インタビュー

【奈良市長 仲川げん氏:第6話】直接採用した弁護士と公認会計士はひっぱりだこ

仲川げん TOP6話目

弁護士3名・公認会計士1名を直接採用している

加藤:今年の2月頃に、総務省から「職員の不正をなくしなさい」「首長が責任をとりなさい」という話もありました。そう言われる以前から、市長は専門家である弁護士や公認会計士を活用されたということですね。

仲川市長:そうですね。当初は外部の弁護士や会計士、コンプライアンスの専門家の力を借りていましたが、どんどん業務が増えるので、弁護士3名と公認会計士1名を思い切って直接採用しました。

専門家の直接採用は簡単ではなかった

仲川市長:ただ、弁護士は募集してから3年ぐらいは応募があまりなく、あっても採用につながらない。今は法曹人口も増えていますので、実務経験ゼロの人の応募も結構多いんですね。それだと実際の戦力になるにはなかなか厳しい。諦めずにしばらく募集を続けていた中で、ようやく3名を確保できました。3年間の任期付職員です。

 彼らは、いま庁内でひっぱりだこです。司法制度改革で弁護士が増えて、過当競争だとよく言われますが、一方で活躍できる現場も増えていることは注目に値すると思います。

公認会計士の応募は本当に少ない

加藤:弁護士の皆さん同様、会計士の方も任期付ですか。

仲川市長:そうですね。

加藤:会計士の方はいつ頃に採用されたんですか。

仲川市長:会計士は3年前からです。会計士もずっと募集していたのですが、全然応募がない。今来ていただいている方も、当初は3年の任期でしたが、大車輪の活躍なので任期を5年まで延長する予定です。これは実際に採用活動をするまではわからなかったのですが、弁護士は若い方なら割と応募があるのですが、会計士は本当に少ない。

仲川げん 6-2

行政での実務経験をもとに次の高みに登れる流れを作りたい

加藤:その理由は何だと考えていますか。

仲川市長:一旦、現場を離れたリタイヤ組の方ならともかく、現役バリバリの方からすると、常勤で働くには役所の給与ではやっぱり条件が合わないようです。本来ならば、3年ほど行政で実務経験を積んだ弁護士や公認会計士が、それをキャリアにして、次の高みに登って行けるような流れを作りたいですね。

外部の専門家の力が行政に必要な時代

仲川市長:いずれにせよ、これからの時代は、高い専門性を持つ外部人材の力が行政には必要だと痛感しています。よく「行政は法律に基づいて四角四面に運用するのは得意だけれども、柔軟な発想が苦手」と言われます。ところが意外に運用の基準が明確でなく、根拠法や原点を顧みずにやっている場面に出くわすことがあります。「毎年この基準で判断していたので」と、ついやってしまっていることもあります。

 そういう部分に対して、外部人材によるリーガルチェックや内部監査がかかれば、行政手続きや市民サービスの精度や質が上がるだけでなく、職員の能力も高まると期待しています。

住民にお願いしている『ひとつひとつ』のことに意思はあるのか

加藤:役所の中でも人によって判断も変わるし、違う役所では基準が全然違うことがあるということは確かに聞きます。

仲川市長:そうですね。たとえば、手続き一つとっても、名前やら住所やら、とにかくいろんな項目を書くように求めますよね。でも、実際には法律上必要ないものまで聞いていることも多い。毎年のことなので、特に意識せず一応入れていますとか。もちろん、そこに意思があればいいんですよ。だけど、それがないのに、やたらと長いことを書かせたり、余計な書類を求めたりするっていうのは結構あるんですよね。

加藤:そこに専門家が入って、本当にこれが必要なのかということを1個1個棚卸しするのは面白いですね。和光市では松本市長が実際に公認会計士の方を直接採用して、作業スキームを変えてらっしゃったんですよね。たとえば決裁金額や、決裁フロー、そこはもしかしたら、先ほどおっしゃったように公認会計士が有効になるのかもわからないですね。

奈良市役所6-3

奈良市役所 庁舎

主旨や目的に対して手法論や予算がついてくるべき

仲川市長:あと、行政組織って「財政課至上主義」的な感覚があります。確かに財政と人事は肝ではありますが、予算編成に心血を注ぐ反面、執行管理はチェックが弱かったりする。もっと言えば、予算の前にしっかりとした事業計画が必要な訳ですが、どうしても予算に意識が向きすぎてしまうきらいがある。

 そして一度組んだ予算は金科玉条(絶対的な基準・拠りどころ)となり、思考停止になる。まず主旨目的があり、その上で手法論や予算がついてくるのが本来の姿だと思います。ところが実際は予算と方法論が先行してしまい、目的を見失ったまま予算消化に走ってしまう。逆に言えば、主旨目的を達成するためなら、手法は状況によって変わる可能性がある訳です。というか、むしろ柔軟に変えなければならない。

 たとえば、行財政改革(行政・コストのスリム化)でも直接経費が目立つ事業に批判が集中しがちですが、見えないコスト、人件費含め間接経費がべったりと張り付いているものが結構多いんですね。だから、それを含めたフルコストベースの事業の見直しが重要。これを徹底的にやった上で、来年はどの事業をやるかやらないか事業計画を立てて、その上で予算編成をやるという流れに変えるべきです。

※本インタビューは全9話です

他のインタビュー記事を読む

頁トップへ