(PR) 学びと人脈が自宅で手に入る。全国で300名以上が参加する、地方公務員オンラインサロンの詳細はコチラ

sim2030-1

HOLG編集室

福岡市役所スター職員が休日に九州大学で行なった、「講義とゲーム」が残すもの

10月15日の土曜日の午後、九州大学21世紀プログラムの学生に向けて、福岡市役所勤務の今村寛さんが「出張財政出前講座」と「財政シミュレーションゲーム"SIMふくおか2030"」を行なった。このふたつは、今村さんが普段から地方自治体職員向けに行なっているもので、「出張財政出前講座」では実際の福岡市の財政の状況を例に地方自治体の財政状況の厳しさを学び、「SIMふくおか2030」では、厳しい市役所の立場を疑似体験してその難しさを腹落ちしてもらうというプログラムだ。大人気のプラグラムで、全国各地からの出前の依頼が止まらないのである。
今回、学生へ向けての講義の目的は「対話を使った学びの可能性、"人がわざわざ集まる意味"について実践的に考察する」であったが、今村さんの行う「SIMふくおか2030」が役立つのではないかということで打診があり、この講義を行う運びになったという。
講義はまず、「出張財政出前講座」のスライドの説明が1時間程あり、その後3時間程度かけて「SIMふくおか2030」が行われた。
「出張財政出前講座」の内容は地方自治体の歳入と歳出、そしてその内訳など難しい部分も多かったが、大きなメッセージである「地方自治体の財政が厳しい」という内容は伝わっていたように見えた。そして、メインである「SIMふくおか2030」に続いた。sim2030-4
ゲームの大まかな流れは下記の通りである。
①6人1組のグループとなり、各参加者が市役所の様々な局長(≒民間の執行役員に近い)となる
②向こう5年間の予算編成案を、解決すべき問題の理由と併せて定める
-例)社会保障費増のため予算捻出が必要となる。どの事業を廃止するor借金をするのか
-例)渋滞の解決のため具体的な投資を実行するかどうか、する場合はどの事業を廃止するのかor借金をするのか
③"②"で定めた内容を、議会に説明し可決or否決を問う
④"②③"を繰り返す
⑤市のセールスとなる強みをまとめ、キャッチコピーを創る
このプロセスの中で各グループは市役所の立場として、議会で予算を通すことを経験する一方、他のグループが予算を通す際には逆に自分達が議会として市役所に対する指摘を行う。本格的である。
sim2030-5
今村さんは、元々熊本県庁職員が作った「SIM熊本2030」をカスタマイズして地方自治体職員向けに「SIMふくおか2030」を創った。自身が自治体全体の予算案をとりまとめる財政局にいる時に、財政局と事業を行う各局が理解し合えるにはどうしたら良いかと考えてのことだ。そして、今ではそこに更なる独自の視点が加わっている。例えば、ゲーム最後の工程の「市のセールスとなる強みをまとめ、キャッチコピーを創る」というものは「SIMふくおか2030」独自の試みだ。ここには財政を気にして予算を捻出する中で、「目先の予算にばかり囚われ大局観を忘れてはいないか」という牽制の意が込められている。
sim2030-6

学生たちは何を感じたのだろうか、ゲーム終了後に振り返りを行なった。「お金が無いから、事業を減らさなければならない。事業を減らすには説明責任がいるから難しい。」、「ゲームだから簡単に事業を切れるけど現実だとしたら簡単には切れない。」、「コストカット、税収増施策、社会保障費の投資バランスが難しい。」、「早い段階で優先順位の低い事業を削減し、コストを捻出ができた。」などというコメントがあった。さっきまで行政とは何ぞやと講義を受けていた彼らから出てくる言葉には既に、地方自治体の財政問題が当たり前のものとして認知されているのには驚きを隠せない。もちろん彼らがそもそも優秀な学生なのだと思うが、この3時間のゲームで地方自治体の難しさを体験してもらったことがきっかけになって引き出した言葉であることは間違いのない事実だ。
冒頭に書いた通り、講義の目的は「対話を使った学びの可能性、"人がわざわざ集まる意味"について実践的に考察する」であった。地方自治体は仕事の中で対話を多く求められる。「SIMふくおか2030」の中で自治体職員を演じて対話を実践することができた若者は、それぞれ対話について学びを得たと思う。それに加えて、私がとても素敵だと感じたことは、この講義を受けた学生たちが自治体に対して安易な批判をすることは今後も含めてなくなるだろうし、むしろ、市の強力なフォロワーにすらなる可能性があるということだ。やみくもに自分の立場だけで批判をすることは簡単だが、それは対話ではない。そんなことが伝わっていたとしたら、福岡市のスター職員が費やした休日の午後には大きな価値が宿る。こうして、地方自治体と市民が協力して未来を描く素地ができていくのだろう。

今村寛さんの「財政出前講座×SIM」予定が下記の通り開催されます。自治体職員でない方でも参加出来るものも多くあります。詳細はリンクよりご確認ください。
財政出前講座×sim福岡2030 in もばら(2016年10月28日)
財政出前講座 + Simふくおか2030体験会 in 高崎(2016年10月29日)
Sim2030 in 知多 ~対話でつくーる全体最適のまち~(2016年11月26日)

加藤年紀
株式会社ネクスト(2120)に2007年4月に新卒入社し、以降、不動産ウェブサイト「HOME'S」の営業グループMgr、マーケティンググループMgr等に従事、短期及び中期の経営計画策定等を行う。2012年5月に株式会社ネクストのインドネシア子会社、PT.Lifull Media Indonesia(当時PT.Rumah Media)のCOO/取締役として従事し、会社立ち上げから4年半ジャカルタに駐在。2016年9月末に同社退社。

-HOLG編集室

© 2020 Heroes of Local Government , All Rights Reserved.