本記事では、有料メルマガ「週刊寺本英仁@島根県邑南町/「巻き込む力」と「ビレッジプライド」の育て方」の一部(A級グルメ連合についてのストーリー)をご覧いただけます。なお、掲載するメルマガは約3か月前に配信した内容です。最新かつ、全文の閲覧を希望する場合はコチラからお申込みください。
【第8号の目次(2019年7月31日配信)】
1.近況ーー「香木の森公園」でグランピングを初企画しました
2.里山レストラン「香夢里」は立ち止まらない(8)
3.<A級グルメ連合>の仲間たち 都農町編(2)
4.著書の案内、質問募集!など
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3.<A級グルメ連合>の仲間たち 都農町編(2)
=志を同じくする5市町の取り組みを連載形式で紹介します!
都農町は来年100周年を迎えるにあたり、2つの新たな取り組みを始めようとしている。今回、都農町を訪れたのは、それを取材したかったからだ。
一つ目は、都農町のふるさと納税への取り組み。
都農町は、楽天で3年連続「ふるさと納税大賞」を受賞するほどの実力で、昨年ベースの納税額は約96億円に達する。
そしてもう一つが、ふるさと納税で集まったお金を町の人材育成に活用しようとする取り組みである。
一般財団法人「つの未来まちづくり推進機構」を立ち上げて、「医療を核とした保健、介護、福祉の連携」「産業振興・地域振興の推進」「教育、人材育成」などを実施する。「A級グルメ連合」の取り組みも、この財団が担当するらしい。
まずは、ふるさと納税から見ていこう。
その担当者が山本貴士さんだ。僕より若干若い彼の風貌は、まさに規格外である。トレンドの髪型に日に焼けた肌とお洒落な口髭、ラフな服装は公務員というより、ベンチャー起業の社長といった感じだ。
そんな彼がふるさと納税担当になったのは2015年。すでに案内するサイトは「ふるさとチョイス」が最大手で、大半のシェアを占めていた。
彼は新任の担当者になったとき、「ふるさとチョイス」を運営しているトラストバンクの主催するセミナーに参加したそうだ。
そこでは、当時「ふるさとチョイス」で成果を上げている各自治体の担当職員がパネルディスカションに登壇して、きらびやかな話をしていた。新任の山本さんは、ひたすら聞くだけだったらしい。
山本さんは感心しつつも「自分が登壇している職員と同じ取り組みをしても後発の取り組みになる。要は2番手なのである」と感じたようだ。
それでは面白くないと思ったから、当時、ふるさと納税事業を展開していなかった楽天に狙いを定め、楽天が事業展開開始すると同時に申し込んだ。
他人と同じことをするのが嫌いで、新たなものを作りたいという気持ちがそうさせたらしい。
そのチャレンジャー精神と他にない研究熱心さが功を奏し、その年の2015年度は7億円、2016年度は50億円、2017年度は79億円、2018年度は96億円と驚異的な寄付額を達成する。
96億円という数字はあまりにも大きすぎて、想像がつきにくいが、邑南町の年間予算額が約100億円だ。都農町のふるさと納税額とほぼ同額となる。
興味本位で「もともとの町の年間予算はいくらくらいですか?」と訪ねてみると、「50億円くらいかなー」と答えが帰ってきた。
現在、50億円にふるさと納税額が追加され約150億になっているのである。言葉にならない。50億の予算をふるさと納税で150億、約3倍まで膨らませたのだ!
返礼品の内訳を聞いてみると加工肉(牛・豚)3割、うなぎ2割、残り5割は都農ワインや果物や野菜その他諸々だそうだ。返礼品を納税額の3割とすると、約30億円もの農産物や加工品などを町内から返礼していることになる。
恐ろしいくらいの生産力のある自治体である。
ふるさと納税の返礼品で大活躍している町民の一人である、株式会社南国CBF代表の河野当将さんにインタビューしてみた。
当初、彼は町でカフェを営んでいたが、このふるさと納税の返礼品事業に参入し、返礼品のプレミアムポークが大ヒットして、現在は個人経営から会社を株式会社化した。
「都農町のふるさと納税に参加して人生は変わりましたか?」と聞くと彼は、「人生そのものが変わった感じは正直していません。ただ、売上や収入が増えたことで、責任の重さを感じるようになりました」と答えてくれた
なにはともあれ、若手の経営者がふるさと納税で育つということは、地方にとって大きな意味をもっている。
彼にはこれから、全国の納税された方が都農町にきたとき、プレミアムポークを食べられる飲食店を開いてもらいたいと思った。
この都農町のふるさと納税制度ではもう一つ、忘れてはならないことがある。若者や女性の大きな雇用の場となっている点だ。
もともとは役場内で山本さんを中心に、少人数の職員で納税の受け付け、返礼品の対応、商品開発を行っていた。納税額が年々増加するにつれ、臨時職員や嘱託職員を採用していたが、納税額がいくら上がっても、役場の規定で待遇や給与を決定することになるのでモチベーションの上がらない状況になっていく。
それを解決するために2019年4月、県外の企業に出資していただき都農町内に株式会社を起業した。ここでは若者や女性を中心に15名のスタッフが働いている。
この事務所に入ってみると、東京の六本木あたりにあるベンチャー起業のオフィスのようで、都農町にいること忘れてしまう。この趣味は山本氏のものだなと直感で思ったが、あえて聞くことはしなかった(笑)。
僕は、今年4月から商工観光課に異動し、ふるさと納税に関わることになったから、年下の山本さんから多くのことを学んでいる。
興味津々に話しを聞いていたら、時間があっという間に過ぎ18時を回っていた。
僕は「A級グルメ連合」で回っている自治体の原稿を出張中のホテルでまとめているため、いつも夜の懇親会はキャンセルさてもらっているのだが、アテンドをしてくれる猪股氏は西郷隆盛を彷彿させる九州男児だ。
夜の宴席は大好きなようで「寺本さん、酒は飲まなくても夕食は食べるでしょ」と軽妙に誘いかける(笑)。
僕は彼の誘惑に速攻で落ちてしまい、宴席に参加することになった。山本さんが隣町の川南町の鶏肉専門店を予約してくれたのだが実は僕は鶏肉が苦手なのだ。
かなり山本さんは自信を持っている店のようで「鶏肉が苦手なんだけど」とはとても言える環境下になく連れて行かれた。そして席に着くなり、前菜で鶏肉のレバーの刺身が登場した。(つづく)
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