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【○○市 匿名A氏:第3話】「何だお前? 何しに来たんだよ?」というスタート

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「何だお前? 何しに来たんだよ?」というスタート

加藤:児童虐待の相談を受け、それを解決していく中で、一番の肝はどういうところでしょうか。
A氏:他の行政分野と児童虐待の分野で大きく違うこととして、他はサービスを受けるため、行政に申請に来る人たちが多いんです。なので、それをどこまで役所として認めていくかを詰めていく作業となりやすいんです。この場合どちらかというと行政側が受け手として判断をする立場になります。
一方、虐待はこちらから訪問しに行き、相手からすると「何だお前? 何しに来たんだよ?」みたいなところからスタートすることもあります。そこから育児やしつけの意識を少しでも変えていただくためには、結局はコミュニケーションスキルになってきてしまうんですよね。
それを『ただの会話』で終わらせてはいけなくて、会話のスキルが武器になって来る訳なんです。それについては、すごく助かることに△△県の児童相談所では市町村に対して、そういうスキルを習得するための研修を多くしてくださっているんです。
しかも、オフィシャルな研修に加えて、2か月に1回、夜に自主的な勉強会を開いてスキルを学びあう機会を設けてくれているので、それがすごく勉強になるんですよね。最近では近隣県からも、わざわざそこの勉強会に参加者が来たりするくらいです。
そういうスキルを身に着けることで、少しでも訪問をした時の成功確率を高めて、子どもの安全を図れるようにする必要があると思います。
加藤:確かに実際には、面と向かって会った時が勝負ですよね。そうすると、コミュニケーション能力の高い人を採用し育成するというのは、成果を出す上では大事なことのように思います。

教育から児童虐待を防ぐ

加藤:ちなみに個人スキルではなく、仕組みとして、もっと成果を上げられると思われることはありますか?
A氏:そうですね。話が大きくなってしまいますが、教育をしていくことで変えられる部分はあると思います。以前訪問した時に「『児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律が正式名称)』では、それは虐待にあたります」と説明した時に「そんなの誰が教えてくれたんだよ」と言われたことがあります。確かに、そもそもとして、そういう教育を受けてないから、「『法律で虐待はしてはいけない』と決まっています」と言っても理解が難しい部分もあるんです。
やはり教育が本当に大事で、殴ることでしか『しつけ』をすることができない方って、殴って問題行動が収まった時に起こっているしつけの本質が分かってなかったりするんです。しつけとして叩いて、その場は収まったとします。でも、それがなぜ収まったかって、必ずしも子どもが「悪いことをしちゃった」と反省したからではなくて、単に『叩かれたから、これ以上叩かれたくないから』止めた訳です。
それによって、力によるコミュニケーションを学習しちゃうんです。そうすると、例えばお子さんが友達の誰かに何かをお願いしたい時とかに、うまくいかないと力ずくによるコミュニケーションで物事を解決しようとしてしまいます。
そういう話をしっかり伝えさせていただく訳ですが、そういう話を言えるか言えないかではだいぶ説得力も違うと思うんですね。
加藤:確かにそうですね。

組織連携をして命の大切さを伝える

A氏:教育の面では最近形にできた事業がありました。児童虐待死亡事例はゼロ歳が多いと言いましたけど、自宅で生んでそのまま死体遺棄をしてしまうというリスクがあって、それは福祉としてはもう対応のしようがない訳です。というのも、こういう妊婦さんは母子手帳も申請せずに自宅でひっそりと出産してしまうので。
そうなると、やはり教育に求めていくしかないんじゃないかということで、今回、市の子どもに関わる部署の職員と、公立病院の小児科医師と助産師、教育委員会の先生たちで連携して、小学生を対象とした「いのちにかかわる授業プログラム」を作り、学校で行うこととなりました。
そこでは、まず命がどうやって大きく育っていくのかを話します。お母さんのお腹の中の胎児は、誰からも教わることなく自分で生まれて来るために成長しているんです。例えば、外に出て母乳を吸うための練習として、お腹の中で指をしゃぶったり、呼吸の練習として、あくびをしたりとか。
他にも羊水の中を綺麗にするために、自分で羊水を飲み込んで汚いものをお腹の中にストックさせておき、綺麗なものをおしっことして出します。ストックした汚いものは、自分が生まれてからウンチとして出すんです。
出産でお母さんの中から出て行く時も、とっても狭いところを頭が通るため、引っかからないように顎を体にくっつけて、そのまま何十時間ずっと同じ体勢でいたりするんです。そして、お母さんの骨盤の形というのは、最初は横が広くて、そして段々、縦が広くなるんですね。だから、赤ちゃんはクルクル回転しながら生まれて来るんですよ。そんなの当然、誰にも教わっていない訳じゃないですか。だから、子ども全員が命の天才なんですね。
しかも、「生まれた後もたくさんのスキンシップで愛情を持って接してもらえたから、ここまで大きくなったんだよ」と、命の大切さを伝える授業を今年度から始めることができました。

違う組織が同じ方向性を向いて、一緒にできることを進めた

A氏:行政組織としては縦割りであっても、同じ方向性を向くメリットがそれぞれあるんです。病院から見ると、赤ちゃんにも母体にもリスクがあるから、飛び込み出産をなくしたい。市の子どもに関わる部署は児童虐待をなくしたい。教育委員会は子どもたちに命の大切さを伝えたい。「じゃあ、一緒になってできることを考えていこうよ」ということでミーティングをして動き出せたんです。
加藤:それは、大きなお金が掛かることではないですよね。
A氏:お金として意識する必要があるのは人件費くらいですね。
加藤:お金をかけずに人を結びつけていくというのは、これからの自治体にとってすごく望まれている気がします。
A氏:そう思いますよ。だから、そういうモデル事業として役所の中でいろいろなことをしたいとは思っていますね。

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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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