著者が語る『公務員の人前で話す技術――あがらずに話せる全ノウハウ』（鳥谷朝代）

みなさん、はじめまして。

一般社団法人あがり症克服協会　代表理事の鳥谷朝代と申します。

このたび、17冊目の著書『公務員の人前で話す技術――あがらずに話せる全ノウハウ』を上梓いたしました。

私の現在の本業は、あがり症状に悩む経営者や士業、ビジネスマン、公務員向けの講座や研修の企画・運営であり、年間300回以上のセミナーに登壇し、これまで7万人以上の人々のあがり克服のお手伝いをしてきました。

弊社あがり症克服協会の受講生で最も多い職業は公務員です。
多いときは、受講生の過半数が公務員というときもあります。

議員や副市長などの特別職や、学校長や園長先生など教職員も多く通われています。

今回、なぜ私が本書を執筆する機会をいただけたのか。
それは、私自身が20年前まで、「超あがり症で、まったく使えない公務員」だったからです。

1　消極的な理由で選んだ公務員という職業

私は、消去法で公務員という職を選択しました。

中学1年のとき、国語の授業で本読みをあてられ、緊張で声がうわずり出なくなったことがきっかけで、重度のあがり症になりました。

以降、中学・高校の6年間は、発表や板書もできなくなってしまい、あたるとわかっている日は仮病を使って保健室に逃げ込むようになってしまいました。

進路を決める際、もうこれ以上、人前で発表することは難しいという理由で大学進学を断念。
就職先を探しているなかで、学校の先生に公務員を勧められ、言われるままに受験し、地元である愛知県庁と名古屋市役所に合格、1990年に名古屋市に入庁しました。

高い志があったわけではなく、「ただ人前から逃げた結果」、公務員になったのです。

入庁後、最初の2年間は、区役所の窓口業務だったので、人前で話すことはそれほどなかったのですが、入庁して2年後に本庁の秘書課に異動になり、状況が一変しました。
庁内だけでなく、政財界のトップやマスコミの応対に追われる日々。
電話が鳴るたびにビクビクし、市長に報告、説明する際には声がうわずるようになりました。

その後、教育委員会や市会事務局に異動しましたが、あがり症状は悪化。
研修や会議の進行が回ってくるたびに、仮病を使って休み、周りに迷惑をかけ続けました。
こんな自分が情けなくて、毎日、「いつ退職しよう」そればかり考えていました。
市職員時代の14年間は、今思い出しても胸が苦しくなるぐらい、つらく苦しい時期でした。

２　本書の特徴

そんな私が、今は人前で話すことを生業としているわけですが、まずお伝えしたいのは、「人前で話すのが上手下手は、生まれつきでも性格でもなく、スキルである」ということ。

「話す」＝「声を出す」ことなので、スポーツと同じ、基礎的な発声トレーニングを行うことで大きく改善します。

その他、本書では基本的なスピーチのテクニックをわかりやすくまとめており、あらゆる部署、役職、立場でもご活用いただけると思います。

さらに、本書の最大の特徴は、3章の「シチュエーション別！人前でうまく話すコツ」にて、朝礼、会議、レク、住民説明会、記者会見、議会答弁など、公務員が直面するありとあらゆる人前シチュエーションを網羅していることです。

私は長年、秘書課や議会、広報にいたので、首長レクや議会答弁、記者会見のシーンは幾度となく見てきました。

また、教育委員会では研修担当だったので、会議や研修の進行を担当することもたびたびありました。

公務員時代の実務経験と、セミナー講師歴20年のノウハウを織り交ぜ、解説させていただいています。

また、あがり症克服の専門家として、４～５章の緊張緩和術には定評があります。
7万人を克服させてきたメソッドをぎゅっと詰め込んでいます。

3　「超あがり症で使えない」公務員だったからこそ、皆様へ伝えたいこと

ある生徒さんにこんなことを言われました。

「先生はきっと、何万人ものあがり症の人を救うために生まれ、そのために自らが誰よりも強烈なあがり体験をされたのでしょうね。」

14年間の公務員人生のほとんどを、マイナスな感情で過ごしてしまいましたが、そんな時代があったからこそ、本書を書く機会をいただけた。

今は、「あがり症の公務員で本当によかった」と心から思います。

公務員向けに人前で話す技法を説いた書籍はこれまで１冊もないそうです。
会議や研修、住民説明会や記者会見、議会等、大勢の人前で話す場面が多いのに、類書がないとは意外ですが、これまで書く人がいなかった＝私にしか書けない本だったと思っています。

スピーチの基本から緊張緩和術までを完全網羅した、「元あがり症公務員による話し方本」、読者の皆様のお悩み解消の一助になれれば幸いです。