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【元三重県知事 北川正恭氏:第6話】日本の自治体職員は世界で最もレベルが高い

行政の『思い込み』を打破する必要がある

加藤:今後の展望を教えていただけますか。
北川氏:行政は「こんなものだ」という『思い込み』。これを打破するために、全力をあげて人材マネジメント部会やマニフェスト大賞をやっていきます。今まで市役所は「こんなもんだ」と勝手に決めているけど、「本当にそうかね」、「違うでしょう」と、疑問を投げかけていくというところを徹底的にやっていく必要がある。

北川正恭6-1 マニフェスト大賞5

「第10回 マニフェスト大賞」授賞式

必ず役所がやらなければいけない事業はなくなってきた

北川氏:市役所は全部自分でやろうとするけど、市役所がやらなければいけない事業というのは、時代とともにほとんどなくなってきましたね。水道の問題なんかも、市役所がやったら談合的な色彩が強くなるんですよ。発注先は特定の業者に偏っていますからね。
 水道事業は施設や設備は古くなるし、財政面においても大問題になっていくんですね。だから、「民間の知恵を入れよう」とか、「根源的により効率的なものに変えるにはどうすべきか」ということを考える必要があって、中央集権が地方分権になり、地方創生になった。「公である地域が滅びれば、自分にも影響があるよね」ということにやっと気づいてきた。
 いま、あらゆるものに構造改革が必要なんです。紙の文化から、ネット、AIやIoTの時代に入っていく中で、システムが全部入れ替わっていくはずです。そういう時代の変化の中で、いやな言葉だけど、どこかが『勝ち組』として世の中を制覇していくことになっていく。そういう時代に公務員は乗り遅れていて、心配しています。

日本の自治体職員は世界で最もレベルが高い

加藤:最後に地方自治体で働いている職員の方へメッセージをお願いします。
北川氏:私は地方自治体の職員は真面目で、世界で最もレベルの高い公務員だと思います。そして、これからは新しい価値にチャレンジしていかないといけない。「自分たちはこういうものだ」という固定観念は一回捨てていただいて、「自分たちこそが新しい価値を、次世代につないでいくんだ」という強い意思を持って欲しいです。
 よく、行政経営とか自治体経営とか言われますが、それよりも高次な『地域経営』の主体としての活躍をしていただいたら、必ず日本は再生していくと思います。皆さんには集権時代から脱却した『創生時代の価値』を断固として創っていってもらいたいと思います。
加藤:今日は長時間ありがとうございました。
北川氏:こちらこそありがとうございました。

北川正恭6-2

イベント中に誕生日のお祝い 周りから慕われている様子が伺える

編集後記

 「民主主義のレベルに完璧はない」という北川氏の言葉がとても印象的だった。
 お金がかかるという意味合いで、『民主主義のコスト』という言葉が、時折引き合いに出される。それはある種、『教育コスト』とも言える気がする。なぜなら、人は民主主義の歴史を通じて、民主主義の質を少しずつ着実に高めてきたからだ。
 私は今の日本の民主主義のレベルを完璧に近づけていくには、『論点整理をする力』がもっと必要だと思う。直近の教育では、「アクティブラーニング」と言われるような、単なる知識の習得を越えた、思考力や判断力、そして社会性をも伸ばしていく流れができていることは大いに歓迎したい。
 その社会性を伸ばすという方針の中で、他者との『対話の仕方』については、より一段と深堀して教えるべきだと思う。例えば『議論におけるマナー』や『自他の議論におけるプロセスへの評価』ということまで突き詰めてもらいたい。
 というのも、国会や地方議会、そして民間会社の会議の場でも、議論の中身が論理的、建設的でないケースを目にすることも多いからだ。酷いものだと、議論の目的が「相手を言い負かすこと」「有権者などへの自己中心的アピール」に堕してしまっていることも散見される。
 北川氏がまさに三重県議会改革を行った時のように、議論の本質がずれてしまうことが「おかしいこと」「恥ずかしいこと」と捉えられる文化になるだけでも、民主主義のレベルは大きく上がるのではないかと思う。
 もちろん、子どもたちに求めるものとしては、一見、やや大きいものに映るかもしれない。しかし、我々は子どもを含めた他者に対して、そして時に自分自身にすら『期待』することを、早い段階から諦めているような気がするのである。
 一昔前に、ヨコミネ式教育法というものを知り、度肝を抜かれたことがある。幼稚園のクラスの子ども全員が、「逆立ち歩きができる」ということをテレビが報道していた。それを見てしまうと、論点整理をする力や、議論のマナーを子どもに教えるということぐらいは、そこまで難しくないように感じるのだ。
 私は時代とともに民主主義の質が上がることは間違いないと思っている。しかし、次の世代がどれだけ高次のものにできるかというその度合いは、今の大人たちに大きな責任があるとも思う。教育は子どもの可能性を無限に広げる最高の手段だと思うのであるが、その地道な積み重ねの結果が、北川氏が用いてきた『対話』という効果的な手法を、さらに強力な武器へと昇華させることになるのではないかと思うのである。

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