インタビュー

【川崎市議 小田理恵子氏:第4話】議員の「これは私がやりました」は、ほとんど嘘

小田理恵子4

議員の「これは私がやりました」は、ほとんど嘘

加藤:議会と自治体は、良い関係を構築できていると思いますか。

小田氏:東京都議会を見ていて、知事が小池さんになってからいろいろありますけど、ニ元代表制の制度上、議会と首長の関係はバランスがとても難しくて、対立構造になると何も進まなくなってしまうんです。

 そうした議会では首長が議案を出すと、「あいつが出したから」という理由で「否決」となってしまう。かといって、小池さんがやっているような首長会派、与党会派みたいのを作って、「なんでも通そう」ってなると、議会の存在意義そのものがなくなってしまう。本来は牽制しあって是々非々で行くのが一番良いんだけど、それは口で言うほど簡単じゃない。

 議会がどういうスタンスを取っていくのかっていうことと、市民がそれを評価しない限りはなかなか関係性って変わっていかないです。ずっと仲が悪いままの議会もあれば、市長会派がなんでもスルーして通してしまうところもあります。

加藤:そうすると、議員さんが選挙で「これをやります」とかを言うだけじゃなく、具体的に「行政とどう実現していくのか」を話していく。そして、市民がその議員の動き方を知ることができたら、選挙における判断も変わってくるのでしょうか。

小田氏:あると思います。正直、「これは私がやりました」って言っている人は嘘だから(笑)。それは冗談として、議員が何でもできるような雰囲気を出していても、現実に合議制である議会において議員1人でやれることなんて限られています。

加藤:基本的には議会の中でのステップを踏んでいるわけですもんね。

小田氏:例えば、議決事項であれば、議会の全員がやったことです。そして制度ができたあとに動くのは職員。現場では彼らが汗をかいて動いているわけですから、本当はみんなでやっているんです。

 地元では「議員としてどんな成果を出したのか言え」っていうプレッシャーもすごくあるので、正直、言わざるをえないところがあるのもわからなくもないですし、私もそうしています。ただ、言い過ぎている人はちょっと怪しいなと思った方がいい。
 全然やっていないのに「俺がやった」と喧伝する人がいるというのは、地方議会の中ではよく聞く話です。議員が政策実現にどういう形で関わったのかが、市民のから見て分かるようになっていくと良いのでしょうけれど。

報道が政局よりの話に寄っているが、本質はそこではない

加藤:少し話に出ましたが、最近、東京都議会の話がとても盛り上がっています。議会があれだけ注目を浴びることはなかなかないと思うんですが、どう見ていますか。

小田氏:私は昨今の選挙結果や政治状況からすると、住民は安定を望んでいると思っていましたので改革をこんなにも望まれていることにとても驚きました。小池さんにあれだけの人たちが期待をよせているということは、「現状にすごく不満を持っていた」ということですよね。

 私たち地方議員は「市民は現状の政治に不満を持っている」ということを突き詰めて考えないといけないだろうというのがいまの正直な感想です。豊洲の問題のように「悪い政治家を叩く」とか、そういう表面的な話ではなく、根本的には「どうあって欲しい」、「どうして欲しい」という「住民に望まれている改革とは何なのか」ということを腰を据えて考えなければ、住民の心はどんどん政治から遠ざかってしまう。

 あと、報道が政局よりの話に寄っちゃっていますが本質はそこじゃないと思っています。メディアも一緒になって悪そうな人を叩いて、「それが改革だ」ってなるのは良い結果をもたらさないと思いますね。

東京都と隣接していることは大変

加藤:いろいろな方の話を聞いていると、規模感の違う東京と政策などを比較することは少ないと感じているのですが。同じような規模の政令市とかを参考にされるんですか。

小田氏:隣接する世田谷区や大田区など特別区なので、政令市である川崎市とは制度や権限が全然違うんです。やっぱり持っている仕事の範囲が同じところと見ていくのが一番わかりやすいですから政令市間での比較分析が基本になります。

 ただ、住民は自分の住んでいる市とその周辺自治体との比較で評価しますよね。川崎市は東京都とも隣接しているため子育て環境のことなどで「世田谷はこうなのに」などと言われちゃうわけです。仮に「世田谷はお金持ち東京都のセレブの区なんだよ」と説明しても、「そんなの知らないよ」ってことになりますから日々の生活に関連した政策課題については、隣接自治体との比較分析は不可欠です。

加藤:今回、私立高校の助成金について東京都が動いて、神奈川県、埼玉県とはかなり金額面に落差が出ました。隣接していたらやっぱり比較されますよね。

小田氏:正直言って、東京都がいろいろ政策を手厚くして、例えば、助成金上乗せしますなどと発表する度に、近隣の自治体の首長と議員は「ヤメテー。死ぬー!」ってなるんですよ(笑)。

 東京都はちょっと特別で、特別区間の財政調整機能というものがありまして、23区内のオフィス街や商業集積エリアで稼いだお金を、他の区に分配できるのです。だから川崎市と同じようなベッドタウンであっても23区は懐事情が全然違うのです。東京都は自分たちがすごいお金を持っていて、その中でやることで「周辺の自治体が死んじゃいます」っていうのをちょっとだけわかって欲しい(笑)。
 それは、本当に・・・、本当に大変なんです。東京都が提供する住民サービスのレベルにうちの市が全て合わせたとしたら財政破たん待ったなしです。23区に隣接する自治体はどこも同じ悩みを抱えていると思いますよ。

加藤:私は神奈川県民なのですが、東京に住んでいることもあったので、いろいろとやってくれることは良いことだと思うんですね。神奈川も十分大きいところだと思いますが、それでも東京都とは財源規模が違うことを、住民側が理解しなければいけないとは思います。これには政治・行政側の説明ももっと堂々とすれば良いと思いますし、住民側ももっと歩み寄る姿勢があるといいと思っています。

議会は緩やかに変わっているものの、議員の流動性は低い

加藤:川崎の市議を約6年間務められていて、議会の変化を感じられますか

小田氏:あんまりガラッと変わったことはないですが、緩やかに変わっているはずです。川崎市は議会改革検討委員会というものを開いて、その中で議会を良い方向に進めようと協議を続けています。例えば春から議会でタブレットを使い始めたりと、随時改善は進んでいると思います。

 ただ、議会の動きは政治状況と連動する部分もあるので、大阪や東京のような政治的な動きがないと、議会に劇的な変化が起こることは難しいと思っています。しかし、都民が小池知事を望んだように住民が今の政治状況を是としない以上、議会が自らを大改革するなどの今以上の変化をして行かざるを得ない部分もあると感じています。

加藤:川崎市は議員さんには、あまり流動性はないのでしょうか。

小田氏:そうですね。だから、私みたいな第3局と言われるような人間は、「いつか消えていくだろう」みたいな。ポッと出の扱いですね。

住民に対して思うことは「とにかく選挙に行って欲しい」

加藤:住民の方に対して、「こういうところを意識して欲しい」と思っているポイントはありますか。

小田氏:まずは選挙に行って欲しいです。それだけで、行政も議会も変わります。「あらゆる階層の人間が自分たちを見ている」と政治家に意識させるために一番効果があるのが投票率です。いま、地方議会の投票率は30%台とかもザラですから、とにかく投票に行って欲しいですね。

加藤:現状の投票率だと特定団体が支援すれば、それだけで選挙に勝っちゃうみたいなことが多分にありますもんね。

小田氏:そうなんです。そうすると、「その団体の人たちの便宜さえ図れば、自分は永遠に議員としてやっていける」などという人も出てきてしまう。だから、「選挙に行こう」っていうキャンペーン漫画とか描いてみたりして投票に行く人が増えるように動いています。

小田理恵子漫画5

※本インタビューは全6話です

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