インタビュー

【奈良市長 仲川げん氏:第3話】雨が降ったら休む職員もいた

仲川市長2013

逮捕者が出て、組織の人員を大幅に入れ替えた

加藤:2016年に職員から逮捕者が出たときに、人員を大幅に入れ替えていらっしゃいます。どういう意図で進めたのでしょうか。

仲川市長:これは非常に難しい問題です。ひとたび不祥事が発生すると、当然のことながら管理職は責任を問われます。「なぜ防げなかったのか」、と。もちろん、組織ですので縦のラインがあり、それぞれの司(つかさ≒担当)の者が管理監督機能を発揮するのが大前提です。

 一方で、長年同じ部署にいると、どうしても現場に飲まれてしまう部分があり、大鉈をふるうことができない。たとえば、最近見直しに着手した時間外勤務にしても、本当に必要なものばかりとは言えない部分があります。しかし、長年その働き方を認めてきた管理職は、いざ「問題アリ!」と言われてしまうと自己否定につながってしまいます。

うまく立場を利用されると 管理職のほうが弱い部分がある

仲川市長:この間も環境部の職員が、知り合いの業者に業務を委託してバックマージンを取っていた、という事件がありましたが、実際にその仕組みを企んだのが現場の職員であっても、負担行為の起案に上司が判子を押しちゃっているんですよね。

 そうすると、やっぱりその人も処分を免れない。これってね、うまく立場を利用されると、ある意味、管理職のほうが弱い部分があります。過去の市長時代には、長年問題視されてきた特殊勤務手当を見直そうとオープンにしたとたんにオンブズマンに訴えられ、改革に着手した市長以下ラインの職員が、個人で賠償金を支払わされるということもありました。

 そういう状況を当然、周りの職員も見ていますから、この状況を正さないといけないと思ってはいても、今までいた職員では、なかなか手を付けにくいという側面があるので、今回はゴソッと入れ替えたということなんですね。良い意味で過去の経緯を知らない、という強みもあると思います。

仲川げん 3-2

昔は雨が降ったら休む職員もいた

加藤:以前にも同じように、逮捕者が出てらっしゃると思うんですけど、その時には2016年のような大幅な入れ替えは行っていらっしゃらなかったですよね。

仲川市長:当たり前の話ですが、ゴミの収集業務というのは、何よりもまず、毎日遅滞なくきちんとゴミを取りきるってことがまず最優先なんですね。これがスムーズにいかないと、市民からのクレームがすぐに飛んでくる。
 もともと奈良市は、国際的な観光地ということもあり、昭和の時代から「ゴミは朝のうちに収集を」という暗黙の了解がありました。

 今でこそ、随分変わりましたが、昔は雨が降ったら休むとか、班編成が気に入らなければ帰ってしまう職員もいたと聞きます。2006年の「職員による市への職務強要事件」でも、なぜ5年10か月で8日しか勤務していないのに給与を満額受け取っていたかといえば、詐病を使って長期病休者を装っていたから。

民間委託をするにも抵抗がある

仲川市長:現場と管理職の関係が、ちょっとねじれてしまったりすると、すぐ収集体制に穴が空いてしまいます。しかも、市民からのクレームは上司に入りますので、もちろん、ケツを拭くのは管理職となります。

 今までも、とにかくスムーズにゴミ収集が行われるということに重きを置くがゆえに、過剰な要求も飲み、違法な勤務実態にも手を付けずに来てしまったわけです。今でこそ、民間委託も積極的に進めていますが、昔は民間委託の「み」の字も出せない状況だったんです。

加藤:民間委託の比率は、これからも上げていくのでしょうか。

仲川市長:基本的には新規の採用を行わず、「退職不補充」の方針を採っていますので、人手が足りない所は段階的に民間委託に切り替えています。今年で委託率は56%になりました。

 「管理運営事項(≒市側の判断で民間委託に切り替え可能なもの)」として市側は進めていますが、組合は労働条件の変更にあたるので協議が必要と主張し、議論は平行線です。しかし直営方式は、民間の同業種と比べて人件費に大きな差があることもあり、限られた財源の優先順位という面では時代の流れだと思います。

仲川げん 3-3

年間約3億円あった特殊勤務手当を9割カット

加藤:特殊勤務手当についても市長がトップダウンでなくしていきました。

仲川市長:はい。私の進めた一番大きな改革は、特殊勤務手当の見直しだと思っています。一時は年間で約3億円に達していましたが、今は10分の1程度。ほぼ全廃に近い状態です。

 昔は1回収集に行くと、「はい、1000円」という感じで給料と別に、支払っていたと聞きます。先ほど申し上げたように、前々市長時代にはこの手当が違法だとしてオンブズマンから提訴され、最終的に当時の市長、出納室長、人事課長が約3000万円の個人賠償を負うという事件もありました。制度自体はその後、見直されたことで違法性はなくなっていたのですが、経済合理性の面では疑問が残っていた訳です。

 なぜ、このような手当がたくさんあったかと言えば、収集現場にはノルマ制という概念があったからです。本来ならば月給制ですから、就業時間中は休憩時間を除いてフル稼働するのが原則です。しかし長年の慣行から、「自分のノルマが終わったら、後は何もしなくて良い」という発想が定着してしまっていた。だから、たとえ時間内であっても、当初の予定より多くの現場に行く人には、追加で手当が支払われていたのです。

手当によって給与をかさ上げしていた

仲川市長:この特殊勤務手当や時間外手当などの手当てでうまいこと、給与をかさ上げしていたのです。だからラスパイレス指数(国家公務員との比較で地方公務員の給与水準を表わす指数)において、全国の中核市(通常、人口要件20万人以上の市)ではワースト5と年収が低く見えるのに、手当を含めるとベスト5に入っていた訳です。

 この構造は、よほど詳しい人でないと気がつかないと思いますよ。私も就任直後に「うちはラスパイレス指数が中核市でも最低レベルなので、これ以上人件費は見直せませんよ」と聞かされましたから。

 それでも、直感でおかしいと思い、データを比較分析する中で気づいたんです。一見、安く見えるけれども、実は手当でお手盛り状態だったという仕組みです。そういう文化をとにかく抜本的に見直すため、相当切り込みました。もちろん、抵抗はゼロではありませんでしたが。

加藤:ゼロどころか、相当な抵抗があったんでしょうね。

※本インタビューは全9話です

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