[記事提供=旬刊旅行新聞]
年末近くになって、菅官房長官が熊本で語った「日本にあと50軒くらいは超高級ホテルを」という発言は、さすがに我が業界でも不協和音を巻き起こした。
たしかに、スーパーラグジャリーな富裕層は世界中にいるし、もともと日本にはそれを十分受け入れられる高級ホテルの数が少なすぎる、という外国人の観光立国論に影響されての発言かとも思われるが、高い固定資産税を払い、人手不足に悩まされ、毎日の集客に汗水たらしながら何とか観光客の皆さんに喜んでもらおうという努力を続けている経営者にはまったくもってのがっかり発言だ。そんな高級ホテル誘致する余裕があるなら、一所懸命やってきた私たちを守って、というのはすこぶる自然なことだ。
お金持ちをいっぱい呼んでお金を使ってもらおうなんて、日本はいつからそんなさもしい感じの国になってしまったのだろう。カジノのことだって、「お金を落としてもらうためには」なんて失礼極まりない。お金は落としたものを拾い上げるものではなく、きちんとした商品(有形、無形の)を提供して、胸を張っていただくものだ。
2019年の裏版流行語大賞は「上級国民」だろう。春に池袋で起きた熟年ドライバーが引き起こした死亡交通事故をめぐって、加害者が元官僚トップのエリートで「上級国民」だから氏名も公開されず、逮捕もされない特権があると噂されてしまった。そして、文部科学大臣の英語入試をめぐっての「身の丈」発言。何を考えているのだろう。今の政治はこんなにも「上級」がお好きなのだろうか。
「上級」を作るのは簡単なことだ。上級の概念を満たす定義を考えるより、中級、下級を作ってしまい、上から目線で語りかけてれば、いつしか上級が自動的に作られてしまう。「桜を見る会」が危険なのも、この会が当初の親睦の意味を離れ、会に招かれることが下級・中級ではない証明だと利用されてしまうことなのだと思う。事実、そういう「上級」幻想を悪用しようという曲がった根性の商売人も出てくる。
いま、真剣に考えなければいけないのは、「上級国民・下級国民」の別ではなく「上質国民」たろうとする誇りと矜恃ではないだろうか?
上級と上質は違う。お金などなくても上質になれる。お宿だって上級顧客狙いなんてマーケティング策にのってしまうと、鼻持ちならない金ぴか趣味のものになるよ、と警告しておきたい。
そんなことより、普通の市民が、あ~、これは居心地がいいな、楽しいな、いつもとは異なる質の時間が流れているな、と実感できるような旅館やホテルを作り上げてもらいたい。上級志向より上質志向。これを合言葉にしよう。
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