地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019を受賞された、元越前市役所の波多野翼さんが、2024年10月の衆議院議員選挙に福井1区から出馬した。同区で全国的な知名度を誇り、防衛大臣も務めたことのある稲田朋美さんを相手に惜敗率は81%(稲田朋美さん86,906票/波多野さんが70,328票)と健闘し、北陸信越ブロックで比例当選を果たす。
国家公務員から国会議員というケースは多いが、地方公務員からいきなり国会議員になるケースは珍しい。波多野さんに、「選挙に出たきっかけ」「国会議員として何をしていきたいか」を伺った。
公示日の8日前に出馬が決まる
───どのような経緯で選挙に出ることになったのでしょうか?
立憲民主党福井県総支部連合会(以下、立憲福井県連)が今回の衆議院議員選挙のために1年ほどずっと推していた候補者が、選挙2週間前に離党することになってしまいました。
───突然の離党ですね。その理由は何だったのでしょうか?
僕も直接的には知らない方ですが、新聞記事を見ると、「党への愛がなくなった」ということらしく、今回の衆院選には無所属では出馬されました。そこから立憲福井県連は、福井県内で大急ぎで候補者を探したそうです。
───不記載のあった自民党の稲田朋美さんの選挙区なので、立憲民主党としては。どうしても候補者を出したいですよね。
もちろんそうですが、普通、2週間前のタイミングでいきなり選挙に出ないですよね。期待をしていた方を含めてたくさん声をかけたけど、それでも難しかったそうです。そんな中、立憲福井県連の野田幹事長から10月4日(金)の夜に「どうや」と言われました。私も怖いじゃないですか。人生が変わる大きな決断ですが、その時はお酒の席だったので、「シラフの時に改めて話しましょう(笑)」と伝えました。
────その後、どうなりましたか?
翌日5日(土)の朝に電話がかかってきて、1時間半ぐらい時間をくれと言われたんです。そこでお話をした時に、 人生で一度あるかないかだと思ったんです。自治体で仕事をしていると、国のいろんな政策でいろんなことやらされたりとかもありますよね。それで、違う視点で行政を見られるのは面白そうだな、と。
────お子さんもいらっしゃいますよね?
こどもは、小学校6年生、4年生、6歳と3人いて・・・けど、やっぱりこんな機会は人生で1回しかないなと思って。市役所の仕事は辞めたとしても、行政の仕事なら、またどこかの役所で拾ってくれるんじゃないかとも思いました。で、「いつまでに返事したらいいんですか?」と聞いたら、明後日の7日(月)まで、と(笑)。
───短いですね。
自分としては、妻と尊敬する部長の二人に話をして、どちらかが反対したら断ろうと思いました。まず6日(日)に妻に話をすると、「全然想像つかない!しかも国政?」と言われました(笑)。それでも、「どうせ市役所をいつかは辞めると思っていた。もうやりたくなっているなら出ればいいんじゃない?」と後押ししてくれました。
こどももいるので「落ちた時どうするの?」というのは聞かれましたが、自治労福井の大嶋委員長から「もし、仕事がどうにも見つからないなら、どこか一緒に探してやる」とおっしゃっていただけたので、妻は理解をしてくれましたね。
───上司にはどのように話しましたか?
7日(月)の朝に部長に話したら「うん。わかった。お前の仕事は俺がやるで、辞めろ。元々、市役所じゃ窮屈な部分があったんじゃないか」、と言われました。そうなると、もう戻ることはできない。辞めるしかない状況になったな、と(笑)。
その日の夜に立憲福井県連の三田村代表、野田幹事長と話して、党の政策と自分の考えが大きくずれていないことを確認し、翌日の8日(火)に役所へ退職届を出しました。政治活動を始めるには辞令が必要でしたが、部長のサポートもあり、その日に辞令を出してもらえました。
───選挙にかかるお金の負担はありましたか?
国政だとある程度出るようで、供託金なども党が負担してくれました。だから、私の負担がなかったのはありがたかったです。
怒涛の選挙戦とまさかの当選
───選挙戦はどのように進んでいったのでしょうか?
退職した翌日の9日にポスターを撮影して、政見放送もすぐに撮影、翌日には制作ビラを作って、15日には選挙カーに乗っているようなスケジュールでした。公示日から3日後ぐらいの時に地元の新聞に「稲田・波多野競る」って出たんですよね。全国区の方を相手に、そんなことあるのかとびっくりしました。
その後は毎日、幹線道路の交差点に立って手を振って、そこで街頭演説していました。ただ、街頭演説をしても道路に止まって聞いてくれるわけじゃないですよね。だから、その様子をインスタで発信したり、チーム内で名前を連呼するよりも「『すごい公務員 波多野翼』で検索してください」って言ったほうがいいよね、となって、車上運動員の方にもそう言ってもらうことになりました。これは良かったと思います。
───どのような見立てで選挙にのぞみましたか?
自民党の不記載の話で風が吹いているので、10枠ある北陸信越ブロックで、立憲が前回の3から4に伸ばせるんじゃないか、と言われていたんです。だから、小選挙区で2番手になっても、当選する道があるという話でした。
でも、実際に開票日に速報を見ていると、立憲として比例の4枠目を取れない情勢で、もうダメだと思ったんです(笑)。それまでは、妻とも当選したら衣装は白がいいかなとか話していたのに、妻も負けたと思ったのか「風呂入るわー」とか言いだして(笑)。
でも、全く想定していなかったんですが、立憲の比例候補者の中で3枠目に滑り込み、比例で当選しました。予想外だったので、新聞に載ったバンザイの顔が暗いんです(笑)。
地方公務員の視点と経験を国に持ち込みたい
───今後、どのような活動を期待されていますか。また、地方公務員の経験を活かすことはできそうですか。
今回は風があって選挙に通っているので、党からまず求められていることは次の当選だと思います。一方で議員としての活動については、越前市役所での経験が活かせると思っています。現在、衆議院の委員会では文部科学委員会に入っていますが、学校や給食の話なども現場感覚を持ってお話しできるからです。
他にも、自治体職員の感覚でいうと、今回倍増されると言われる地方創生交付金を適切に使い切れるのか、単に繰り越しになったりしないかとか、そういうところも考えたいです。
非課税世帯への給付手続きも、全国の自治体職員にかかる負担は大きいですよね。地方で具体的に生じる課題をイメージできる国会議員さんって、そんなに多くないと感じているので、その声を届けていきたいと思います。
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