記事タイトル:マグロ漁獲枠に「調整案」 新ルールの日米隔たりで
https://www.daily.co.jp/society/economics/2026/06/16/0020483157.shtml
(文=中村 広花)
水産庁が2026年6月16日に開催した「太平洋クロマグロの資源管理に関する漁業関係者説明会」について。
水産庁が示した「国際的な調整案」を軸とする交渉方針は、「資源の持続可能性」と「沿岸漁業者の経営安定」の双方を両立させる現実的なアプローチとしては、評価・支持すべきものであると考えます。
これまでの国際交渉(WCPFCなど)において、日本は、現場の資源回復実感を根拠に漁獲枠の大幅拡大を主張してきましたが、アメリカをはじめとする保護重視国との対立により交渉がしばしば停滞しました。その結果、現場への枠配分が直前まで確定しないなどの弊害が生じていました。今回、ルールに基づいて漁獲枠が自動的に決定される「新管理方式」への移行に向け、事前に国際的な「調整案」を練り上げて合意形成を図る方針に転換したことは、国際社会における日本の信頼を高めるとともに、現場に対して見通しの立ちやすい経営環境を提供する上で極めて重要な一歩だと思います。
地方の現場は、クロマグロのIQ(個別割当)管理や海区ごとの管理強化以降、地方の沿岸漁業(一本釣り、延縄、小型まき網など)は極めて厳しい制約下に置かれてきました。
現状としては、
• 操業制限と「目の前のマグロ」への葛藤
資源が目に見えて回復している現場からは、「海にはマグロが溢れているのに、枠がないため釣ることができない」「混獲されたマグロの放流を余儀なくされ、経営が成り立たない」という悲痛な声が絶えず、国の方針と現場の実感との間に大きなギャップ(温度差)が生じていました。
• 経営の不安定化と後継者不足
漁獲枠が国際交渉の結果次第で毎年不透明であることは、将来的な見通しを暗くし、後継者不足に悩む沿岸漁業において、設備投資や事業承継の意欲を削ぐ大きな要因となっていました。
新たな「調整案」が地方水産に与える影響としては、
• 「安定的な漁獲ルール」による経営予測可能性の向上
今回の調整案が「現状の資源量を維持しながら安定的に漁獲できるルール」として国際合意されれば、年ごとの漁獲枠の大幅な乱高下が抑えられます。これにより、漁業者が数年先を見据えた漁獲計画や販売戦略を立てやすくなり、地域水産業の持続可能性を高める最大のメリットとなります。
• 国際協調によるブランド価値の担保
保護派の国々と対立したまま強硬に拡大を勝ち取る手法は、国際市場や日本の消費者において「過剰漁獲」というネガティブなイメージを持たれるリスクを孕んでいました。国際協調に基づいた科学的管理(サステナブル・シーフードとしての担保)へ移行することは、中長期的に見て、クロマグロのブランド価値を高め、魚価の向上や輸出拡大の足がかりになるのではないでしょうか。
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