塩田の跡地を 瀬戸内市が0円で購入
加藤:話は変わりますが、副市長に就任された後に、メガソーラー事業(太陽光発電)を進めました。これは、どういうものだったのでしょうか。
桑原氏:瀬戸内市に約500haの敷地面積の錦海塩田跡地というのがあって、そこでメガソーラー事業を進めたんです。
加藤:大きいですね。
桑原氏:昔は国策で塩を作っていたのが、科学製法に切り替えることで塩田が不要な時代となったんです。結果として、1971年の頃から塩田の稼働が止まり、運営会社が2009年に倒産してしまいました。
塩田で塩を作るには、その土地に塩水を入れなくちゃいけなかった。だから、塩水をすぐに呼び込める状態にしていたのですが、当然その塩水をポンプで排水しなければいけない。もともとは、塩田の運営会社が年間1000万円くらいの電気代とメンテナンスコストをかけて、かき出していたわけです。ただし、会社が潰れてしまった後は、市民の安心安全確保のために市の予算でかき出したわけですよね。
当時、住民としては安全面を気にしていたわけです。台風なんかの時にはその土地が漬かってしまうし、メンテナンスがされない堤防もいつまで持つかわからない。そういう状態だったので、利用用途を考えずに安全の観点から、まず瀬戸内市が土地を買ったんですよ。土地の算定価格上は、0円ということでした。
電力自由化にチャンスを感じた
桑原氏:もともと、塩田跡地をどうするべきかという話は常にあったそうです。ところが、先人が英知を結集してもこれといった決め手がない。不確実性の高い現代では無理からぬことです。そうこうしているうちに、電力自由化の話が出て来て、これは「メガソーラーではないか」と道が見えてきました。瀬戸内市はまさに瀬戸内海気候で雨も降らないし、太陽光もふんだんにあるので、事業としてはとても利回りが良いんじゃないかと。
そこで、メガソーラー事業の検討を庁内で進め始めました。これだけでかい事業なので、ビッシリ要綱を作ってコンペをやりました。職員も相当頑張って、準備をしてくれました。
土地の賃料で 100億円を見込む
加藤:どういう事業スキームだったのでしょうか。
桑原氏:電力自由化の波が来る中、瀬戸内市は発電事業を手がけたい事業者に土地を貸し、そこに投資を行ってもらうように動きました。現状では平成2038年までに、合計約100億円の賃料を見込めています。
加藤:すごい。跡地を利用して、100億円の賃料を得るというのは非常に大きいですね。
桑原氏:はい。ただ、悩ましいのは、歳入が増えても交付税は削られちゃうんで、直接的に瀬戸内市の財政が改善し、住民のために目に見えるものになるとまでは言えなかったですね。
加藤:ただ、そうやって各自治体の財政状況が改善することで、国を含めた日本全体における税金の運用状況が改善されるわけなので、とても価値のあることだと思います。
職員が民間人と同じ目線で働くことができた
加藤:メガソーラー事業を進めていくうえで、大変だったことはなんでしょうか。
桑原氏:これが全てと言ってもいいかもしれないですけど、電気の買取価格が1キロワット時42円の応募の締切りに滑り込まないと、規模が大きいだけに何百億単位で採算が変わってくるわけですよ。それに間に合わせるために、市の職員は死ぬほど残業していましたね(苦笑)。
加藤:チームの人数は何人ぐらいだったのですか?
桑原氏:錦海塩田特別チームっていうのがあって、そこには課長がいて、係長がいて、あと3人いたかな。1人県から出向の人がいて、彼が相当やってくれましたね。岡山県は『晴れの国』と言っているので、メガソーラーを進めていたんですね。県の方も「失敗はできん!」と言って、人が来てくれました。
加藤:なるほど。民間企業と採算を考えて進めるというのは、普段なかなか得られない経験ですね。
桑原氏:そうなんです。しっかり、プロジェクトとして進めたので、自信になったと思います。職員は700人ぐらいいたのですが、そういう機会をもっと与えてあげたかったですね。役所は民間と交流することに対して、おっかなびっくりなところがあったので、その免疫ができたことは良かったです。当然、民間から知恵も得られるし、民間と一緒にやっていくには勉強もしなければならないので、得難い経験になったと思います。
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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 三菱総研を辞め 公募を通じて副市長となる
第2話 副市長として進めた 時間管理と人事制度改革
第3話 塩田跡地を活用し 100億円の賃料を見込む
第4話 『サラリーマン』→『副市長』→『社長』
第5話 力のある自治体職員には 外に飛び出してほしい