インタビュー

【川崎市議 小田理恵子氏:第1話】漫画を通じて社会課題を楽しく知ってもらいたい

小田理恵子1
【小田理恵子氏の経歴】
長野県生まれ。長野県立伊那北高等学校、明治大学法学部卒業。 IT企業、コンサルティング会社を経て2005年より富士通株式会社に在籍、人事系のシステム企画、制度設計に従事。2011年に地方議員を志し同社退職。
 同年4月の川崎市議会議員選挙(幸区)にて初当選。現在、川崎市議会議員2期目として活動中。漫画でわかりやすく政治行政を伝えながら、住民を支えるべく奮闘されている。第10回マニフェスト大賞の「政策提言部門優秀賞」「審査委員会特別賞」を受賞。

-大手企業の会社員を辞め、選挙に出馬し川崎市議会議員となった小田理恵子氏。昔ながらの議員像とは異なり、職員と同じ目線でコミュニケーションを取ることを心がけ、地域の課題に向き合っている。
 議員としてどういった活動をしているのか? 議員の視点から行政をどう見ているのか? 行政に何を望むのか? 地方議会はどうあるべきか? 小田氏ならではの視点でさまざまな疑問に答えていただいた。

腹が立って選挙に出ると決めた

加藤(インタビューアー):よろしくお願い致します。最初の質問ですが、小田さんはなぜ会社員から政治の世界に飛び込もうと思われたのでしょうか。

小田氏:勢いです。いまでも「しまった!」と思っています(笑)。最後に働いていた会社では、さまざまな業種のお客さんの仕事のやり方や制度を改善する仕事をしていまして、そこで初めて自治体相手の仕事をしたことがきっかけです。

 ある自治体の行財政改革(組織や事務を見直し、経費節減および、効率性を向上させるとともに、行政サービスの質を向上させること)を行うため、その市の制度や仕事の進め方など聞き取りをしながら、かなり細かく見ていったのですが、民間とはあまりにも違うことに驚きました。民間をベースに自治体の評価をするのはあまり良いことだとは思っていないのですが、一言でいうとすごく非効率だと感じました。

 「なんで自治体はこんなに非効率なことをやっているのか」っていうのをいろいろ考えている中で、だんだんだんだんちょっと腹立っちゃったんです(笑)。その仕事をしていたのが2010年の夏くらいまでで、「地方議員になって私が変えてやるんだ」って思うようになりました。

 そうはいっても政令市とか都市部は「政党に所属してやっていくのが筋だろう」となんとなく思っていて、みんなの党の門を叩いたのが、9月くらいでした。それから、12月に公認をいただいて、1月に会社を辞めました。

 その間半年くらいでしたね。政治や行政の前提知識もないままに飛び込んじゃったんです。逆に言うと、知らないからやれた部分は大きいと思います。

選挙に出ると言ったら、同僚には腹を抱えて大爆笑された

加藤:周りの方の反応はどうだったんですか

小田氏:「私、会社辞めて選挙に出るんだ」って同僚に言ったら、腹抱えて大爆笑されました(笑)。普通はそう思われますよね。

「民間ではこうだ」と言わないように気をつけている

加藤:民間の時はどういう形で行政に関わられたのでしょうか。

小田氏:当時は世間からの公務員人件費削減のプレッシャーが強くなりつつある時期でして、私が手掛けたプロジェクトもその要請にこたえるため、行政のどの業務を削れるのかを調査し、業務プロセスを見直したうえで、業務の一部を外部にアウトソーシングして、その分の人件費を削減するという仕事でした。人件費削減と言っても公務員は辞めさせられないので、新規採用を抑えて緩やかに人員を減らしていくという気の長い話です。

加藤:なるほど。面白いですね。ただ、そこで「違和感があった」ということですね。

小田氏:そうなんですよ。プロジェクトの中では人事制度、報酬制度、社会保障などの処遇も全部チェックしていきました。あんまり言うと当時のクライアントの悪口になっちゃうのですけど、ざっくり言うと、民間の倍くらい待遇が良いんですよね。

 それでいて、「仕事のやり方は、ゆっくりしている」という、処遇と働き方のギャップがすごくありました。当時、私の担当するお客さんは製造業が多かったんですが、彼らはグローバルで戦っている人たちなんですよね。日本の製造業って経費を1円2円単位で切り詰めていくじゃないですか。そこと比べちゃうとどうしても「税金の無駄使いをしているよな」と感じてしまったわけです。

加藤:そうですね。

小田氏:民間と行政は成り立ちも目的も別物ですし、そこは職員からしたらあまり面白くない話だと思いますから、私もあまり「民間ではこうだ」と言わないように気をつけているのですが、どうしても引き合いに出してしまうことはあります。

小田理恵子2

多くの人に政治・行政を伝えるため、独学で漫画を描き始めた

加藤:議員さんになられてから漫画を書かれていますよね。それは多くの人に政治行政を知ってもらうことが狙いだったのでしょうか。

小田氏:私は政治の世界に全く接点のない、普通の会社員としての生活を十数年送ってきました。民間にいて普通に生きていると、政治の情報は全く入ってこないんですよ。こっちからわざわざ取りに行かないと入ってこないじゃないですか。だから、そういう人たちにどうやったら政治や行政を知ってもらえるのかを考えました。

 そして一つのやり方として、漫画だったら楽しく読んでくれて、少しずつ「あっ、行政とか政治ってこうなんだな」と興味を持ってくれるんじゃないかと思ったんです。そういう期待を込めて、ど素人なのに描いてみました(笑)。

加藤:実際に読んでみて、非常にわかりやすかったです。ただ、もともと漫画は描いていなかったですよね。スクールなどに通われて学んだんですか?

小田氏:いえ、自分で見よう見まねで、最初はコピー用紙の裏に4コマ漫画を描いてみるところから始めました。4コマの方が起承転結という型があるから、素人でも描きやすいかなと思ったのですが、いざ描いてみると、想像以上に難しかったです。

加藤:どういうところが難しいのでしょうか。

小田氏:一つのコマの中に入れられる文字数はそんなに多くないですから、短い文章の中に内容をぎゅっと圧縮するために、文字を極限まで削るのが一番大変です。改行の位置で読みやすさが変わるため、調整のために文字数のすくない単語に変えてみたり、漢字をひらがなに変えてみたりと、1文字2文字を長くしたり短くしたりするのも時間がかかります。

 あとは、画力の問題です。例えば、自転車に乗った人とか椅子に座った人の絵なんて、ど素人が「描け」って言われても全く描けないんですよ。だから最初は模写から始めたくらいです。それから、絵としては白黒の方が楽なのですが、色がないと「線だけでは何が描いてあるかわからないだろう」と思って、漫画はカラーにしました(笑)

社会課題を楽しい情報として伝えたい

加藤:通常の議員活動と別に、そういう「創作描写」の時間を取るのが大変だと思います。どういうモチベーションで続けているんでしょうか。

小田氏:確かに時間はかかります。最初の動機に立ち戻るのですが、やはり多くの方に政治や行政の実情を知って欲しいから続けています。

 これだけ世の中に情報が氾濫していると、『楽しいと思えない情報』をわざわざ見に行かないだろうとも思うのですよね。しかし、私たちが訴えたい内容は社会のこんな歪みがあるとか、こんな深刻な課題があるといった楽しくない話ばかりです。これは普通の人にとってはどちらかというと、つまらない、できれば避けて通りたい話なのではないでしょうか。

 だから、表現するうえで気を付けているのは、気軽に楽しんでもらいながらも『大事な課題だね』って思ってもらえるように、なるべく政治・行政の話を重たく、ネガティブにさせないということ、明るく笑えるような表現を取り入れることを心がけています。

小田理恵子漫画1

※本インタビューは全6話です

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