2月下旬、東京・日本橋の江戸料理「奈美路や」さんを舞台に、「江戸料理体験セミナーin日本橋」が開催され参加した。
この事業は、関東運輸局が2022年から始めた「江戸街道プロジェクト」の一環である。江戸街道プロジェクトとは、徳川家康が江戸と全国各地を結ぶ街道として整備した、いわゆる五街道と脇往還などを「江戸街道」という統一テーマをもとにブランディングし、広域関東圏(1都10県)の魅力づくりと地域活性化につなげようというものである。
江戸街道には、江戸時代から今日に至る、実にさまざまな資源が眠るが、本事業では「食(江戸料理)」と「泊」の2つの重点プロジェクトに集約して展開しようというものである。「泊」は意外かもしれないが、1635(寛永12)年、3代将軍徳川家光の時代に制度化された参勤交代を機に宿場には、本陣・脇本陣をはじめ、多くの宿が用意された。大大名になるとその行列は1千人をはるかに超え、3千人から4千人に達することもあった。本陣・脇本陣だけではとても賄えず、多くは宿場内の民家などでの分散型の宿泊となった。
分散型宿泊と言えば、今ではイタリア発祥のアルベルゴディフューゾが人気だが、江戸時代の参勤交代がまさにこの先鞭ともなっていた。
話をもとに戻して、当日のセミナーのテーマは、その一つ「江戸料理」である。
「江戸料理」とは、簡単に言えば「江戸時代に江戸の地で発達し、またその流れをくむ東京の郷土料理」である。蕎麦、天ぷら、江戸前鮨、刺身、鰻、あなご、どぜう、田楽などなど現在私たちが口にするさまざまな和食のルーツである。
当日は江戸料理研究家で大塚「なべ家」の元主人の福田浩さん、江戸東京・伝統野菜研究会代表の大竹道茂さん、料理研究家で大きな竈主宰の冬木れいさんという錚々たる方々にお集まりいただいた。文化庁100年フードなどに関わらせていただいているご縁で、私もコーディネーターとして参加させていただいた。
セミナーでは、日光街道の旧千住宿にある地元料理「和食板垣」さんで開発された千住宿江戸料理のメニュー開発の事例や、江戸東京野菜の保存と再生の事例などが紹介され、セミナー終了後は、会場となった「奈美路や」さんが提供する「江戸料理」を堪能させていただいた。
五街道や脇往還などの旧道は、そのほとんどが国道などとして整備され、また首都圏という開発の激しい地域ゆえに、宿場町の面影はもはや薄れつつある地域が多い。しかし、僅かに残ったエリアでも分散型宿泊の再整備と江戸料理の創作などによって、新たな地域再生・まちおこしは可能である。
江戸東京には、全国から集まった地方の食の在来種なども少なくない。これら食を媒介とした、東京と地方の新たな交流も期待できよう。
(観光未来プランナー 丁野 朗)
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