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コラム

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地方行政と共に進める「小網代方式」の自然保護

神奈川県の三浦半島に、奇跡の森と呼ばれる「小網代(こあじろ)」というエリアがある。
小網代に流れる川は、源流から干潟まで自然がまるごと残されている。民家や工場などがないことで、生活排水・工業排水が混じらず、生物多様性が実現しているという。世界を見渡しても、都市圏でこのような場所はどこにもないのだそうだ。
では、なぜ小網代だけがその奇跡を実現できたのか、「奇跡の自然の守り方」という本を読むとその詳細が良くわかる。著者である 岸由二氏と柳瀬博一氏の活躍は言うまでもないし、あらゆるメディアで確認ができるので(オススメは、ほぼ日で柳瀬博一氏がプレゼンをしている記事)、ここでは行政の功績に触れておきたい。
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1989年、バブル崩壊の足音が聞こえてきた頃、小網代はゴルフ場開発による自然破壊の危機に瀕していた。それを知った岸由二氏を初めとする有志たちが約3万人の署名を集め、神奈川県知事に提出。それを受け、神奈川県は小網代の保全を視野に入れることになった。
同年8月に大きな転機が訪れる。神奈川県が後援する形で「国際生態学会議」が開催され、当時の神奈川県自然保護課課長H氏の働きかけもあり、小網代の視察がプログラムに組み込まれることになった。この後も度々登場するこのH氏が行政側にいなければ、今の小網代は姿を変えていたかも知れない。
この国際会議で世界の著名な研究者たちが小網代の希少性を訴えてくれたおかげで、神奈川県の姿勢が急速に小網代保全の方向に向かうことになる。現場に居合わせたH氏は、この研究者たちの声を聞き、保全への決意を新たにしたようである。
その後も重要な場面でH氏は岸由二氏を引っ張り出し、小網代の保全に向けて舵取りを続ける。そしてついに1995年、神奈川県知事が小網代の森・中央の谷のほぼ全域の保全方針を表明することとなった。
この方針決定後、保全の具体的なやり方を決めていく上で、神奈川県側の事務局長となったのがH氏であったため、現在の市民参加型の保全の形が作られていくことになる。
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岸由二氏によると、行政と正面から対立する方法を取ることで、失敗に終わってしまう自然保護活動があまりに多いという。この小網代の事例は、行政を敵視せず、行政と二人三脚で歩む「小網代方式」がいかに有効であるかを示している。
普段私たちが目にするニュースでは、行政の職員が取り上げられることはほとんどない。しかし公益性の高い仕事を担う公務員の中にこそ、ヒーローは多く存在しているのではないだろうか。まだ見ぬヒーローたちの活躍にもっと光が当たるようになればと思う。
※ちなみに、小網代では毎月第三日曜日に「ボランティアウォーク」というイベントを開催しているので、興味がある方はぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。私も近々行く予定。

小野寺将人
湘南在住。不動産情報ウェブサイト運営会社、お出かけ情報ウェブサイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイト運営会社にて企画職に従事。

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