コラム

地方自治体職員とともに歩みたい、ある民間人の独り言 Vol.5-古田智子

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【古田智子氏 経歴】
慶應義塾大学文学部卒。株式会社LGブレイクスルー代表取締役。地方自治体との官民連携事業にコンサルタントとして25年携わる。地方自治体職員の人材育成も手がけ、指導した職員数は20,000人を超える。和光市市庁舎にぎわいプラン専門検討委員会副委員長。著書に「地方自治体に営業に行こう!」(実業之日本社)がある。

幸せな官民連携を目指そう
〜自治体初心者企業の取り扱い説明書〜

官民連携のボトルネックは意外なところに

 地方自治体と民間企業が地域の課題感を共有し、ともに課題解決に取り組む官民連携。自治体職員と民間企業が交流したり課題を共有するワークショップなどのイベントが随所で開かれるようになりました。我が国の将来にとって大変有意義な動きだと期待が高まります。
 さて、官民連携の実務の現場のお話です。プロジェクトを効果的に進めるために一番重要なこととは何でしょうか。
 それは、プロジェクトの新規性や優れた建てつけ以前に自治体と民間双方がお互いを正しく理解しコミュニケーションが取れていること。一緒に連携するプロジェクトがいかに地域にとって素晴らしいものであっても、ここができていないと進行に支障が出てくることがよくあります。官民連携がうまくいかない理由としては予算の仕組みとスピード感が挙げられたりしていますが、実はそれ以前のコミュニケーションの問題、それも自治体職員の皆さんが想像だにしないところでつまづいていることが多々あるのです。

 そのコミュニケーションの問題とは、「民間企業が自治体職員を思わぬ部分で誤解してしまう」こと。
 特に官民連携の経験がない・浅い民間企業にこうした傾向が顕著です。
 今回のコラムでは、自治体の皆さんからは見えにくい民間が誤解してしまうポイントをお伝えします。民間企業への理解を深めて一緒に何か取り組むときのコミュニケーションにお役立てください。

官民連携初心者の民間企業はこんなことで自治体職員を誤解する

 筆者の元には、自治体と仕事でのお付き合いの経験がない、あるいは浅い民間企業から自治体職員の皆さんへの不満や不信のエピソードが毎日のように寄せられます。
 その内容たるや、皆さんにとって「ありえない」というレベルの意外なものばかり。
 実は思いもよらないところで、多くの民間企業は自治体職員を誤解してしまうのです。
 もちろんすでに皆さんの周りで継続的に仕事をしている意識の高い民間企業の方からすると、そんなバカなと一笑に伏す内容です。
 でも、国内の民間企業が何百万社あるか考えてみてください。
 自治体を理解しパートナーとして仕事をしている企業は、全体の企業数の中のごく少数。少数どころか広大な砂漠の中の砂つぶに等しく、それ以外の企業は全く地方自治体や自治体職員との仕事は未知の世界。むしろ理解されない、誤解されることが前提、と考えてもいいかもしれません。
 そしてその誤解は、地方創生の追い風に乗り新たなソリューションをひっさげて登場した経験の浅い民間企業ほど誤解と真実の振れ幅が大きい傾向にあります。

 筆者にとってはこんな馬鹿げたことで皆さんが誤解されてしまうのは耐え難く、口角泡を飛ばして理由を説明すると「え!そうなんですか!」と驚愕の末納得する。この繰り返しです。
 では、どんな局面で民間企業は皆さんを誤解してしまうのでしょうか。筆者の元に寄せられる官民連携初心者企業の誤解ポイントの中から、非常によく耳にする代表的な局面をシェアいたしましょう。誤解の原因系で2つに分けると以下のようになります。

1.自治体と民間の常識の違い系
まずは、自治体にとって当たり前なのに民間企業にとって当たり前でない、些細なことから。

・総合案内所に話が通っていない。
・会議室に案内してもらえない。
・名刺交換してもらえない。
・商談時にお茶が出ない。
・課長が中間管理職にも関わらず上から目線だ。

 「え!そこ?」と驚かれたのではないでしょうか。
 まず、総合案内所。アポ先の事業所に行くと、まず総合案内所に申し出て先方に内線で連絡してもらうというフローが当然な民間担当者は、本庁舎を訪問すると1階の総合案内所にまっしぐら。応対する受付の方が怪訝そうな顔をしたり話が通っていないと「自治体は内部の連携が取れていない」と不信感を抱いたりします。
 会議室についても同様。訪問するなら場所はとっておいて当然という意識の彼らにとって、通されたのが職場のカウンターだったり空いている机の周りにパイプ椅子や丸椅子を集めて打ち合わせは「軽々に扱われている」「部屋もとっていないなんて段取りが悪い(職員の能力が低い)」と受け止められてしまうことも。
 お名刺を持っていない職員の方が時々いるというのも、民間にとっての「当然」からは思いも寄らないこと。名刺を交換させてもらえなかったり初対面の職員から首から下げているネームカードだけ見せられて名乗られるのが衝撃です。彼らが受けてきた教育ではビジネスマナー的に「大変失礼」とされ「あなたとお付き合いする気は今もこれからもありません」という意思表示でもあるからです。
 ビジネスマナーの文脈ですと、お茶も同様。とある研修会社の担当者が「お茶も出さないということはすぐに帰れということか。ありえない。」ととても憤慨していたことを思い出します。
 極め付けが課長に対する認識。多くの初心者民間企業は、自治体の課長(所属長)のレベル感を理解していません。
 とある民間企業が主催するイベントで自治体を招待したところ、その自治体からは課長が参列しました。自治体にとっては誠意ある対応です。それに対する民間企業の受け止め方は「なぜ市長が来ないんだ。課長なんかよこしてやる気があるのか」という的外れなものでした。
 「課長 島耕作」がなぜブレイクしたのか。それは、民間企業の中での課長という職制のイメージ「上と下からのプレッシャーに右往左往する役に立たない存在」という印象を颯爽と覆したからです。
 こうした民間にとっての課長職の印象と自治体の課長の権限とのレベル感の違いが、こうした不幸な行き違いを招きます。

2.自治体にひれ伏す系
 次にご紹介する誤解は、名付けて自治体はお上で逆らえない存在という民間の思い込みからくるものです。

・お上なので何でも言うことを聞かなければならない
・断ると二度と仕事が来ないので無理な要望でも断れない
・頑張って協力していれば別の大きな仕事がもらえると思っていたのにいいことがない

 官民連携を進めていく上で実はこの3つの思い込みの二番目までが厄介です。なぜなら対等な立場で進めるべき民間企業側から建設的な意見が出てこず、肝心の相手が「イエスマン」になってしまうからです。この進め方だとこういうリスクがあるからこうしませんか、と思っていても口には出しにくい・出せないという謎のマインドブロックが民間側にかかっていたりするのです。せっかく地域課題の対応のために民間企業と一緒に頑張ろうと考えているみなさんにとって、こうした意識はちょっと困りますよね。
 特に要注意なのは、民間企業に対してボランタリーな取り組みや仕事を依頼するとき。
 「ぜひやらせてください」と快諾する笑顔のその裏には「ディール」という認識があります。ディールとは「取引」のこと。ちょっと無理でもここで引き受けておけば、こちらに仕事を回してもらう取引ができるだろう、という民間ビジネス上の目論見です。
 自治体側としてこれに応じることが困難なのはお分かりかと思います。予算の問題や事業者への公平性・公正性の確保という観点から、必ずしもその企業に「お世話になったお返しですよ」というような仕事を発注できるわけではありません。
 こうした地方公共行政の調達の決まりを、多くの官民連携初心者企業が理解していないのです。その結果起こるのが「自治体の仕事は利益が出ない」「自治体は上から目線で民間をこき使うだけ」という大変遺憾な受け止め方。これでは官民連携双方にとって何一ついいことはありません。

「知らせる」と「知る」はどちらが先か

 全く異なる組織文化を持つ同士が何か一緒にやろうとするときに、まず相手に自分たちのことを伝える・知らせる努力をします。でも、もし伝えたり知らせたことが、相手にとって知りたい情報ではない場合、そのギャップが必ず後々の仕事に思いも寄らないボトルネックとして姿をあらわすことも。筆者が地方自治体とのおつきあい初心者の企業に必ず伝えていることは、まさにこうしたところです。「知らせる」前に、「相手を知る」。これが官民連携を進める上で違いを理解し認め合うコミュニケーションの正しい順番なのではないでしょうか。
 今回は、民間企業が自治体に対して抱く誤解という視点でのお話でした。次の機会には、自治体にとって中長期的に付き合うのにふさわしいビジネスパートナーとして、民間企業のどこを見れば良いのか、その諸々についてお伝えできれば幸いです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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