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コラム

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インターネットリテラシと地方自治体

先日、安倍総理が熊本で演説をした内容が、首相官邸の公式サイトに全文掲載されていた。
▼一億総活躍・地方創生全国大会in九州 安倍総理講演
https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0727chiho_kyushu.html
この演説では、熊本県での演説なので「復興」についてはもちろんのこと、少子高齢化や一次産業の衰退、同一労働同一賃金、福祉制度、観光業の行く末など、様々なテーマについて触れられている。
今まさに日本が抱える課題のあくまで一部ではあるが、ただし明確に課題であることについて明記されているので、もし自分自身が何か使命感や課題感の欠如を感じて悶々としている人がいるならば、この中から一番気持ちが揺さぶられることについて取り組んでみては良いのではと思う。

インターネットメディアの登場による情報発信の多様化

ところで私はこの「全文掲載」というものが好きだ。インターネットは、表現領域に限りがないことが一つの特性になっているが、一方でテレビや新聞は尺や面積に制限があるため、どうしても編集されてしまう。「別にそれでも良い」と言う人もいるだろうが、そこに何らかの意図が込められてしまうことが往々にして起きているとするならば、インターネットメディアの登場によって、全文が手軽に見られるようになってきているのはとても喜ばしいことだ。
かつての「tsudaる」という言葉を生んだ津田大輔氏によるライブ書き起こしtweetや、「ログミー」という講演内容の書き起こしメディアに見られるように、情報操作が比較的されていないものに対するニーズは少なからずある。余談だが、メディアと度々衝突していた橋下徹氏が、とある新聞メディアに編集の仕方について不満をぶつけたところ、そのメディアは編集をせずに全文掲載する羽目になったこともあったが、あれは痛快だった。
少し毛色は異なるが、「ほぼ日刊イトイ新聞」のインタビュー記事も非常に心地が良い。話し手の雰囲気や言葉尻を端折ることなく、この言葉は漢字ではなく平仮名の方が正しくニュアンスが伝わると言う部分では、平仮名を使う。こういった機微を察するようなところから、できるだけ真実を伝えようとしている姿勢が感じられる。
「世界価値観調査」という、世界80ヶ国で実施されているという意識調査によれば、日本は新聞・雑誌・テレビメディアという所謂マスメディアに対する信頼度が非常に高いという。例えばアメリカやオーストラリアなどは「信頼していない人」の方が大多数というから、それはそれでメディアがどんな情報を流しているのだろうという気にもなるが、「情報の処理は自己責任」という文化が結果に反映されているのかもしれない。この考えは、日本においてでも、今の時代を生きていくためには非常に重要なポイントだと思う。先の東京都知事選挙でも、有力候補者に対する称賛と批判の記事がインターネット上に溢れた。玉石混交と言えるような膨大な情報の中においても、それを自分なりに取捨選択する術を身に着けていることが今まで以上に正しい判断を導く力となる。何故なら、インターネットメディアは即時性・多様性において新聞やテレビのそれを上回るからだ。

地方自治体とインターネット

日本は地方でもインターネットに繋がりやすいという点においては、非常に恵まれた環境である。これにより、地方でもインターネットを使ったイノベーションは起こし易いと言える。ただそれでも、そこにいる人たち大多数のインターネットリテラシが低いとなれば、その環境を活かすことはできない。かといって、いまから数年・数10年待って、インターネットに慣れ親しんだ「デジタルネイティブ世代」が社会を動かす時代になるのを待つのはナンセンスだ。
何故なら既に地方自治体がインターネットに対して積極的に向き合おうとしている事例は多くある。例えば、IT関連ベンチャー企業のサテライトオフィス誘致といえば、徳島県神山町が有名だ。「Tokushima Working styles」を見ればわかるように、山間部にも関わらず高速インターネットが整備されたこの美しい田舎には、多くのIT企業がサテライトオフィスを開設している。これは地方にITという特性を活かして、企業を取り込む一つの好例と言える。
企業の誘致ではなく、個であるIT人材を直接誘致するという手段もある。鹿児島県奄美市では「フリーランスが最も働きやすい島化計画」と銘打ち、クラウドソーシング大手の「ランサーズ」と共にIT人材を育てたり、移住を促進したりする活動を行っている。「奄美大島で組織に縛られずに稼げる」となれば、心動かされる人がいるのも想像に難くない。これからの時代は個人が輝きやすくなるので、これは時代の流れに沿った動きだと言える。
ありとあらゆるものがインターネットに繋がるという「IoT時代」、あるいはコンピューターが人間を超えるシンギュラリティの時代には、まさにインフラが如く意識せずにインターネットを使っていることだろうと思う。その頃にはもう、インターネットリテラシというものは語られることすらなくなっているかも知れない。地方自治体は、その大きな波に乗るにはどうすべきか、あるいは波そのものを起こすことは出来ないか、そして、そもそもその波が住民に何をもたらすのか。そういったことを地域住民、地方自治体、民間企業が一体となって議論を戦わせる状況になったらどんなに素晴らしいことかと思う。

小野寺将人
湘南在住。不動産情報ウェブサイト運営会社、お出かけ情報ウェブサイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイト運営会社にて企画職に従事。

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