インタビュー

【生駒市長 小紫雅史氏:第6話】市町村行政の肝は 住民の『わからない』をなくすこと

小紫雅史市長6

市町村がやってはいけないことは ほとんどない

加藤:憲法の中で、地方自治の位置づけが十分に書かれてないと言う人もいます。これについてどう思われますか?

小紫市長:あまり考えたことがないっていうのが正直なところです。「憲法に書いてもらわないとできない」市政の取組に出会ったことがないからです。「法律に書いてないことはやったらあかん」じゃなくて、「書いてないんだったらやってもいい」とよく職員に伝えています。さらに言えば「法律で禁止されてなかったら何やってもいい」とも(笑)。そのぐらいの気持ちでやってほしいです。

市町村が本気で地方分権を実行しなければいけない

小紫市長:僕の子どもの一人は自閉症なんですけど、自閉症対応は法律だけでみると、国や都道府県の権限がかなり多いんです。ですが、自閉症の人と一番近くで接するのは市町村の職員です。だったら、権限がどうとかいう前に市民の一番近くにいる市町村が出来る限りの対応をやるのは当然のことと思います。

 そもそも、困っている市民を前にして、「国の仕事だ」「県の仕事だ」というのはナンセンスです。現場の声を拾い、しっかりと対応していないのに、国に財源や権限を求めるのは違うだろうと思ってしまう。僕は国と地方自治体の両面を見てしまうので、より一層そう感じます。
 当たり前ですが、国も「一歩踏み込んできた」市町村をしっかりと見つけ、適切に支援することを通じて、相互の信頼関係を作ってほしい。こういう市町村を国が評価できなければ、地方創生なんてただのお題目ですから。

仕組みの中で考えるのではなく、現場視点で仕組みを変える

小紫市長:生駒市には高齢者福祉の領域で有名な課長がいます。彼女のところにはよく厚労省から現場の実情や制度案への助言を求めて電話がかかってきますし、それが高じて、彼女は厚労省関係の委員会に入って東京に呼ばれたりもしています。理想的な市町村と霞が関の関係だと思います。
 彼女は、国や県がつくった仕組みの中で物事を考えていない。まずは国のモデル事業として実施し、それが制度になると、細かな住民ニーズに応えるために何度も国に掛け合い改善を求めていく。通所と訪問のセット型事業を作ったり、認知症の人を継続して支援できる仕組みができたりと、実際に国が動いているんですね。

 市町村が直接国に電話したら、「都道府県を通せ」「直接国に電話するな」とか、もう論外です。そんなことをまだ言っているような霞ヶ関の役所や都道府県がまだまだ日本にあるんです。そんな役所が「地方分権」「地方創生」を語るな、という感じですよ。笑い話のような本当の話です。

小紫雅史市長

国は本気で取り組んでいる地方公務員を見ている

小紫市長:きちんとした国家公務員は、担当業務に本気で取り組んでいる市町村や、その職員を把握している。法律を作る時に、その案で現場は回るのかしっかりと確認しています。もちろん都道府県を経由したりはしません(笑)。

 国家公務員と市町村職員が、良いつながりを持てるようにすることが、私の仕事の1つだと思っています。以前も官僚時代に、霞が関を変えようと立ち上げた『プロジェクトK』という組織のメンバーが生駒市にきて、現場を感じることで毎回刺激を受けていました。自主的な勉強会、国家公務員と市町村職員が一緒に集まる場がもっと増えて、相乗効果を生み出せる関係になると良いですね。

国 都道府県 市町村は二層でも良い

小紫市長:これからの国、都道府県、市町村の在り方として、私は二層にすることも一案ではないかと思っています。

加藤:それは基礎自治体と国の二層ということですか?

小紫市長
小紫市長:そうですね。市民による地域自治で対応すべき分野は基礎自治体、それ以外は国、という責任を明確にすべきだと思います。国には地方支分部局もあり、基礎自治体を支援し、連携していくことはもちろん、基礎自治体間の規模の違いなどはあるので、自治体間の広域的な業務連携も今以上に進めていくことが必要ですが、十分実現可能だと考えます。いずれにせよ、道州制にしろ、国と基礎自治体の二層構造にせよ、国も都道府県も市町村も今後の自身の在り方、存在意義について、真剣に考えざるを得ない状況になるはずです。そうなると、まさに憲法とか地方自治法とか法律の話になるのかもしれませんね。

市町村行政の肝は 『わからない』をなくすこと

小紫市長:僕は、『わからない』をなくすことが、市町村行政の肝だと思っているんです。日本人だけですよね、アンケートの答えに「はい」「いいえ」「わからない」があって、場合によっては「わからない」が第一位だったりする(笑)。

 具体的な話としては、生駒市にきてすぐに、医療費・社会保障経費が高くて衝撃を受け、薬剤費から手をつけようと、ジェネリック薬品の利用促進に取り組みました。

 厚労省の基準にそって、ジェネリック医薬品の処方割合が30%以上の薬局を「金」のジェネリック薬局、25%以上を「銀」、20%以上を「銅」とし、満たす薬局を『認定薬局』としたんです。そうしたら「ジェネリックの割合が高いから良い薬局とは限らない」「近くの医師の考え方にも大きく左右される」「診療科によってはジェネリック医薬品が少ない診療科もあるんだ」とか、薬剤師会にすごく怒られました(笑)。

 今は、薬剤師会と仲良くしてもらい、ジェネリック医薬品の促進はもちろん、いろんな課題で連携させていただいているんですけど、当時は「副市長が薬剤師会と揉めてる」なんて新聞に書かれてしまったんですね。でも、その記事には必ずジェネリック薬品はこういうものですとかって説明があって、市民は自然と「ジェネリック医薬品とは何か」理解してくれました。だから、生駒市民は、相当早い時期から、薬局で「ジェネリック医薬品って何?」とは聞かず、「この薬のジェネリックを置いているか?」って質問から入るらしいんです。これってすごいことじゃないですか?

 医者が勧めているわけでもない中で、よく知らないジェネリックを積極的に使いたいという人は普通いないですよね。「わからない」ということは大体ネガティブな結果につながるんです。でも理解さえ進めば、後は市民が自分で判断して、ジェネリック医薬品を選ぶ。それでもやっぱり先発品のほうが良いやっていう人はそっちにすれば良いし、ジェネリックが良い人はそうすれば良い。「わからない」さえ減ればよいんです。

 市町村行政の一つの基本っていうのは、このイエスとノーの間の『わからない』をなるべく小さくして、市民がしっかり考えて判断することだと思っているんです。

※本インタビューは全7話です。

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