イノベーションのスピードが速くなりすぎて、思想哲学が全くついていってない
加藤:少しトピックを変えます。僕は人口減少などにより日本のGDPが減少していくというのはある程度受け入れながらも、心持ちみたいなところで幸せを感じられるようになるような時代や考え方へと、変わっていった方が良いんじゃないかと思っているんです。高野さんとして今後は経済だけ追い求めていいものかどうかとか、今後はこういうものを追い求めるべきなんじゃないかというのを教えて頂けますか。
高野氏:慈悲利他なんですよ。仏教の原点は何かというと、慈悲利他行為なんですよ。他者の為に生きるってのが仏教の根幹なんですよね、いろんな戒律もあるんだけど。だから、冒頭から言っているように人間の細胞がどう生きているかを見ると、自分達のものの考え方や自分たちの生き方を反映してくる。脳で考えることは愚か者だから、愚者だから愚者の虚妄と言いますけど、虚妄ぐらいしか出てこないんですよ。
究極の理想や究極のモデルってどこにあったのかって、体なんです。何回も言っているように、その、地球全体が一個の体のようになればいい。その雛型っていうのを日本が見せることが出来ればいいなと思っているんですね。「日本人ってあんな生活が出来るんだ」とか、「日本人って良いな、例えば環境が世界で一番きれいだし、汚染もないし、食べてるものも凄いよね。」と。
だから、人口減少ってのは本当はゆゆしき事なんです。物凄い危険な事なんですよ。「国に方々の声無くんば、万民は数を減ず。」と説かれた鎌倉時代の日蓮上人なんですね。要するに、法を誹る、間違ったことをしていると、どんどんどんどん国民の数が減っていきますよ。
気候変動、温暖化のような様々な問題を解決できる策って、日本人が提示できることが山ほどあるはずなんですよ。かつてはフロンガスを止めないと、環境破壊は止まらないと言われていた。でも原因はフロンガスじゃありませんでした。2008年のサイエンス誌を見てもらうとわかるように、Evil、邪悪の根源と書いて、農業資材とはっきり書いてある。その農業資材を作っている会社はほとんど軍事メーカーですよ。すぐ火薬が作れるんで。つまり、そこが原因です。だからこれを止めればいい。
その為には、僕らが今やっている自然栽培で農薬も肥料も外部資材を投入しない、これしかないですから。これを広げる事が、一つの日本の、世界に対する希望ですよね。こうやって解決できるんだって。その雛型を見せることが出来るんじゃないかと思うんですよね。ただ来年あたりは危ないですよ、本当に。2017年という年は。
加藤:危ないというのは?
高野氏:色んな意味で、本当に危険な年になるはずなんですよ。ぼーっとしていますけどね。真剣になってものを考える連中って、どんどん少なくなってきているんですよ。
イノベーションのスピードが速くなりすぎて、思想哲学が全くついていってないですよ。こちらの方を全く追及していないでしょ。昔は、思想哲学の方が先行してあって、それにイノベーションがあったんだけれども。だからこのスピード感や思想哲学の方を日本の中で先行させなければいけない。要するに、間違った思想を叩き込まれてきたんですよ。そうすると、心まで腐るんですから。これは自然栽培と同じだと思いますね。
だから、生き方自体も“枯れる”生き方を。野菜植物と同じで、“枯れる”生き方をしなきゃいけない。“腐る”生き方じゃないですよ。心腐っているやつはいっぱいいるんですから。これは、間違った思想を叩き込まれちゃったんですね。あるいは、どっかで自分で身に着けちゃったしかないと思ってますよ。
だから、教育は“狂育”ですよ。「農協も、脳が狂うと書いてノウキョウですね」と言ったら、組合長と大喧嘩になりましたよ(笑)。「貴様、俺に喧嘩を売りに来たのか」と怒鳴られた(笑)。でも2年後ですよ、最大の味方になってくれましたから。だから、敵ではないですよ。だから、本当にわかって頂いたら、敵いなくなっちゃうんですよ。
加藤:それは本気でずっと説明していくというか。私心なく説明していくというスタンスがやっぱり大事なんですよね。
知っていることと出来ることは違う
高野氏:あとは、やって見せるしかないんですよ。コンサルなんていうのはその、パクリ業者のような印刷物しか作らないですよね。これ変わるのか?変わらないですよ。書いた紙の通り、人間の意思や私意が働いているところで書いた通りになった試しは一回もないですから。だったら、黒字になる計画書を作れば黒字の会社ばっかりで、赤字の会社は一個もなくなっちゃう。これ人間の意思というか、私意が働いているところは、書いた通り絶対ならないですよ。
だから、どうやって思った通り人を動かして、どうやってその気になってもらって、どうやって自活自立してもらうのか、あるいはやってもらうのか。実は、そこが全部鍵なんですよ。だから、ある意味人をその気にさせてっていうところの段階ですね。だったらそれは最初にとにかくやって見せないと、納得しないですよ。
僕が市役所職員の時は、農家から「お前そんなこと言うんだったら米売ってみろ」って話でした。「じゃあ、僕が売ったら自分で皆さん会社創って下さいね」って。「田んぼに蒔いたこともないお前に米が売れるなら、俺らは40年苦労してねえぞ」って言われました(笑)。ただ、今までやったことが無かったので売り方がわからない(笑)。どうやって売っていいか全然わからない(笑)。
知識って言葉は知は識にしなさいって意味なんですよ。知は知ってるだけ、識は体を使って本当にやったことがあるんですよ。これがないと、経験則は生まれないですよ。知ってるだけの人間は山ほどいるんですよ。「あー、知ってます、知ってます。」って。「じゃあ、やってごらんよ」と言われた時に、ほとんどの人は出来ませんから。
大手企業が抱えている悩みも実はそこなんですよ。僕、入社8年までの新しい新人の子達の研修やったりしてるんです。頭良いですよ。物凄いものを知っているんですよ。「じゃあ、やってごらん」って言うと出来ない。ここが問題なんですよ。情報は頭の中に蓄積されているんだけれども、「じゃあ、その通りやってごらんよ」と言うと出来ないんですよ。
教育の成果は10年後に出てくる。国を牛耳るなら教育を牛耳ればいい
加藤:先ほど誤った教育を受けてしまっているというお話があったんですけども、それをこのタイミングと言うか、その教育が一定期間終わったタイミングから変えるのって、かなりパワーがいることなのかと思うんですけど。
高野氏:教育の成果は10年かかって出てくるんですよ。例えば、今変な子供たちが沢山いるってことは、10年前の教育がおかしいんです。だから、国の根幹は教育なんですよ。これがぶれてきているんです。狂った育ですよ。日教組がほとんど潰してきた。
唯物思想を叩き込んで、刹那主義と言うか、これをですね、礼賛してきたんです。もの、かたちのあるもの。人生、人の命、なくなったら終わりだ。生きてる間に楽しめ。生きてる間に儲けるだけ儲けろ。こんなつまらん哲学を、植え付けてきたんですよね。
だから、教員自体が唯物論者が多いですから。そこの国をコントロールしようと思ったら、教育からやればいいんですよ。簡単にその国を牛耳ることができる、脆弱なんですよ。だから敗戦国の日本は、戦略がほとんどないんですよ。だから本当は内務省なんかが作るべきだったんですよ。
加藤:今だと、文部科学省がそこを主導していかないとこれは変わっていかないと。
高野氏:もっと強烈に。こないだ、馳さん(文部科学大臣教育再生担当大臣)とお話をさせてもらったりしました。だってこんな小さな国、牛耳ろうと思ったら簡単に牛耳れちゃう。愚かな国民を増やそうというときには、教育さえ握っちゃえばいい。だから下手な公立高校へ入れるよりも、私立入って教育をし直した方が良いような気がするんですよね。
加藤:その活動の一環として、大学の中の新しい学部学科を作って変えられる動きをされているという事ですね。
高野氏:自然栽培をきっかけにして、そこで学んでもらいたいのは思想哲学なんですよ。害虫駆除思想じゃない。そういう考え方を持った子供たちが、どんどんどんどん増えてけば、変わるでしょうね。だから、その結果を出すまで本当に時間がかかる。教育の成果ってのは10年ぐらいかかりますから、すぐには出てこないですね。
でも、自分に子供がいたり、孫がいたりして、うちの子はあそこにやりたいんだっていう教育環境ってのは今ほとんどないですよね。ブランドみたいになっちゃってるんですよ。早稲田にやらせたい、東大にやらせたい、京都大学にやらせたい。京大出てるんだから、人格まで良いと錯覚してるんですよ。間違ってますよね。京大出て泥棒やってる人もいるし、東大出てプータローやっている人もいるから、世界で32番目ぐらいだってことに気が付いてないですよね。
要するにブランド意識ぐらいのものしかないんですよ。そうじゃなくて、どういう思想哲学なのか、本当に大学なんかもそうなんだけど、本来の大学の設立の意義等の原点に復帰しないと、そろそろ危ない時期だと思ってるんですよ。
“Re origin”、元に戻るですね。宗教って言葉は“Religion”って書くんだけど、原義は“Re origin”なんですよ。元に戻る。それが必要だと思ってるんですよ、教育なら教育の原点、政治経済なら政治経済の原点。だから、数千年も変わらない民衆の思いってのは、実は、梵鐘(ぼんしょう)や辻に書いてある道標に全部書いてあるじゃないですか。
国土安穏、五穀豊穣、万民気楽、これは何千年も変わらないですよ。だから、国が豊かになって繁栄して、そして、平和な国でありたい。要するに、ものを十分食べることが出来ますように。災害がありませんように。本当に心配がないように暮らしたいですっていうのが願いです。
鐘のゴーンとつくところに全部書いてあるんですよ。これが何百年、何千年と変わらない民衆の思いです。それを叶えるのが政治の役目なんですよ、本当は。だから、そこは本当にきっちりもう一度原点に立ち返らないと、危ない時代かなと思ったりもするんですよね。
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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 元スーパー公務員が目指す世界と今後
第2話 嫌われても良いから、本当に正しいことをやらなければいけない
第3話 イノベーションのスピードが速くなりすぎて、思想哲学がついていっていない
第4話 毒入りのものを国民に食べさせたらその国はもう終わっている
第5話 最前線で戦い、地域住民に感謝される公務員は天職
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<高野氏著書/Link>
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
<参考URL>
宇宙科学博物館 コスモアイル羽咋:
https://www.hakui.ne.jp/ufo/
自然栽培を体系化した木村秋則氏HP AKINORI KIMURA NET:
https://www.akinorikimura.net/
自然栽培のお茶販売 桜野園:
https://ameblo.jp/otya-sakuranoen/entry-12153372302.html
自然栽培のお茶販売 下園堂:
https://www.shimo.co.jp/