編者が語る「自治体職員のためのナッジ入門: どうすれば望ましい行動を後押しできるか?」

（文＝長澤美波）

活動の成果を詰め込んだ一冊！

このたび、『自治体職員のためのナッジ入門～どうすれば望ましい行動を後押しできるか？～』（公職研）を出版いたしました。

編者である特定非営利活動法人Policy Garage（ポリシーガレージ。以下、ポリガレ）は、「行動科学（ナッジなど）」「デザイン思考」「エビデンスに基づく政策立案（EBPM）」を組み合わせ、政策課題に取り組むNPO法人です。自治体職員、官公庁職員、民間事業者や大学の専門家や学生を中心に運営しています。

ポリガレは、横浜市の有志職員によるナッジ・ユニットである横浜市行動デザインチーム（YBiT）からスピンアウトする形で設立されました。著者の３人は、ポリガレとYBiTのメンバーを兼任しています。

YBiTは日本の地方自治体初のナッジ・ユニット（ナッジ活用を推進する組織）です。横浜市職員有志が、真に効果のある行政サービスを提供したい、職員がワクワク感をもって仕事がしたいという思いから立ち上げた研究会がもとになった組織です。

YBiTは、EBPMや科学的な行政手法を学ぶなかでナッジの魅力に触れて以来、その実践、普及に取り組んできました。その理念はポリガレにも引き継がれており、より広いフィールドで、より強力なメンバー、協力者と一緒に活動しています。本書にはYBiT、ポリガレの約２年半の活動成果が詰め込まれています。

ナッジを自治体政策に活かそう

ここで、ナッジについて簡単に解説します。

ナッジとは、「人々の選択肢を奪うことなく、環境を整えることで、本人や社会にとって望ましい行動をするようにそっと後押しする手法」です。提唱者の一人であるリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことによって世界的な注目を集めました。

ナッジの大きな特徴は以下の３点です。

これらの特徴を満たしていれば、取り入れられる場所、手法は様々です。街中のゴミ箱、公衆トイレ、駅の階段等の公共の場の意匠や通知、チラシの文言、レイアウト等に活用されてきました。また、活用分野も、税、環境、医療・保健等幅広い分野で事例が蓄積されています。

本書は、「第１章　ナッジとは」「第２章　ナッジの組み立て方」「第３章　ナッジの活用事例」「第４章　ナッジの価値と展開方法」「第５章　ナッジの限界と他手法との組み合わせ」「第６章　ナレッジシェアが拓く自治体政策の未来」の６章構成になっています。

専門書ではありませんので、「第１章　ナッジとは」は必要最小限の説明にとどめ、「第２章　ナッジの組み立て方」「第３章　ナッジの活用事例」の部分にウエイトを置いています。３章まで読んでいただければ、読者個々人がナッジに取り組むのに必要な知識を得ることができます。

第４章、第５章では、ナッジに取り組む中で直面する課題が解決できるよう、組織的にナッジを展開するための手法、ナッジに取り組むにあたっての注意点や他の行政手法との関係性について解説しています。

第６章では、現在のポリガレの取組を紹介し、自治体政策の未来について展望しています。

執筆にあたって著者３人が目指したのは、徹底的に現場目線の１冊となることです。私たちがナッジに取り組むなかで知りたかったこと、研修や事例支援を行うときに必ず質問されることを、網羅的に、なるべく平易な言葉で解説しました。

事例もできる限り多く掲載し、また、ナッジ活用のステップに沿って紹介することで、ナッジ活用をより具体的にイメージできるように工夫しています。

日々の仕事に取り組む中で、「もっと効果があがる政策を実施したい」、「新たなチャレンジをしたい」、「何か打開策はないか」と考えている人に寄り添う１冊として手元に置いていただけると幸いです。

編者プロフィール

特定非営利活動法人Policy Garage（ポリシーガレージ）

横浜市行動デザインチーム（YBiT）のメンバー中心に、2021 年１月に設立されたネットワーク型のNPO 法人。人を中心とする効果的な政策を創り、よりよい社会づくりに貢献するため、ナッジ等の行動科学、デザイン思考、データ・エビデンスに基づく政策（EBPM）の普及を行う。YBiT から通算して、月例研究会40 回、研修・講演・講義130 件、事例支援80 件等を実施（2022 年6 月現在）。自治体・省庁職員、公共意識の高い民間や大学の専門家や学生などが参加。

https://policygarage.or.jp/

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