残業が多い課を発表し、担当部長がその理由と具体的な改善方法を私に報告してフォローアップする。
 残業時間と一括りにしても、人によって大きな偏りがありました。例えば、選挙管理委員会とかは選挙の前後は休みもちゃんと取れず、夜遅くまで仕事しています。でも、職員一人当たりの平均残業時間は月24時間程度なので、働き過ぎている職員が見えてこなかった。だからこそ、危機感がなかったと思うんです。もっと、一人一人にアプローチしなくてはいけないと思います。
 残業時間に注目したのは、特定の個人が仕事を抱え込むことをなくすこと。それと、仕事を効率化して時間を生み出し、その時間で新しい仕事を考えること。もちろん、家庭のためとか、それこそまちに飛び出す時間に使ったりもできる。「今の業務が忙しくて、新しい取り組みなんてできません」と言っている人に対する一つの答えでもあったんです。

職員の反発や戸惑いもあった

加藤:残業の削減を進めていくにあたっては、どの部署が主導したのでしょうか?
小紫市長:基本的には人事評価なども含めて人事課がとりまとめています。ただ、残業をどのようにすれば削減できるかを考える、若手職員が中心になったプロジェクトチームを立ち上げ、「5時以降の問合せ電話を禁止する」とか、「議事録は全文を文字起こしするのではなく要約筆記にする」とか提言をしてもらいました。
 「残業削減は人事課がやるんだろ?」となっては何の意味もないんです。それぞれの部や課で、「残業は自分たちの問題であり、どのように対応すべきなのか」と『自分ごと』として認識してもらうために、人事評価や部長会を活用しています。
加藤:進めていくうえで、大変だったことはありましたか?
小紫市長:当時、残業削減だけでなく、職員数の削減も進めていました。同時に、「新しいことを考えよう」とか、「まちに飛び出そう」とか、言い続けていたので、「こんなの全部一緒にできるわけがないやん」と職員の抵抗や戸惑いは大きかったと思います。僕にもちょこちょこ聞こえてくるぐらいでしたから、多分裏では相当あったんだと思います。
 でも、「これでいく!」と決まったら、職員はそれにしっかりと向き合い、真面目かつ真摯に、目標を達成するために取り組んでくれました。今では、残業時間を抑制しながら、新しい取り組みがどんどん出てくるようになったので、大きく前進・成長できたと心から喜んでいます。
 今年は事業の仕分けもやっていますが、「新たな事業が増え過ぎて歳出を抑制することが必要になった」という嬉しい悲鳴もあります。単に残業削減を実現しただけではないところが、生駒市の職員のすごさだと誇りに思っています。

「成長機会がない」 それはあなたの問題だ

加藤:「自治体職員の成長機会が少ない」といった話をよく聞くのですが、市長はどうお感じですか?
小紫市長:成長機会は沢山あると思いますよ。企画、マーケティング、営業、広報…と業務が分けられている企業に比べたら、自治体は分野別に分かれているので地域課題を見つけて、企画を立てて、広報を考えて実施まで自分でできます。もちろん、生駒市では、メンター制度の徹底、クロスメンター制度の導入、政策形成研修の強化、3年目までの集中的な研修の実施などを進め、丁寧にその機会を与えています。
 だから若い職員が単に「成長機会がない」「仕事がつまらない」などと言っていたら、「それはあなた自身の問題だ」と言います。どんな仕事でも工夫や改善する余地はあるはずですし、本業以外でも関連する他の部署の仕事を勉強したり、自主勉強会をしたり、まちの人と交流する機会を作ったり、成長する機会はいくらでもあるんです。
 「成長機会がない」なんて信じられないですね。我々、市町村職員の周りには成長機会『しか』ないですよ。

生駒市役所 「インタビュー研修」

1年目の職員がまちに出て 市職員への期待や要望を聞き取る「インタビュー研修」

若手の市町村職員は 甘やかされている

小紫市長:生駒市に来た当初、若い職員は甘やかされていると感じました。社会人としての言葉の使い方、資料の作り方ひとつでも、若い職員に細かく指導し、時には叱ることができる管理職、係長がまだ少ないと思います。
 1年目は、鉄が熱いうちに基本的なことをしっかりと指導して、言われたことができるようになってもらう。2年目は、指示された内容についての改善も考えてもらう。そして、3年目くらいには、「役所の外に出て行って、誰か面白い人といっしょに仕事を考えてこい!」と、そんな風に指導する係長がいなければいけないと思います。自分で成長の機会をつかむことが基本ですが、OJTも成長の機会を作ることになるでしょうね。

考えることを求められた 環境省若手時代

加藤:市長が環境省に入省した際は、どのように上司と関わっていたのでしょうか。
小紫市長:コピー取りなどの雑用も沢山しましたし、仕事の基本的なことを徹底的に叩き込まれました。作った資料は、全て添削で真っ赤にされて突き返される1年です。辞めたくなるほどつらかったですけど、1年でそれなりに一人前になったと思います。それでちょっとホッとしていたら、2年目にはいきなり部長室に集められて、「これから予算ダマ(予算案に載せる新しい項目)を考えるから」と、ブレストが始まるんです。
 「小紫、まず意見を言って」「なんか出せ、なんか考えろ」って言われ続ける。わけがわからない中、「日本一エコなコンビニみたいなモデル事業をやって横展開したらいいんじゃないでしょうか」とかなんとか言っていたら、環境省の予算案に残っちゃったりしました(笑)。結局、財務省で切り捨てられましたけどね。新しいことを2年生くらいから考えるDNAは国家公務員の誇るべき部分だと思います。

環境省時代 2年目に発案したビッグプロジェクトに参加

加藤:実際に若手の時に動かすことのできたプロジェクトはありましたか?
小紫市長:2年目の時に、「プリウスの税金を減免しよう」というビッグプロジェクトに入れてもらったんです。京都議定書が通った次の年で、トヨタなど自動車メーカーも環境に良い自動車の開発にものすごく力を入れていたし、不倶戴天の敵である環境庁と通産省が「環境にやさしい自動車を支援して国際的に流通させる」という目的に向かって、運輸省も巻き込んで協力体制を組んだことも話題になりました。
 自動車にかかる税金は、道路を造る特定財源であり、ビタ1文まけてもらえない「聖域」だったんです。いろいろ経緯はありましたが、そこに穴をあけた経験は、現在ハイブリッド自動車が当たり前に走っている光景を改めて見るとき、感慨深いものがあります。
 この時に僕は「社会の課題を見つけて考えること」、それを解決するために「いろんな人を巻きこみながら行動すること」って面白いと気がついたんです。スイッチが入ったんですね。国家公務員は現場や国民のニーズに合っていなければ、法律そのものも改正できますし、税や予算、広報などいろんなツールを持っています。「武器はあるやろ、ちゃんと使え」ということです。

10年目で若手といわれている自治体職員に驚いた

小紫市長:生駒市に来て、衝撃的だったのが、10年目くらいの職員が「若手」って言われていたこと(笑)。政策を創る方法を学ぶ研修の対象は、なんと入庁15年目ですよ。それまでは政策を創らなくてよいということなのか、と。
 市町村は、生活保護や税、戸籍業務など、ミスの許されないルーティンを確実に実行していく使命があり、市民との接点の中での気苦労も数知れない。警報が出るたびに休みの日でも真夜中でも駆けつける、24時間365日体制です。「現場」を熟知していることが、中央政府に対する強みでもあると思っています。
 ただ、これからは俯瞰的な視野を持ち、地域に必要な制度を自ら作っていくことで、地方創生を実現していくことも意識していかなければならない。大変ですが、それこそが市町村職員のやりがいなんだと思っています。
加藤:地域や価値観が多様化し、細かな対応が求めらる時代です。だからこそ、地域課題の現場にいる自治体への、責任と期待が高まっているのだと思います。

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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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